≫6 抗争







 夜總会(ナイトクラブ)『金環』に、”黒天”と対立している組織が襲撃を仕掛けたのは
 夜もこれからという深夜1時のことだった。








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「そろそろ寒くなってきましたから、今日は体の温まる特製スープを用意してみました」
 いつものように八戒はにこにこ顔でやって来た悟空に湯気のたつそれを差し出した。
「わーっ!すっげ、ウマそう!」
 乳白色のスープの中には海鮮じたてらしく海老の団子やホタテ、カニの足などが
 ボリューム満点に入っている。
 スープというよりは、もう鍋だろうといった気がしないでもないが、悟空はほくほくと
 満足そうな顔で食べているのでまぁ、いいのだろう。
「是音さんもいかがですか?」
「あー、そうだな。・・俺が貰っても大丈夫なのか?」
 悟空の胃は底なしである。
 鍋一つぐらい平気でぺろりと平らげてしまうので、是音は残るのかと心配している。
「大丈夫ですよ。今日のメインメニューでたくさん用意していますから」
「そうか、ならもらえるか」
「はい」
「へへ、これで是音も八戒のメシファンだな!」
 悟空が皿から顔をあげて横に座る是音ににっこりと笑いかけた。
「・・・メシファン?何だそれは・・・しかも、「も」?」
「だって、紫鴛も来ると一緒に喰ってるもん」
「・・・・・」
 是音は素で驚いている。
「はい、どうぞ」
 八戒は是音の前に悟空のものとは多少、小ぶりな皿を差し出した。
 とは言ってもこれが世間一般の「普通サイズ」だ。
 是音は、まずスープを口に含み、海老団子を口に放りこんだ。

「・・・旨い」
「ありがとうございます」
 確かにあの気難しい紫鴛が気に入っているだけある。
「な、メシファン?」
「・・・・まぁな」
 悟空の問いかけに是音は苦笑して頷いた。



 そんな穏やかな空気が流れる空間が、耳慣れた破裂音・・・銃声で破られたのは
 それからすぐのことだった。













「悟空を奥へ連れて行けっ!!」
「はいっ!!」

 店内に客の悲鳴が木霊する。
 いちはやく事態を察知した是音は悟空をカウンターの中へ放り込み、八戒に
 安全地帯である店の奥へ連れていくように指示した。
「・・・是音!」
「俺のことは心配するな!・・頼むぞ、八戒」
「はい。さぁ、悟空」
「う、うん・・・」
 悟空は銃で応戦する是音に心配そうな眼差しを向けながら八戒に促されて店の
 奥へと続く扉をくぐる。
 是音はそれを見送るとカウンターを飛び越える。
 そして、床の一つを銃身で叩き割ると、そこから大物の機関銃を引っ張り出した。
「やっぱこれじゃねぇと気分が乗らねぇな」
 是音はにやりと笑うとカウンターを壁にして、縦横無尽に乱射してやった。
 店の調度も壁も無残極まりない状態になっていたが、そんなものはすぐに元通りに
 出来る。
「・・・しかし、この店に仕掛けてくるとはな・・・」
 ここ『金環』は黒天のシマの中でも奥にある。
 攻め入るには相当の武力が必要なのだが・・・・いや、それにも増して焔が
 この店を特別に大切にしていることは周知の事実で、その報復を恐れてどこの
 組織も今まで手出ししてこなかった。
「当分、忙しくなり・・」




 !!!!!!





 何かが爆発する音。
 瞬間、奥から凄まじい風圧と共に破壊された瓦礫が飛んできた。


「・・・・くっっ」
 踏ん張る是音もこらきれず、体が吹き飛ばされる。

「・・・・・悟空ーーっ!!!」

 爆発が起こった場所には・・・・・・・・・・・悟空が居たはず。
 まさか、という思いと共に是音は壁に叩きつけられた。































「よ、ご苦労さん♪」
 悟浄が年代ものの・・・つまりボロボロの車を背後に暢気に手を振っていた。
 その向かう先は悟空を抱いた八戒が居る。
「・・・もう少し穏便に出来なかったものですかね・・・」
 八戒の服にはところどころ焦げあとが出来ている。
 腕の中の悟空にはさしたる状況の変化も無いところから、身を挺して庇ったのだろう。
「そういうことは三蔵サマに言ってくれる?」
「・・・とにかく、さっさと行きましょう」
「りょーかい、・・・へぇ、これが黒社会のボスのコレね」
 にやりと笑う悟浄に八戒は無言のプレッシャーをかけると、さっさと後部座席の扉を
 開き、悟空とともに乗り込んだ。
 悟浄はちょっとばかり顔をひきつらせると、肩をすくめて運転席に乗り込む。
 





 抗争の騒ぎの中、一台の車が闇へ消えた。








  


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いよいよ行動開始!
しかし、やること派手だ・・・。