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「・・・・何?」

 去っていこうとした三蔵が、金蝉の言葉に振り返った。

「貴様、何を知っている・・・?」
「お前の知らぬことを」
 座したまま静かに答える金蝉に、三蔵は銃口を向けた。
 八戒と悟浄は三蔵の行動に驚き、倦簾と天蓬は何か言いたげに金蝉を見る。
「ずっと捜していたのだろう?養父の仇を」
「答えろ――――― お前は師の何を知っている!」
「そんなものを向けずとも教えてやろう・・・光明は私の―――― 叔父だ」
「!?」
「そして・・・・お前は」



 ―――――― 私の従弟だ。



 三蔵とばかりでなく、八戒や悟浄も息を呑んだ。
 しかしなるほど、と納得もする。これほど似ている人間が、ただの他人であるわけが無い。

「お前は無くなった四男の子供、光明は次男。観世音・・・長男だが、天竺グループの総帥についた
 時、その補佐をするべき役割にあった。だが、彼は世俗と関わることを嫌い、仏門にその身を
 投じた・・・彼はそれでもう天竺グループに関わることは無かったはずだった」
 全ては動きを止め、静寂の中で、三蔵は一言も聞き漏らすまいと金蝉を睨む。
「しかし、次に補佐として選ばれたのは三男ではなく、四男・・・お前の父親だった。三男はとても
 一族の者とは思えないほど無能だったし、観世音が彼を選ばなかったのも無理は無い。だが、
 奴はそれを逆恨みした。・・・そして、四男を殺した」
「!?」
「・・・・・残されたお前を引き取ると言い出しのは光明だった。彼なりに責任を感じていたのだろう」
「・・・・・・・」
 『強くお在りなさい』・・・誰よりも穏やかな空気に包まれていたが、甘い人間ではなかった。
 光明は、三蔵に・・・・生き方を与えてくれた。
 金蝉の話を聞いても変わることは無い。――― 光明は、三蔵の『師』だ。
「・・・それがどうして、師の仇という話になる」
 覚えていない父親のことなど、どうでもいい。
「四男を殺しても、三男は望む地位を得ることは出来なかった。適性の無いものに地位を与える
 ほど観世音は馬鹿では無い。肉親だろうと容赦はしない。・・・三男は疑心暗鬼に囚われた。もしや
 仏門に入った光明が帰ってくるのではないか?だから自分は選ばれないのでは・・・」
「馬鹿か・・・」
「そう、馬鹿だからこそ、余計なことばかり引き起こした。光明の動向を探ろうと調査を依頼した
 三男は、そこに殺した四男の子供が居ることを知った」
「・・・・・・」
「グループには関わらないと去ったはずの光明が四男の子供を庇護している。奴にはそれが、光明が
 帰ってくるための布石だと、思い込んだ。己の罪を明らかにし、自分の地位を奪うつもりだと。
 思い込んだ奴は、そうなる前に光明を始末しよう・・・子供諸共に・・・そう決意した」
「・・・何でそんな奴を野放しにしてやがった!」
「奴にはそれを実行するだけの権力は無かった。観世音は、奴から天竺に関わる権利を全て剥奪
 した。だが、奴には香港マフィアを父に持つ妻が居た。二人の間に出来たのが焔だ」
「・・お聞きしたいのですが」
 割って入ったのは大人しく聞いていた八戒だった。
「あなたのことが話に出てきませんが・・・あなたは観世音の?」
「あいつは独身だ。俺は・・・・・焔の異母兄。つまりは、その三男の息子だ」
「!?」
「・・・生まれた時から顔などほとんどあわせたことも無い男だ。父だと思ったことも無い」
 金蝉は、静かに吐き捨てた。
「話が反れた。・・・殺そうと決意した男は、しかし小心者だった。いざ自分で手を下すとなると
 ためらわれた。そのためらいを利用したのが焔だ」
「・・・焔?」
「あいつは根っからの犯罪者だ。血を好み、破壊を楽しむ。・・・ためらう父親をそそのかし、わざわざ
 お膳立てして・・・光明を殺させた。それから焔の犯罪は留まることが無い。父を殺し、祖父を殺し
 マフィアの頂点に立ってからは敵対する者を次々と葬っていった」
「――― そんな人間が、何故悟空を・・・」
 金蝉はぴたりと口を閉じた。
 それ以上話す気は無いらしい。
 三蔵も聞くだけ聞いたと判断したのか、再び背を向け歩き出す。
「んじゃ、ま、俺たちも動くとするか?」
「あー・・・そうだな」
「天蓬、突き止めたら連絡くれ。適当にうろついてる」
「わかりました。・・・あなたは私の手伝いをして貰えますか?」
 八戒は頷く。

 一人金蝉は、無表情で遠く空を睨みつけていた。



 





  


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だいぶ色々と判明。
焔も悟空も出てこなくて、ちょっと鬱・・(おい)