- 終幕 -
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砂塵が対峙する十人の間を駆け抜けた。 まさに一触即発。 校庭は背筋が寒くなるような緊張感に包まれていた。 見守る教師・生徒その他もろもろの観衆たちにもそれは伝わり、固唾を飲んで拳を握っていた。 「・・・・・・なになに?」 ただ一人、状況をわかっていない悟空は周りをきょろきょろと見回している。 「・・・・でどうやって決着をつけるつもりだ?」 金蝉が観世音理事に向かい問いただした。 もちろん、視線を残りのライバルたちに向けたまま。 「方法か?・・・・・・・・・それはやっぱりあれしかないだろう。な?」 観世音が二郎神に目配せして、その手から何かを受け取った。 『何だ!?』 刃物か?銃か?それとも・・・・・・・・・??? 観衆は興味津々でそれを見極めようと目を凝らした。 「そうだ!!ばば抜きだっ!!」 観世音の高々とあげられた手には・・・・・・・・・・・・・・・・・トランプ。 上から見ても下からみてもそれはトランプ以外のなにものでもない。 「「「「「「「・・・・・・・・・・ばば抜き・・・・・・・・???」」」」」」 十人の声が重なった。 「やっぱり勝負といえばこれしかないだろう?切った張ったは時間がかかる上に後始末が面倒 だからな!これならこの53枚のトランプが一組あればそれでいい。しかも運と実力の両方が一度に わかる!これぞまさに一石二鳥、さすが俺だ!」 『何が”さすが俺だ!”だ!!!!』 それはここに居る人間の全ての思いだっただろう。 「まぁ、いい。要は決着がつけばそれでいいのだからな。ま、所詮お前たちなど俺の敵ではない」 白いタキシードを着た焔がオッドアイで残る9人を睥睨した。 「自意識過剰の脳みそ空洞男が」 と黒い学生服を翻して三蔵。 「はははははは」 朗らかに笑いつつも目には”殺”の文字を浮かべている八戒。 「・・・・くだらん」 先ほどから眉間に皺を寄せたまま表情を変えない金蝉。 「ばば抜きですか、それもまたいいですね♪」 と賭け事には自信のある天蓬。 「・・・・なんか勝負見えてんですけど・・・・」 「あ〜酒飲みてぇ・・・・・」 賭け事ならば普通の人間に比べれば格段に強いことは確かだが、その運をもってしてもこの場に いる連中の『悪運』には勝てないことがわかっている悟浄と倦簾にはあきらめムードが漂う。 ・・・・・まぁ、でもまだイカサマて手もあるしな・・・・・・・ しかしただで諦めないあたりさすがこの試合にのぞむ10のメンバーのうちの一人である。 「ったく、じじぃどもが悟空の相手なんかできるわけないだろう。俺にまかせとけよ」 悟空と幼馴染!という立場を前面におしだし不敵に笑ったナタク。 「おやおや、皆さんおあついことですねぇ」 ねっとりした口調で呟いた清一色に八戒の鋭い視線が走った。 やはりこの二人の仲の悪さは相変わらずのようだ。 「本当に、焔も皆も困ったものです」 と目を閉じたまま呟いた紫鴛に、じゃあ、何で参加してるんだ?と皆が問いたかったのは言うまでも ない。 「よし、それじゃあ配るからな」 壇上から降り立った観世音はトランプのふたをぱかっと開けた。 その間にどこかから現れた三門君(生きてた!/笑)とスピネル君がトランプ用の10人がけ円卓を 一同の前に置いた。 「適当に座れ」 ・・・と言われる前におのおの好き勝手に席に腰をおろした。 |
(こんな感じ/笑) |
「ふっ、俺の前は三蔵か」 「コロス」 「おや、僕の前には倦簾じゃありませんか・・・ふふふ」 「・・・・(倦簾、顔ひきつってます)」 「我の前は八戒君ですか」 「相変わらず死人のような顔で、さっさと棺おけに戻ったらどうですか?」 にこにこ。 「(前を気にしなけりゃあ結構いい感じの席だよな♪)」 心の中で呟く悟浄。 「前はともかく・・・・両隣にお前らとは鬱陶しい」 金蝉の額にまた一筋線が増えた。 「顔あわせは済んだようだな」 一同を見渡した観世音が言いながらトランプをきる。 かなり手馴れたつてきだ。 ・・・・・ばば抜きにそんなものが必要なのかどうかはともかくとして。 「よしっ!」 観世音は気合をいれると目に捕らえられないほどのスピードでカードを配りはじめた。 ・・・・・と思った5秒後には10人の目の前には5,6枚のカードが積まれていた。 「言っとくがこのばば抜きはただのばば抜きじゃあないぞ」 「「「「「・・・・・・・は?」」」」」」」 観世音の言葉に一同が振り向く。 「やっぱ勝負は最期がみどころだからな・・・・・・・逆ばば抜きだ!」 ・・・・・それはつまり? 「最期までばば持ってた奴が勝ちだ!!」 「「「「「「なるほど」」」」」 それで『逆』なわけか。 納得した一同である。 さて、ばば抜きで配られたカードがわずか5枚というなんとも「それであわせられるのか?」と 思われるが場には数字のあったカードが出されていく。 見渡したおのおのの手元に残ったカードは・・・・・・・ 2枚・・・・・・・八戒、天蓬(さすがである・・・がこの場合は逆に不利にもなる) 3枚・・・・・・・焔、三蔵、金蝉、ナタク、紫鴛、清一色 4枚・・・・・・・倦簾 5枚・・・・・・・悟浄 「おや、悟浄・・もしかして一枚もあわなかったんですか?」 「・・・うっせーての」 ちょっと気分を害したもののばば抜きは手持ちの数が多いほうが有利なときもある。 というよりもこの逆ばば抜きでは多いほうが特だ! 気をとりなおして姿勢をただす・・・・・が何気に八戒からは視線をそらすのだった。 「んじゃ、右にいる奴のとってけ」 そして、静かなる戦いが開始した。 まず焔が紫鴛のカードをひいた。 「・・・・くっ」 悔しげな声をあげ、中央の山にそろったカードを置いた。 手持ちのカードはあと二枚である。 「それでは・・・」 続いて紫鴛が天蓬のカードをひいた。 「おやおや・・・」 こちらも中央の場にそろったカードを置く。 手持ちは一枚となった。 「では、失礼して・・・・・・・・・・あ」 金蝉のカードをひいた天蓬の顔が笑顔のまま固まった。 (・・・・・揃ったな) 「これで一人脱落したな」 よしよし、と頷いた焔。 そんな焔に天蓬は「いつか・・・・」と心に復讐を誓ったのは言うまでもない(笑) 「運の強さが仇になったんだな。ところで悟空、お前は誰が勝つと思う?」 「ほえ?」 八戒の用意した食べ物を食い尽くした悟空は観世音の言葉にやっと現状に思いをよせた。 「何してんの、みんな?」 「勝負してんのさ、お前を賭けてな♪」 「・・・・・オレ?」 意味がわからない悟空はこてっと首をかしげる。 「オレなんか賭けてどうすんだ?オレは食べられないぞ?」 「まぁ、別の意味で『食べる』には極上の素材だと思うぞ」 「????」 ますます混乱する悟空。 「おいっ、悟空に余計なことを教えるんじゃねぇっ!!」 すかさず金蝉の注意が飛ぶ。 さすが父。(笑) 「いいから、続けろ。終わらねぇだろうが」 「てめぇが余計なことを言うからだっ!!」 そのうち血管が切れてしまうかもしれない・・・・・金蝉であった。 さて、勝負再開。 あがってしまった天蓬は置いて、金蝉が八戒の手札をひいた。 「・・・ちっ」 舌打ちした金蝉が中央の場に揃ったカードを放り投げた。 残る手札は一枚だ。 「残念でしたね、金蝉先生。さて僕ですね」 振り向いた八戒の目の前で露骨に不機嫌そうな三蔵の顔がある。 「早くとれ」 「そうは言っても下手するとあがってしまいますからねぇ・・・・・・とこれでいいですかね」 八戒は会心の笑みを浮かべた。 手札は2枚のままだ。 「ちっ・・・・」 敵に花を贈ることになった三蔵は眉間に皺を寄せてナタクの札をひいた。 ひくひくと三蔵のこめかみが動く。 ・・・・どうやら揃ってしまったらしい。 これで三蔵の手札は1枚である。 「僕か・・・・・まぁ、揃う可能性としては一番高いよな・・・ホント一組くらい揃えてくれればよかったのに」 「うっせーな!とっとと引け!」 半分あきらめ気分でひいたナタク。 やはり揃ってしまったらしく場にカードを捨てる。 「それじゃ俺だな〜っと・・・・て揃いやがった・・・・」 これで悟浄の手札は3枚である。 「残念でした〜と・・・・よいしょっ」 年寄りのような掛け声をかけて清一色のカードを引いた倦簾。 はぁぁ、とため息をついて場にカードを投げ捨てた。 これで倦簾のカードは2枚。 「では、我ですね〜・・・・・失礼しますよ」 妙に楽しげな清一色は嫌そうな顔の焔からカードをひいた。 「おやおや、残念」 あまり残念そうな声音でもなく清一色が場にカードを置いた。 これで手持ちは1枚。 「これで一巡したわけか・・・ふ〜ん、まぁ皆しぶといな」 「僕はとてもあっさりとした性格なものですから」 一番最初にあがり見物人と化した天蓬の言葉に皆が心の中で『嘘つけ』と突っ込んだ。 「悟空、退屈じゃないですか?」 じ〜とゲームのなりゆきを見ていた悟空に天蓬が声をかける。 「え〜う〜ん・・・・・・・・オレもやりたいっ!!」 「それはちょっと無理ですね、ゲームは始まってしまいましたし・・・・景品本人が出場するというのは・・ あぁ、そうだ。悟空ちょっと・・・・・」 「ふぇ?」 含みありまくりな笑顔を浮かべた天蓬に、悟空は呼ばれるままについていく。 「おいっ!!悟空をどこへつれて行くつもりだ!!」 すかさず焔のチェックが入った。 勝負時でも悟空への視線ははずしていないらしい。 「ご心配なく。景品は景品らしくしないとね♪」 意味不明な言葉を残して天蓬はいそいそと悟空の背中を押して体育館の中へ消えていった。 そんなこんなでゲームは2巡、3巡し・・・・・・・・・ 残ったのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <NEXT 2> |