「あのー、ちょっとした疑問なんですが・・・」 旅の途中、コック帽を被った八戒が挙手をして発言を求めた。 その目の前にはピンク色の薄布を何枚も重ねて作った衣服に身を包む、『ふわふわ』としか 表現しようの無い様子で悟空が踊っている・・・いや、跳ねている。 天蓬曰く、『今日のテーマは”妖精”です♪』・・・なのだそうだ。 「何だ?」 しかし、その問いかけに耳を傾けてくれたのは10人(+1匹)という状況でたったの三人。 言わずとしれた苦労人トリオ。是音、倦簾、悟浄である。 他の人間は悟空に構っているか、聞こえていても無視しているのだろう。 だが、八戒はそんなことには一向に構わず言葉を続ける。 「僕たち、いったいどこへ向かっているんでしょう?」 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」」 にこにこ笑う八戒に3人は冷や汗を流しつつ固まった。 言われてみればその通り。 自分たちはいったいどこへ向かっているのだろう?と頭に浮かぶ。 誰が舵取りをしているのか知らないが、皆同じ方向に向かっている。 「そんなことは決まっているだろう」 悟空にフランクフルトを差し出しつつ、焔は偉そうに言う。 「花果山だ」 「桃源王国だ」 「長安だ」 「「「・・・・・・・・・・・・・。」」」 「あはははは、見事にバラバラですね〜」 どこまでも朗らかに笑う八戒だが、その一言が新たな争いの口実を与えたことを自覚して・・・ いるのだろう、たぶん。確信犯というやつに違いない。 「ふ、俺と悟空は花果山に行くと決まっているのだぞ」 「ババァが余計なことして仕事を増やさないうちに国へ戻る」 「目的は果たしたんだ、いつまでもこんなところに居る義務は無い」 焔、金蝉、三蔵はそれぞれに言い張った。 もちろんこの三人の意思を変えることは殺しても不可能だ。 「・・・焔だけ?三蔵も金蝉も一緒に行かないの?」 だが何事にも例外というものが存在する。 先ほどまで天真爛漫が服を着て歩いていたような悟空がしゅん、と寂しそうな視線を三人に 向けた。 「大丈夫だ、悟空。俺が居れば十分だ。寂しい思いはさせない」 真っ先に行動したのは焔だった。 悟空の両手を取り、歯が浮くような言葉を並べたてる。 「食べたいものは何でも言うといい。一人寝が寂しいというなら一緒に寝よう。この世界のどんな ものでもお前のために用意してみせる」 他の男が言えば「嘘つけ」で終わる言葉も焔が言えば本気でやりかねない。 ガウンッ! 「何をする、三蔵。悟空に当たるではないか」 「・・・ちっ」 三蔵が放った弾は焔にあっさりかわされる。 「おい、てめー。ついて来たけりゃついて来い。仕方ねーからつれてってやるよ」 どこまでも尊大で、凶悪な視線でそんなことを言われれば誰しも冷や汗を浮かべつつ逃げ腰に なってしまうところだが、悟空だけは違うらしい。 途端に嬉しげな表情を浮かべた。 それを目にした三蔵の無表情な顔に勝ち誇ったような表情が僅かに浮かぶ。 近親者でもわかるかという僅かな動きだったが焔には伝わったらしい。 眉間に皺を寄せ、むっとしている。 「金蝉、あなたもアピールしないと負けますよ」 「・・・・・・・誰がするか」 傍で呆然とその様子を見ていた金蝉に天蓬が発破をかける。 元々、闘争心などという言葉からはかけ離れた所に居る金蝉である。無理も無い。 ・・・がしかし。 「そんなこと言って、悟空が取られたらどうするんですか!」 「・・・・・別に」 「別にじゃありませんっ!もう二度と悟空のあんな姿やこんな姿や****な姿なんか見れなく なるんですよっ!?」 「・・・・・・・・・・」 どんな姿だ・・・いったい。 「僕はまだ悟空に**でピーでピーピーな格好とかしてもらおうと思っているんですから!」 だからその伏字は何なんだ。 ますます嫌そうな顔になる金蝉に天蓬はらしくなく逆効果だったか、と内心反省するが表には 出さない。 「・・・・金蝉は?金蝉は・・・オレのこと嫌い・・・?」 少し離れた場所で無言の火花を散らしはじめた焔と三蔵から避難してきたらしい悟空が 何も言ってくれない金蝉に零れ落ちそうな涙を必死に耐えつつ訴える。 ここでいかなきゃ男じゃない。 「・・・・誰も嫌いだとは言っていない」 「じゃ、好き?」 「・・・・・・」 「なぁ?」 まるでどこぞの青春まっただ中にある高校生のような会話がかわされる。 これは聞いているほうが恥ずかしい。 「・・・なぁってば!」 「・・・・だ」 「え?」 小声でささやいた金蝉の言葉を聞き取れなかった悟空が聞き返す。 「だから・・・だ!」 「聞こえない!」 金蝉の眉間がぴくり、と波打った。 「好きだっ!」 あたりはしーんと静まりかえった。 |
連載再開で〜すv お待ちいただいきありがとうございましたv これからはそれなりなペースで更新していけると思いますv 投票のほう、敗者復活投票など近日行いたいな〜と 思っておりますので人気投票と共によろしくお願いいたしますv |
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