脇道











「焔・・・」
「ああ、悟空か。探していたんだ」
「・・・下に行くの?」
「ああ、行ってくる。いい子で待ってるんだぞ?」
「もうっ!俺はそんな子供じゃないっ!」
「はははは、まぁ、土産を持って帰ってやるから・・・」
「・・・焔、俺・・・」
「駄目だ。俺を困らせるな・・・笑って見送ってくれ・・」
「・・・ん、行ってらっしゃい・・・」
「すぐに帰ってくるさ」






























「死ね」
 焔の手にある青龍刀が眼前の敵を一薙ぎにする。
「くたばりやがれっ!!」
 ズダダダダッ、と是音の機関銃が残った敵をのきなみ滅ぼした。




「・・・全く雑魚ばかりが鬱陶しい」
「ははは、下手な鉄砲も数打ちゃ当たる・・とでも思ってんじゃねぇか?」
「愚かだな」
 焔は青龍刀についた血を振り落とすと、目的地である吠登城に目をやった。

「ふ・・くだらん結界だ」
「けど妖怪にしちゃ上等だな」
 焔たちの直接の侵入を阻んでいるのだから。
「だが・・・無駄だ」
 焔は不適な笑みを口元に浮かべた。
 是音も懐から煙草を取り出すと火をつける。

「・・・結界をぶち破る前に一ついいか?」
「何だ?」
「これは俺の口出す問題じゃねぇけどな・・・悟空を何故信じてやれない?」
 いつも下界におりる焔を見送る悟空の瞳には悲しみが浮かんでいる。
 是音が気づくはずのそれに焔が気づかぬはずもないのに。
「確かにお前が口を出す問題では無いな」
「・・・・・・・・・」
「・・・信じていない、わけでは無い」
「なら、どうして・・・」

「それ以上に俺は悟空を失うことが恐ろしいんだ」

 是音の目が見開かれ、口に加えていた煙草がぽろりと落ちる。
 それほどに焔の言葉に驚いた。
「驚いたか?」
「・・・・あ・・・・ああ・・」
 まさか焔がそこまで素直に是音に話すとは思ってもいなかったのだ。
 焔が苦笑した。
「俺は悟空のために強くなる・・・そして、弱くもなる。おそらく俺は・・・・・・・・・
 悟空を失えば狂うだろな」
「大将・・・」
「悟空は、・・・俺のことを選んだのは同情の部分が大きい。いつそれを失うのかと
 ・・・ずっと俺の傍に居ると言ってくれた悟空の言葉を信じないわけではない・・・
 それでも不安を抱かずにはいられないんだ。だから少しでもそれを誘発する
 可能性があるものからは遠ざけていたい」
「・・・何で、それを悟空に言ってやらない?あいつは・・・」
「俺は悟空を愛している。愛している相手に弱みなど見せたいか?」
「・・・いーんじゃねぇのか、そういうのも。悟空はそんなことで大将を見捨てたり
 なんかしねーと思うぞ」
「・・・そうだろうな、だが俺は嫌なんだ」
「・・・わからないでも無いがな・・・」
 苦しい男心だ。


「・・・さて、無駄話ばかりしては遅くなる。さっさと片付けるとしよう。悟空が天界で
 待っているだろうからな」
「へーへー・・」
 是音は機関銃を構える。
 焔も青龍刀を持ち上げた。
「是音、気を散らすな」
「もちろん」
「大した妖怪では無いが、手を抜くと痛い目をみるからな・・いつかのように」
 とは言うものの、闘神である焔と互角の勝負ができる妖怪など下界には存在
 しない。


「行・・・・っ」

 その時、二人の目の前に光が落ちてきた。

「「何・・っ」」

 そして鋭い風が吹き荒れる。
 
 漸く収まったそこに、二人が見たものは・・・・・・・・・



「「悟空っ!!?」」

「・・・っ焔!!」



 天界に居るはずの悟空だった。






  







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素直な焔というのはなかなかに気味が悪い(酷っ)




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