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ぷ〜ん・・・と漂う香ばしい匂い。 じゅ〜っと焼ける美味しそうな音。 ・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「・・・・・・・・・・メシっ!!」 がばっと起き上がった子供は本能の命ずるままに目的物=食い物に突進し、箸を握った。 そして・・・・・・・ まさに”がつがつ”と表現できそうな食い様を繰り広げる子供がそこに居た。 「・・・・・おい」 「うっめ〜っvvvv」 がつがつがつっっ!!!! 「おい」 「これも〜っっ!!!」 がつがつがつっっっ!!! ごくんっ!! 「・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・」 「おいっ!」 「・・・・・・・ふにゃ?」 思いっきり耳元で叫ばれた子供は箸を握り、エビフライを口にくわえたまま声のかけられた方を 振り向いた。 「はひ(なに)?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・食ってからでいい」 額をおさえてあきれ返った青年を気にすることなく子供は再び料理に視線を戻した。 そして、約1時間後。 「あ〜食ったぁっ♪おいしかったぁ♪」 子供は椅子に深くもたれかかって満足そうにお腹をさすっていた。 テーブルの上には今にも雪崩を起こしそうな皿の山、山、山。 いったいその小さな体のどこへ入ったのだろう・・・とそれを見守っていた3人は思わずには いられなかった。 「ようやく、落ち着いたようだな」 「そのようですね」 「・・・・よく食ったな」 子供はその声に、はじめてそこに人が居たことに気づいたかのように視線をやる。 そして・・・・・。 「あんたたち、誰?」 「「「・・・・・・・・・」」」 食べる前に聞けよ・・・・と思ったことは言うまでもない。 「あれ〜・・・それに、オレどうして??ここどこ??え??え??」 満腹になってはじめて自分の置かれている状況に気づきはじめたらしい子供はきょろきょろと 金色の瞳で周囲を見渡す。 「覚えていないのか?」 騎士姿もりりしい青年に訪ねられて子供は首をかしげる。 そのまま顎に指を当て・・・・・・・・。 「あっ!」 「思い出したのか?」 「・・・・・・・ぜんぜん」 思わずがくっと体を傾げた3人。 いったい今の考える仕草は何だったのか? 「それより、あんた誰?」 「人に名前を聞くときは先に自分から名乗るものだろう?」 「あっそっか。オレね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悟空!悟空て言うんだ♪」 太陽の光が金色の瞳に反射して輝く。 「悟空、か。良い名前だな」 「へへ〜♪」 「では、俺も名乗ろう。俺の名は焔。ご覧の通りの騎士姿だが、今はどこにも仕えてはいない」 「焔・・・ほむら・・・・・・・・」 悟空と名乗った子供は青年の名前を繰り返す。 「うんっ!覚えたよ♪」 悟空の浮かべた満面の笑みに焔は自然と自分の口元が緩むのを感じた。 「焔、二人で盛り上がっていないで私たちも紹介していただけませんか」 そこへ静かな声が割り込んだ。 「悟空、私は紫鴛といいます。ご覧の通りの魔道士です」 「俺、悟空!よろしくな、紫鴛!」 悟空が元気よく手をあげる。 「俺は是音だ。機甲士なんてものをやっている・・・つってもあんまり見かけねぇ職業だからわからねぇ かもしれないが・・・」 「きこうし?」 「俺には紫鴛のように魔力がない。そういう奴でも魔やモンスターに対抗するために、こういう武器を 扱う戦士のことだ」 是音が肩にかついでいる機関銃を悟空の目の前に差し出した。 「へぇ・・・触ってもいいっ??」 という前に手が出ている。 「悟空、危ないからあまり触るな」 そこへ焔の邪魔が入る。 「これ、危ないの?」 「使い方を知らない奴にはな」 「そっか〜・・・んじゃ、今度教えてくれよな、是音!」 「ああ」 焔の言葉に大人しく手を引いた悟空は軽く是音にねだる。 ・・・・・・が。 「「「・・・・・・今度?」」」 一同は悟空の口から出た言葉を繰り返した。 「悟空、俺たちはいつまでもここに居るわけではない。家はどこだ?」 「家?無いよ」 またもや軽く答える悟空。 「ご家族は?」 「家族?オレ、一人だけだけど」 「・・・・それじゃぁ、お前今までどこに居たんだ?」 「えー・・・・あっち!」 悟空は来た方向を指差す。 ・・・・がその方向に街は無数にある。 「・・・・・・迷子、なのか?」 無難な焔の推理と言えよう。 「ううん。腹減ってたから出てきただけ」 悟空の言葉に焔は眉ねを寄せた。 悟空が居た家では、ろくに食事をとらせてもらえず迫害されていたのだと思ったのだ。 まぁ、そう思うのも無理はない。 いくら愛らしい姿形といえど・・・・・その双眸に輝くのは金色の瞳。 それは”魔”の徴と古来から伝えられてきたもの。 忌み嫌われてきたものだったから。 ・・・・・・・・・・それにしては悟空は明るすぎたが。 「悟空・・・、俺たちと共に来るか?」 「焔」 焔の提案に隣の紫鴛が責めるような声を発した。 自分たちは花果山に全土統一の鍵を求めるための旅の途中。 それも急ぎだ。 悟空のような子供を共にするのは憚られた。 「いいんだ。悟空、どうだ?来るか?」 「・・・・・・一緒に行ってもいいの?」 はじめて悟空が心配そうな、不安げな表情を浮かべた。 「ああ・・・・来い」 他人のことなど興味を抱かない焔だったが、悟空だけは何故か放っておけなかった。 もしかすると、過去の自分を重ねていたのかもしれない。 たとえそうだとしても。 「・・・・・・・んじゃ、行く♪」 無邪気に喜ぶ悟空を捨て置く気にはやはりなれなかった。 「何のかんの言っていたわりに、花果山ももうすぐですねぇ」 金蝉一行はサイツェの街に足を踏み入れていた。 「ふん」 観世音から渡されたリュートを律儀に腕に抱えた金蝉はつまらなそうに鼻をならす。 「さっさと宿取ろうぜ。日が暮れちまう」 「大げさですね〜、まだお昼をまわったところですよ」 倦簾の言葉に天蓬が苦笑した。 そんな和やか(?)な風景を繰り広げる三人に・・・正確には金蝉に危機が迫った。 突然に袖をがしっっ!!と捕まれた金蝉は危うくリュートを落としそうになる。 「吟遊詩人とお見受けいたしました!!」 恐らく街のものであろう中肉中背の男は、腕を振り払おうとする金蝉にしがみつき必死の形相で 言い募る。 「お願いしますっ!!どうぞ、どうぞお助けくださいっ!!」 「知る・・・」 ”知るか!死ね!”と言い掛けた金蝉を遮り、天蓬が男の肩に手を置いた。 「確かにこの人は吟遊詩人ですが、いったいどうされたのですか?」 にこにこ顔の天蓬を見た男は、金蝉から手を離すと今度は天蓬に取りすがった。 「お願いですっ!!どうぞ私の宿に来て歌ってはいただけないでしょうか!!」 「まずは事情をお話ください」 「おい・・・」 勝手に話をすすめる天蓬に反対しようとした金蝉は、天蓬の”何か文句ありますか?”と言わん ばかりの笑顔に口を閉じた。 「お、お話いたしますので、どうか・・・お願いしますっ!」 どういう気まぐれか、男の嘆願に乗った天蓬・・・および金蝉、倦簾は男の宿へ腰を落ち着けた。 カウンターの席に座った一行は男におのおの注文を出し、話し出すのを待つ。 見るところ、それほど客に困っているようではない。 では、いったい何が男をこれほど追い詰めているのか? 「実は・・・・」 男は鎮痛な面持ちで口を開いた。 「死神がいるんです」 「「「・・・・・・・・・・・・・は?」」」 天蓬は笑顔のまま、金蝉は眉ねに皺を寄せたまま、倦簾だけ鳩が豆鉄砲をくったような顔をして 男の言葉を聞き返した。 「ほ、本当なんですっ!!信じてくださいっ!!」 3人の反応に疑われたと思った男は必死でカウンターに身を乗り出す。 「まぁまぁ、落ち着いて。順序良く話してみて下さい」 「は、はい・・・」 男は天蓬の言葉にぽつぽつと語りだす。 「昨晩のことでした。その男が・・・死神が現れたのは」 男は自分でコップを用意し、冷酒をそそぐ。 まるで飲まなければやってられないとばかりに。 「現れた男は夜のせいばかりでなく、蒼白な顔で・・・・時折のぞく舌だけが血のように赤くて 不気味でした・・・・男は言いました・・・『二部屋お願いします』と。一人しか居ないのにですよ!!」 どうやらかなり混乱しているらしい。 「だから聞いたんです・・『お連れ様がいらっしゃるんですか?』と。そうしたら・・・『ええ、ここに』 自分の隣を指差して言うんです・・・・誰も居ないのにっ!!!」 「まぁまぁ、どうぞ一杯」 「あ、こりゃすみません」 天蓬についでもらった酒をぐいっと飲むと男は再び口を開く。 「おかしいな、と思ったんですが全額前払いしていただいたので・・・お部屋のほうへ案内させて いただきました。それで、お聞きしました。『お食事はどうなさいますか?』と。すると・・・『ああ、それは もう済ませてきましたから・・・それより、このあたりで吟遊詩人の歌を聞かせてくれるような場所は あるでしょうかねぇ?』と聞かれたんで・・・『それならうちでもやってますよ』と言ったんです」 「ほぉ、居るならわざわざ俺を呼ばなくても良かっただろうに・・・」 面倒ごとを心底嫌う金蝉は一人、茶を飲みながらぼそりと文句を言った。 「それが!!!!!」 男はだんっとテーブルに手をつく。 コップがはねあがった。 「吟遊詩人が来る定刻に男は部屋から下りてきました・・・・・・で、近くの席に腰をおろして聞きはじめ たんです・・・・丁度あの席です」 食堂の中央あたりにある席を指差す。 その前には簡易舞台があった。 「しばらく男は聞き入っていました・・・・・・・一曲目が終わったころでしょうか。男が突然立ち上がり、 吟遊詩人のほうへ歩き出したんです」 こくこく、と天蓬が律儀にあいうちをうつ。 「そして・・・・っ!!」 男がぶるぶると身を震わせた・・・・・顔に浮かぶのは恐怖。 「男は・・・・『申し訳ありませんが、死んでいただきます♪』と言って・・・・・っ!!」 「死んでいただいたんですよ♪」 突然、目の前の男の口調が変わる。 「金蝉っ!!」 「ちっ!」 金蝉は己の目前に迫った手をリュートで防ぐ。 「おやおや、大人しくは死んでいただけないようですねぇ」 「貴様・・・っ!」 「やっぱり罠だったんですねぇ」 「天蓬!」 「わかってたんなら一言言えよ!」 呑気の感想を漏らす天蓬に金蝉と倦簾の非難がおこる。 「ところで、いったいあなたはどなたなんですか?」 「ああ、まだ名乗ってませんでしたね・・・我は清一色と申します」 「そこかっ!!」 倦簾が目の前の男にではなく、入り口に酒の入っていたガラス瓶を投げた。 「おっと・・・・危ないじゃありませんか」 その途端、目の前の男は崩れ・・・・入り口に別の人影が現れた。 「確かに顔色が悪いですねぇ」 「死神ならしいからな〜」 「ふんっ・・・・面倒だ」 この後に及んでも3人は焦ることもなく、日常会話?を続ける。 「申し訳ありませんが、あなたには死んでいただきます」 「それはこっちのセリフだ」 清一色が投げつける牌を身軽に交わすと、金蝉は持っていたリュートをかき鳴らした。 「うぐっ・・!」 清一色が膝を折る。 「天蓬、倦簾!!」 「わかっています!」 「おうっ!」 金蝉の呼びかけに天蓬が援護しながら倦簾が剣を振るう! コンビネーションはばっちりだった。 「俺たちを狙ったことを後悔するんだな」 「ちっ・・・これまで、ですね・・・」 倦簾の剣が清一色を袈裟懸けに払う。 「ぐっ・・っ!」 「逃がしませんよっ!!」 天蓬が呪文を唱える。 『滅魔っ!!』 天蓬の手のひらから光が放たれ、清一色に突き進む。 『・・・ぐ・・・・ぁぁ・・・・っっ!!!』 清一色は眩い光の中に塵となって消えた。 「・・・・・まぁ、身も蓋もねぇ最後だなぁ・・・・」 そう、倦簾が思わず呟いてしまったほどあっけない最後だった。 「邪魔なものは即排除が身上ですから♪」 「「・・・・・・・・」」 にこにこと物騒なセリフを吐く天蓬に金蝉と倦簾はうんざりした顔になる。 「でも、どうやらこの旅は”ただの”の精霊のお迎えというわけでは無いようですね」 「そうみたいだな、退屈だと思ってたけど結構楽しめそうじゃねぇか」 「ったく・・・クソばばぁめ」 苦々しく呟いた金蝉は、これから面倒なことになりそうだと嘆息したのだった。 そして、それぞれの旅は続く。 |
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† あとがき † 遅くなりましたっっm(__)m ようやくSene Vをお届いたします♪ あとがきを読まれているということは誰が今回消えたかもうおわかりですね?(笑) そうです!!あの人です!! 疾風怒濤では最後の戦いまで残っていたのにっ!! 恐るべし、投票!(笑) ・・・でも確かVを書き始めたころは白竜が最下位にいたはずなんですが いつのまにかちょっぴし上のほうに逃げて・・・。 それよりも・・・悟浄危ないんですけど(笑) いいんでしょうか・・・このひと、消えて(笑) さて、次回は今回出番の無かった三蔵一行からお話は はじまる予定です♪ ・・・いったいいつになったら皆が悟空と会えるんでしょうか・・・・ 全然争奪戦じゃないし(笑) とにもかくにも、次回はいったい誰が消えるのか!? 乞うご期待!!(・・・・?) |
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