ー再会ー








「焔っ!!」

 紫鴛の導きにより、下界におりた悟空は目の前にあった探し人に満面の笑みで
 抱きついた。


「悟空、お前・・・何故・・・」
「何でお前・・・」
 だが、抱きつかれた焔も、また隣に居た是音も出会うはずの無い場所での
 悟空の姿に呆然とする。
 悟空は独りでは下界にはおりて来られないはずなのだ。
 それがどうして・・・。

「良かった〜っ!紫鴛に言ったら下界におりる方法教えてくれたんだけど・・・」
「あいつ・・・っ!!」
 
 余計なことを、と焔は天界に居る右腕に心の中で悪態をつく。
 
「紫鴛がな〜・・あいつも偶にはいいことするな」
 是音は苦笑しつつも、悟空の曇りの無い笑顔に心が浮き立つ。

「悟空・・」
 焔とて悟空の姿が嬉しくないわけでは無いのだが、やはりこの下界には会わせ
 たくない人間は山ほど居るし、自分は物見遊山に来ているわけではない。



 闘神として・・・妖怪を殺しに来ているのだ。
 


 抱きつく悟空を引き離すと、緩みそうになる顔を必死に押しとどめた。

「悟空・・・俺は下界に降りてくるなと、お前に言ったはずだな?」
「うん、でも・・・」
「俺たちは遊びに来ているわけじゃない。すぐに帰ると言ったはずだ。どうしてそれが
 待てない?」
「・・・・・い」
「何だ?」




「・・・待てない・・待てるわけ無いだろっ!焔の馬鹿っ!!




 悟空がうつむきがちだった顔をきっと上げ、金色の瞳で焔を睨みつけた。
 その瞳は・・興奮か悲しみからか、潤んでいる。

「俺は・・焔の傍に居るって約束した!焔の傍に居たいから・・・っだから・・・」
 彼等から離れることを決意した。
「焔の傍に居ないと意味が無いっ!俺は焔が無理してるところなんか見たくない!
 俺はね・・・焔が思ってるほど綺麗なんかじゃ無いんだよ・・・?」
「悟空、何を・・」
「紫鴛は・・・焔が自分のことを汚れてるって思ってるって・・・だから俺のことだけは
 汚したくないんだって・・・そう言ってた。だけど焔・・・俺は・・・」
 悟空が泣きそうな笑顔を浮かべる。







「焔なんかよりずっと汚れてるんだよ」








 慈しみ、愛し、名前と温かさをくれた・・・誰よりも何よりも大切な人をこの手にかけた。
 
「・・・殺したんだから・・・」
 金蝉の血は悟空の全身に飛び散り、紅く染めた。
 紅く、紅く・・・その紅さこそが罪だと思い知らせるように。

 悟空が己の両手を目の前に掲げた。

「俺の手は・・紅く染まってる。ずっとずっと・・・焔なんかよりずっと・・・」
 いくら時を重ねようと決して消えることの無い過去。
 無かったことになど出来はしない・・・。


「っ悟空!」
 あまりに辛すぎる悟空の姿に焔は掲げられた手を己の手で包み込む。
 

「お前は・・・汚れてなどいない。誰にもそんなことは言わせない」
「焔・・・・」
「・・・俺という存在がお前を苦しめていることはわかっている・・・・それでも、俺は・・
 お前に傍に居てもらいたいんだ・・・」
 そのまま焔は悟空を腕の中へ抱きしめる。
 すっぽりと収まる小さい体は、18ですでに成長を止めた。
 


「・・・・許してくれ、悟空・・」




「・・・あのね、焔。俺の言うこと・・ぜんっぜん聞いてないだろ?」
「・・・?」
「俺は、自分の意思で、焔の傍に居たいって思ったからここに居るんだ。同情とか・・
 そういうのじゃ無い。俺は、焔ことが・・・」





「好きなんだ」






「悟空・・・っ」
 滅多に無い悟空からの告白に焔は感動に打ち震える。
 その思いのまま焔は場所柄も関係なくますます悟空を抱きしめる腕を強くした。























「・・あのさ〜、クサイ芝居もそのへんにしといてくんない?」




















 三人・・悟空と焔、是音の頭上から落ちてきた声に悟空は身をこわばらせた。
 
 それは・・・その声は・・・・・・・・・・・・・・・・





 悟空は焔の腕の中から・・・・ゆっくりと顔をあげた。













「よぉ、久しぶり」

 そこに居た紅い髪の男は、悟空を見て軽くを手をあげた。

















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご、じょう・・・・・・・・・?」




















  

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