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ガヤガヤ・・・ ガラガラガラ・・・ッ 人々の喧騒と馬車の行き交う音。 活気にあふれ、賑わうこの街の名はサイツェ。 花果山にほど近い天竺皇国内にある街である。 その大通りに・・・・・お腹を押さえて歩く子供の姿があった。 別にお腹が痛いわけではない。 「う〜〜腹減ったぁぁ〜〜っ」 きゅるる・・・きゅるるるるる・・・・るるるぅぅぅうっっ。 目は口ほどに物を言うとことわざにあるが、これほど「腹減った!」と訴えるお腹も珍しい。 通りには美味しそうな匂いを漂わせた屋台がたくさん並んでいる。 本当に本当に美味しそうだ。 「でも・・・食えないんだもんな・・・」 子供は街に入ってまず一番近い店の食べ物に手を出したのだ。 そうしたら・・・・・。 「そんじゃ5300円だよ」 「ごせん・・・?」 「何言ってんだい、お代だよ」 「お代・・・・?」 「・・・もしかしてあんた文無しかい?」 「・・・・???」 屋台の店主ははぁぁと諦めたような吐息をついた。 「いいかい、金がなけりゃ物も食えないし買えないんだよ」 「・・・金?」 「そうだよ」 「・・・・オレ、持ってない。ごめんなさい・・・・」 子供はしゅん・・とうなだれた。 ”金”が如何なるものかはわからなかったが自分が悪いことをしたのだけは理解したらしい。 「まったく今日のところは大目に見たげるけどね、今度やったら役人呼ぶからね」 「・・・・・ごめんなさい」 かくして子供は通りを空腹の身を抱えてふらふらと歩いているのである。 この人通り。 そんな様子で歩いていれば当然・・・・・・・。 どんっ!! 人にぶかることになる。 「・・・っ!!」 子供は勢いよく後ろに飛ばされた。 「焔、きちんと前を向いて歩いてください」 そう言ったのは白い服に身を包んだ魔道士風の男。 「俺はしっかり前を向いていた」 憮然とした顔で反論したのは高価な鎧に身を固めた騎士。 思わず誰もが見ほれずにはいられない美丈夫である。 「・・・そんなことよりお前ら助けろよ」 呑気に言葉をかわす二人の男に、片目を眼帯をあてた男が子供を助けおこした。 「おい、大丈夫か?」 「ん・・・・」 子供は眩暈がするのか目を閉じてうなる。 「・・・頭を打ったのか?」 騎士姿の・・・焔と呼ばれた男がさすがに心配そうにうかがう。 「ううん・・・・・ちがう、けど・・・・・・・もう、だめ・・・・」 子供は是音に抱えられて力なく腕を落とす。 「お・・・おいっ!!??」 たかがぶつかった程度で死ぬか!?と慌てる男。 「・・・・・・焔、あなたは歩く凶器だったんですね」 「誰がだ」 「そんなこと言ってる場合かっ!!・・おいっ!!」 男の必死の呼びかけに子供がわずかに目を開けた。 そこから覗いたのは・・・・・・・・・・美しい金の双眸。 「「「・・・・・っ!?」」」 驚く3人に子供は弱弱しい口調で呟いた。 「・・・・・・・・・はら、へった・・・・・・・・」 「さて、世界を滅ぼすにあたってそれの邪魔をするような人間たちを始末しようと思うんですが・・・」 カミサマを前に清一色が提案した。 「ふ〜ん、ま。いい暇つぶしになるかもね」 「では、これがリストです」 にこにこと清一色が差し出した『閻魔帖』。 「その上から消していきましょう」 「ふーん、こいつ・・・・・・”独角児”?」 「はい。悪っぽくしてますけど、かなり面倒見がいい性格をしているようです」 「へぇ・・・・楽しいかもね♪じゃ、片付けに行こっか?」 「はい♪」 「・・・・・おい」 「何でしょうか?」 金蝉の”不機嫌です!”と言わんばかりの問いかけに天蓬はほがらかに答える。 「・・・・花果山に行くのに何故わざわざ遠い道を行かないといけない?」 「そんなの・・・・三蔵王子と重なるからじゃありませんか」 そんなこともわからないのですか?と問われて金蝉の額の皺が一本増える。 三蔵一行が花果山に向かって桃源王国から一直線の街道を行くのに対して金蝉一行はわざわざ天竺皇国 に迂回する街道を選ばされたのだ。 単純計算では日数にして一週間以上の差が出る。 だが、金蝉が不機嫌なのは義弟に負けるとか何とかが問題なのではなくただ、その余計なことをしなければ ならないというのが・・・・ 「面倒くせー」 ・・・というわけである。 「まーまー、旅ははじまっちまったんだし楽しく行こうぜ。ま、一杯」 「俺は飲まん」 倦簾が自前のとっくりを傾けるのをあっさりと拒絶する金蝉。 「ったく、相変わらずお堅いんだからね〜。そんなんじゃ精霊にもふられるぜ?」 「余計な世話だ」 「まぁまぁ、旅は道連れ世は情け。楽しくいきましょう♪」 「・・・・・・」 そう言って茣蓙を広げて昼食の用意をしはじめる天蓬に、当分花果山へは着きそうにもないと嘆息する 金蝉なのだった。 「・・・・・・・・おい」 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・おいっ!!」 「・・・・・・何だ」 「聞こえてんなら返事しろよ!」 悟浄は問いかけを無視して歩きつづける三蔵の肩を掴もうとした。 「触るな」 「・・・なっ!?・・・・・・・・・あーさいですか。王子サマは気位が高くて困るぜ」 「誰が王子だ。俺は僧侶だ」 そう言う間も三蔵は止まらない。 「王・・・ではありませんでした、三蔵。何をそんなに急いでいるんですか?」 肩にジープを乗せた八戒が問い掛ける。 旅の料理人ということで頭にはコックの帽子もかぶっている。 ちょっとかぶっているだけに見えるのにびくともしないところが悟浄は不思議だった。 「面倒くせぇことはさっさと済ませる。それだけだ」 実はそれだけではない。 さっさとこの旅を終わらせて三蔵は一刻も早く、光明から預かった魔天経文を返すつもりだった。 三蔵は育て親を尊敬し、信頼していたが・・・・信用はしていなかった。 隙あらば三蔵を後継者に選びかねない。 「そうですか・・・・。でも目覚めた精霊というのはいったい何なんでしょうね?」 「綺麗なおねえちゃんだといいな♪」 「悟浄、あなたはまったくそれ以外に無いんですか」 八戒が悟浄の言葉に苦笑する。 「・・・・・・ちっ」 そんな二人のやりとりを背中で聞きながら三蔵は舌打ちした。 不思議だった。 何故、こんな平凡な旅に護衛が二人もいるのか? 役に立つどころか余計な足手まといである。 以前から守護神、観世音の言動は意味不明だったが今回のそれは加えて不可解でもあった。 『精霊』? ふざけんな。 何でそんなものを迎えに行かなくてはいけない? そう思いつつも・・・・・・・その精霊のことが妙に気になっていることも確かでそれが余計三蔵の機嫌を 悪くさせていた。 「独角児っ!!!」 悲鳴のような声が夜の闇を切り裂いた。 その叫んだ声の届く先には・・・・・・・・・・・・・・・・・・倒れ臥した冷たい骸。 「な〜んだ、案外つまんなかったね。もっと楽しめると思ったのに」 「まったくです。あっけない」 「・・・・・・・・貴様ら・・・っ!!」 その骸・・・独角児に駆け寄った紅孩児はその体を腕に抱きながら憎悪の視線を、馬鹿にしたような目で 見下ろす二人に向けた。 「ん〜いい目だねぇ♪」 「まったく。これこそ人間の本性でしょうね」 「許さんっ!!」 紅孩児の剣が宙を舞った。 「おっと・・・危ない危ない♪」 「どうします?ついでに始末しておきましょうか」 「えーそんなの面白くないよ・・・・やっぱり生かしておかないとね」 くっくっくっ・・・と笑う声は常人ならば生理的嫌悪を隠さずにはいられないものだった。 「ホントはもうちょっと遊んでいたいんだけど僕も何かと忙しくてね」 「では、次に行きましょう」 「待てっ!!!逃げるのかっ!!」 『また、ね♪』 追いすがる紅孩児の目の前で二人の姿は掻き消えた。 |
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† あとがき † ・・・・おいおいおいおいおいっ(汗) 何かカミサマと清一色を好きにさせていたら一部だけ妙にシリアス一直線に(涙) 続きはいったいどうなるのやら・・・・はぁ。 さて、投票。 第一回目の無制限投票、思いっきり皆様に投票していただいた おかげで焔さま、1位を爆走中!! 続くはじりじりと票をのばしている三蔵さま! そして金蝉!!一時は三蔵さまより上にいたのに追い抜かれてしまわれました(涙) 続いて八戒、ナタクと居るんですが・・・・やはり!! カミサマ来ました!! 上位に入ってくると思ってたんですよ、こいつ!!(笑) まさに極悪非道。 これからもきっとその道を突き進んで行かれると思います・・・(爆) さて、これを読んで投票所のほうへ行かれると ルール通りひとり居なくなってます(笑) ・・・さぁ、下位は命がけですよぉぉぉ。 では、Sene Vにて! |
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