- 第十八幕 -







 バラバラッと音をさせてヘリが降下してくる。
 教師、生徒一同が見守る中、紐はしごがばっと投げられた。

「焔、登場〜〜っ!!」
 そのはしごには巨大クッキーを落とした焔がつかまっていた。
 真っ白なタキシードが目にまぶしい。
 ・・・・・・どこでオーダーしてきたものなのか・・・・・。
 普通の人間ならば正気を疑う格好である。(ちょっと酷い・笑)
「悟空っ!!今行くぞっ!」
 
「「「「あぁっっ!!!!」」」」
 高度はまだ100メートルはありそうなところから焔がダイブした。
 通常の人間なら良くて骨折、悪ければあの世行きになることは間違いない。

 が、しかし。
 そこは常識はずれの焔である。

 空中でくるりと一回転すると見事に片膝をついて着陸した。

 『おぉぉぉっっ!!』
 パチパチパチパチッッ!!!
 思わず満場から拍手が起こった。
 まるでどこかの特撮ショーのようだ。

「焔、かっこいいぃっ!!オレもやりたいっ!!」
「わけわかんねーこと言ってないで体育館に戻れっ!!式はまだ終わってねーんだ!」
 金蝉がぴょんぴょんと飛び跳ねる悟空の襟首を掴んでひきずっていく。
「いやだーオレもするーっ!!」
 ・・・・・悟空は駄々ッこのようだ。
「そうだ、金蝉。せっかくの俺と悟空の逢瀬を邪魔するな」
「何が逢瀬だ!・・・・この馬鹿どもが!」
「ふんっ、悟空。さぁ帰ろう。今日はお前のために特別メニューを用意した。たかが卒業式など
出るまでもないだろう」
「うーん・・・特別メニュー・・・」
 金蝉に連行されていた悟空が焔の言葉に立ち止まり、あやうく金蝉はこけそうになった。
「おいっ・・・っ!」


「おい、そこの不法侵入者」
 その時、教師生徒の人だかりから三蔵が現れた。
 黒の学生服が風にあおられ、はたはたと翻っている。
「誰のことだ?」
 相対した焔が不敵な笑みを浮かべた。
「お前しか居ないだろうが、それとも自分がどれほど馬鹿なマネをしているのかわかってないのか?」
「貴様こそ何の用だ?・・・前々から俺と悟空の周りをうろちょろと鬱陶しいと思っていたがそろそろ
決着をつけねばならないだろうな」
「誰がうろちょろだ!・・・それは貴様のほうだろうが!!」



「おぉっ!ついに衝突しましたね焔と三蔵。さぁ、これからどうなるのか見ものです!」
 来賓のために用意された机をいつの間にが我が物にした八戒が壇上からマイクを持ってきて
解説をはじめていた。
「・・・・・俺は何でここにいるんだよ・・・」
 なぜか八戒の隣に座らされた悟浄がひきつり笑いを浮かべる。
 だが、そんな悟浄の言葉を無視して八戒の解説は続く。
「おっと・・・三蔵が行動に出るようです!!」
 その八戒の後ろにいる生徒一同はもう卒業式などそっちのけでこの世紀の見ものを見物する
べく椅子を校庭に向けて並べなおしている。
 もちろんその筆頭には理事長がいて、隣には痛む胃をおさえる二郎神が涙を流しているのだった。
 そしてどこからやって来たのか”あたたか〜いコーヒー、300円!サンドイッチ560円です〜っ!!”と掛け声が聞こえている。

 
 

 
 風が校庭の黄土をまきあげ、砂塵がおこる中、黒と白・・・まったく対照的な衣装に身を包んだ
三蔵と焔の間を稲妻が走る。
 先に動いたのは八戒の解説の通り三蔵だった。
 秀麗な美貌には『激怒』の文字を浮かばせた三蔵は、ちっと舌打ちした後―----宣言した。

「・・・・・・・てめぇはコロスっ!!」

 三蔵は手にはめていた白手袋をはずすと焔に投げつけた。
 古来からの由緒正しき決闘の申し込みである。(おいおい)
「フッ、返り討ちにしてくれる」
 焔は足元に落下した手袋を踏み潰した。




「ついにはじまりました!焔VS三蔵!!さぁ、軍配はどちらにあがるのでしょうかっ!?ますます
目がはなせませんね〜。放送席には特別ゲストとして悟空先生にいらしていただいてます!」
「・・・いつの間に呼んだんだよ・・・」
 八戒を間に挟んで右に悟空が座っている。
 その目の前には八戒特製の桃まんが山と積まれ、それを口につめこむ悟空は周りのことは一切
見えていないと言っていいだろう。
「悟空先生はどちらが勝つと思われますか?」
「んぐ?・・はぐっ・・・・んっ・・とごくんっ!!これ美味いなっ八戒!!」
「悟空先生に喜んでいただけて僕も嬉しいです。まだまだたくさんありますからいくらでも食べて
下さいね」
「・・・・・・・会話になってねぇて・・・・」
 とことん常識はずれな連中の中、自分だけは真っ当な道を行こうと思う悟浄なのだった。




 さぁ、いよいよ・・・・っ!!!!!
 ・・・というところで予想もしないところから水がさされた。
「あ〜、そこの二人。盛り上がってるところ悪ぃんだけどな」
 どう考えてもとめるほうより煽る側だろうと思われる観世音が理事長室から持参した豪華な椅子に
肘をつきながら手を差し上げた。

「止めるつもりか?」
「邪魔するな、クソばばぁ」
 ぎんっと睨み付けた二人の視線を観世音はものともせず笑って流すとにやりと笑った。
「別に俺は止めるともりはない」
「観世音っ!!」
 横に立っていた二郎神が非難の声をあげる。
「だがなぁ」
 それをはじめから無かったことのように無視して観世音は続ける。
「やっぱ勝ち負けには、何か賭かってたほうが盛り上がるだろ?」




「さすが、観世音理事長。他の方とは言うことが違いますね〜」
「・・・・理事長が煽ってどうすんだよ・・・」
「はぐはぐっはぐはぐはぐっっ!!」
 にこやかに解説を続ける八戒と疲れたように突っ込みを入れる悟浄。
 そして未だ食べつづける悟空。



「ま、この場合の景品は当然・・・・」
 理事長の言葉にその場にいた人々の視線が解説席で桃まんを口につめていた悟空に集まった。


「「「「「「「「悟空(先生)だな」」」」」」」」」
「どうやら意見は一致したようだ」
 観世音は大層嬉しそうに破顔した。

(ああぁぁっっ!!理事長の悪い病気がまた〜〜〜〜っっっ!!!うぅっ・・・っ胃が・・・っ!!)
 どこまでも不幸街道まっしぐらの二郎神(笑)


「俺はそれで構わないぞ。もともと悟空は俺のものだがな」
「寝言は寝て言え」
 焔と三蔵はお互いに一歩もひかない。

「それじゃあ、はじめるか?」
 

「あ。待ってください」
 理事長が開始の合図をしようとしたところへ再び待ったの声がかかった。
 今度は解説していたはずの八戒である。
「何だ?」
「悟空先生が景品ということなら僕も参加します」
 にっこり。
 強敵出現!である。
「この勝負に勝った人が悟空先生の独占権を得られるんですよね」
「ああ、そうだ・・・・・・・・・・ふふん」
 観世音がまた含みのある笑いをもらした。
「そうだな・・・それも面白いかもしれないな・・・・よしっ!」
 観世音は徐に立ち上がると解説席のマイクを奪いとり、キーンと音が鳴り響くほどに音量を
MAXにして言い放った。



「天竺高校並びにこの近所にいる奴ら全員に告ぐ!!これから悟空の独占権をかけて
一大勝負をとりおこなう!我こそはと思う奴は名乗りをあげろ!」




 観世音理事の言葉に周囲からどよめきがあがった。

「ちっ・・クソばばぁめ・・・余計なことを」
「何人来ようと俺の敵ではない」




 さぁ、すでに参加が決定している三蔵、焔、八戒・・・この三人を相手にしようという命知らずは
何人いるのかっ!!!
 
 人ごみの中からゆっくりと校庭に足を踏み出した数人の姿。


「・・・・金蝉に、天蓬・・・ほう、倦簾と悟浄もか・・・勝てるとは思えないが万が一てことがあるからな
世の中には。それから・・・意外だな紫鴛もか、それから清一色と・・・・・なんで部外者のナタクが
いるのか知らねーが・・・・・総勢10人か。まぁ、予想通りといえば予想通りだな」

 校庭に用意された壇上の上から進み出た10人を睥睨しながら観世音は呟き・・・・・・・・・・
 勢いよく天に向かって手を差し上げた。







「それでは、今度こそ勝負開始だ!!」
















† あとがき †

さて、ここまでご拝読いただきました方は予想がついてらっしゃると
思いますが次回で疾風怒濤は終幕です!!!
予定日は4/5の悟空の誕生日!!(無事にUPできるといいなぁ・・・)
名乗りをあげた10人は投票の結果10位以内に入っていた方々です!
本当に投票も1万票を超えて、皆様のご協力には
感謝の念にたえません!!(T×T)
ありがとうございましたっ!!
・・・・が、まだまだ勝負はこれからです!!(笑)

終幕までの3日間。
御華門が気のむいたどこかの時間で無制限投票が
行われますっ!!
10位以内にいる方々なら1位を目指すことも不可能ではありません!!
終幕に向けてどうぞよろしくお願いいたします!!




そして。
疾風怒濤”終わるのか〜っ”と思われた皆様(ニヤリ)
本編としては次回で終わりですが挿話・番外編としてまだもう少し
色々と書く予定です♪
悟空たちが一緒に暮らしてるわけとか・・・・
悟空の生い立ちとか・・・
三蔵と悟空のはじめての出会いとか・・・・
その他いろいろと・・・・
設定はしてあるけれど本編では書くことが出来なかったお話を
UPしていく予定です♪
どうぞお時間がありましたらお見捨てにならず
お付き合いくださいますと御華門、至上の喜びでございます。

では、長くなりましたが
第十八幕、ご拝読ありがとうございました!!






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