◆三蔵編◆
あと3日の命だと? ふざけるな 誰がそんなものを許すものか お前の命は、あの岩牢で拾ったときから 全て俺のものなんだよ 誰にも・・・例え死神だろうと渡すものか |
三日目の夜。 三蔵ははじめて、悟空のもとを訪れた。 「三蔵・・・」 それまで世話をしていた八戒が立ち上がり、三蔵を迎える。 その顔色は土気色で、かなりの無理を体に強いていることが察せられた。 無理もない。 悟空の病状はいっこうに回復する兆しを見せていない。 このままでは・・・。 最悪に事態が脳裏を過ぎっては否定する。 「お前は休め。旅に差し支える」 「・・・・・・。そうですね、わかりました」 悟空がこんな状態で旅など・・・・、言いたいことはたくさんあったが八戒は心の内に それを留めて頷く。 わかっているのだ。 三蔵とて、旅のことなど考える余裕が本当は無いことなど。 どんなにポーカーフェイスを装っていても・・・その内面は嵐のように荒れ狂っている だろうことも・・・・。 「悟空をよろしくお願いします」 だから、八戒は何も言わず・・・ただ部屋を後にした。 暗い夜の闇の中。 月光に照らされた悟空の顔が青白く浮かび上がっている。 それは・・・・・・・まるで死人の如く。 苦しい息づかいだけが、悟空の命を三蔵に伝える。 「・・・・悟空」 三蔵はベッドの脇に立ち尽くしたまま、ぽつりと静かに名を呼んだ。 『三蔵っ!』 いつもなら笑い声とともにかえってくる・・・・言葉は無い。 ぎりりっ・・・と歯軋りの音が部屋に響いた。 ダンッ! 拳を打ちつけた壁にヒビが走る。 「・・・・・・・・っ悟空っ!!」 うなるような・・・叫ぶような・・・・慟哭するような・・・・そんな声。 「とっとと起きろっ!いつまで寝てやがるつもりだっ!」 ベッドに手をつけば、ぎしりと揺れる。 力ない悟空の体が傾いた。 「さっさと起きねぇと置いていくぞっ!」 だから・・・早く目を覚ませ。 素直になれない三蔵の精一杯の言葉だった。 傾いだ拍子に悟空の額からタオルが落ちた。 「・・・ん・・・ぞぅ・・・・・」 寝言かと・・・悟空の顔を見た三蔵は・・・・瞼が震え、金色の瞳が覗くのを目にした。 「さん・・ぞ・・・・」 ようやく、耳に届くようなか細い声。 普段の元気さなど微塵もない・・・・。 「・・・・・悟空っ」 悟空の腕が震えながら持ち上がる。 その手を強く掴みとり、両手で包みこんだ。 「・・・・ん・・・ごめん・・・ね・・・・・さんぞ・・・・あしで・・・・まといに・・・なっ・・て・・・」 それだけのセリフも今は無情に悟空の体力を奪っていく。 「馬鹿が!黙ってろ!」 「・・ごめん・・・・・・・さんぞぅ・・・」 「黙っていろと言っているだろうが・・・っ」 震えているのは悟空の手ばかりではない。 三蔵の手もまた・・・・震えていたのだ。 大切なものなど二度と持たないと誓っていた。 失いたくないものなど必要なかった。 ・・・それを持つことを畏れる己の心の弱さを認めたくなかった。 「悟空・・・・・っ」 だが、気づけば・・・・。 これほどに執着するものが傍に居た。 己の心を奪った金色の生気溢れる瞳。 ・・・失うわけにはいかない。 いや、誰が奪いに来ようと・・・・許すつもりはない。 「・・・絶対に・・・・渡してなど・・・」 「さんぞ・・・・」 悟空の吐息が全てのものを射殺さんばかりに睨みつけていた三蔵の頬に触れた。 悟空の顔に浮かんでいたのは、病の苦しさでもなく、絶望でもなく、悲しみでもなく。 全てを許すかのような慈愛の微笑。 「・・・悟空っ」 それは終焉を予感させた。 「ごめん・・・ね・・・・・・・・・・・・・・」 悟空の容態は急変した。 |
† あとがき †
フフ・・・フフフ・・・・(ニヤリ★)
「何だとーーっ!」という叫びが聞こえてきそうです(笑)
そういえば・・・これはラストがどうなるかは全く告げてませんでしたよね??
さて、エピローグがどうなるか・・・・・。
やっと終りそうです♪