#Z  昇 天







悟空・・・・・

どこへ・・・・お前はいったいどこへ行ってしまったんだ・・・・・・・

それとも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


















 最悪の事態へと向かおうとした焔は、思考を止めた。
 
 焔と悟空・・・・・多くを望まず、ただお互いが傍にいること・・・・・それだけを望んでいた二人の
生活は一ヶ月前に唐突に終わりをつげた。

 自分を天へと連れて行くといい、現れた神。
 その神を始末し、急ぎ戻った焔の目の前にあったのは、静かな家。
 誰も出迎えることのない、空虚な『家』。

「悟空・・・・・・」
 僅かな希望にすがり、近隣の山に村に・・・谷に・・・・全てを探しまわった。
 
 だが・・・・・・・・・・・。
 悟空の痕跡がわずかも見つけることが出来なかった。
 まるで、『悟空』という者など存在していなかったように・・・・・・・・・・・。



 ---------------・・・・・夢だったのか?
 太陽のような笑顔。
 この手に掴んだぬくもり。
 心を満たした・・・・・・・・・・・・・・・想い。


 全て己が作り出した願望のなせるわざだったのか-----------・・・・・・




 焔はぼんやりと天井を見遣る。
 青と金のオッドアイ。
 美しいはずのその瞳は濁り、何も映してはいなかった。


 ------------『焔っ!』


「・・・・・・っ!!」
 これほどまでにはっきりと脳裏に残る悟空の声。
 それが夢・・・・・・・・・
 夢などであるはずがないっ!!


 強く握り締められた焔の拳から一筋の血が流れ、手首を伝い肘から地へ落ちていった。




 『放さないで、焔・・・・ずっとずっと・・・・・俺の傍にいて・・・・・・』




「・・・・・・・ああ、俺は・・・悟空、お前に約束したはずだったな」
 ずっと傍に、共に生きていくと誓った。
 ならば。
 その誓いは果たされなければならない。

「そのためならば、どんな小さな可能性にも賭けよう。どんな屈辱にも甘んじよう」
 焔は横たえていた身を起き上がらせると、顔を天へと向けた。










「天帝!!!」


 焔が天に向かって叫んだ。
「千里眼と順風耳を従えるお前になら聞こえているだろう!!天界へ迎えると言ったその
言葉に偽りなくば、今すぐにここに現れろ!」
 この身の半分に流れる神の血。
 厭いつづけたそれを、利用してやろう。


『何用か?』
 しばしの沈黙の後、天から声が降ってきた。
「俺を天界へ迎える気はまだあるのか?」
『さよう。そちには天帝たる我に連なる尊き血が流れている。望むならば迎えよう・・・ただし』
「何だ?」
 焔は自分に流れる神の血が天帝に近いものであったことに驚きつつわずかに顔をしかめて
尋ねた。

『武曲星君を殺めた罪は償わなくてはならぬ』

 天帝の言葉はおおかた焔が予想していたものだった。
「その償いは?」

『束縛と空席になっている闘神太子への就任』
「・・・・・・・・・わかった。全て受け入れよう」
 その束縛と役職がどんなものを意味しているかは焔にはわからない。
 しかし、焔は決めたのだ。

 この身を神にし、その力もて悟空の行方を探す、と。


『では、来るがよい』
 天帝の言葉に空を覆っていた雲が途切れ、一筋の光条が焔の額を貫いた。
「・・・っ!?」

『神の徴。そなたはこれから「闘神太子、焔」だ』

 焔の額には深紅のチャクラが輝いていた。
 そして・・・・・・・・・・両腕は頑丈な鎖で束縛されていた。






































「こーんぜーんっ!!」
 一人の幼子が宮の主の名前を大声で叫びながら廊下をバタバタと駆け回り、ばたんっと
扉を片っ端から開け放っては「あれ〜??」と言いながら次の部屋へと移っていく。
「どこ行っただんだろう・・・・金蝉・・・・」
 いつも居るはずの執務室に金蝉の姿はなく、悟空は先ほどからその姿を求めて宮を駆け
巡っていた。
「せっかく見せるものがあったのに・・・・」
 しゅん・・と落ち込んだ悟空はとぼとぼと歩いて再び執務室に戻った。
 ・・・・けれどやはり居ない。
「こんぜ〜ん・・・」
 いつもここに来れば会えるはずの金蝉はどこにも居なくて・・・・・。
 いつも怒ってばかりだけど、たまにぎゅっと抱きしめてくれる腕はあたたかくて・・・・。
 「悟空」と呼んでくれる声が悟空は大好きだった。


「・・・っふ・・・ぇ・・・・」
 悟空の瞳に透明なものがふくれあがる。
 悟空は一人で居ることが苦手だった。
 いや、それ以上に耐えられなかった。
 寂しくて、寂しくて・・・・・・胸が捕まれたように痛くなるから・・・・・。

「こ・・こんぜ〜ん・・・っく・・・ひっく・・・・・」
 溢れ出した涙は床に零れ落ちて、しみを作る。
 



「何をびーびー泣いてやがる、この馬鹿猿が」




 その声を聞いて悟空の涙がぴたりと止まる。
 おそるおそる、振り向いたそこには・・・・・・・・・・・・・・・・・・捜し求めていた人の姿。
「金蝉っっ!!!!」
 悟空は嬉しさのあまり、柱により掛かる金蝉に飛びついた!
「っ!!!」
 そのあまりに勢いに飛びつかれた金蝉は悟空を受け止めきれずどすんっと尻餅をつく。
「金蝉っ!金蝉っ!」
 だが、無我夢中の悟空はそんなことは気にしない。
 ぎゅぅぅぅっと抱きついて何度も何度も名前を呼ぶ・・・・・・消えてしまわないように。

 しばらく呆気にとられたのか好きにさせていた金蝉だったが、やがて大きくため息をつくと。

「・・・・この馬鹿猿!!」
 ガコッ!と頭を殴りつけた。
「いった〜〜〜っっ!!!何すんだよっ!金蝉!!」
「何すんだ、じゃないだろうがっ!!」
「何もしてないじゃんっ!!オレ!!」
「何もしてないだと?ああぁ?」
 金蝉に睨みつけられて思わず悟空は口を閉じると・・・・じりじりと金蝉の膝の上からおりた。
 ・・・・・・・手は金蝉の服を握ったまま。
「だって・・・・金蝉居ないんだもん・・・・」
「だからどうした?」
「だから・・・・・・・・・寂しかった!!!!」
「・・・・・・・・・」
 あまりにストレートな悟空の言葉に金蝉はしばし言葉を失う。


「ぷっ・・・・」
 そこへ背後から誰かが噴出す音が聞こえた。

「あっ、天ちゃんっ♪」
「天蓬・・・・」
 喜ぶ悟空とは対照的に金蝉は不機嫌そうだ。
「こんにちわ、悟空。元気にしてましたか?」
「うんっ!」
 元気もなにも・・・・昨日も会ってただろうが・・・・と言う金蝉のセリフは心の中。
「すみませんね、悟空。寂しい思いをさせてしまって・・・ちょっとお仕事で天帝のところへ
行っていたんですよ」
「お仕事・・・?」
「ええ、この度新しい闘神が決まったのでその就任儀式があったんです」
「しゅういしき・・・???」
「全然違うだろうが・・・」
「くすくす・・・・まぁいいじゃないですか。悟空には関係のないことですしね♪」
 天蓬は悟空に近づくとその頭をなでてやった。
「もう金蝉のお仕事は今日は終わりということで」
「ホント!?」
 途端に悟空の顔がぱぁっと輝いた。
「ええ」
 そんな悟空を見て、天蓬がにっこりと笑う。
「おいっ!天蓬・・・」
 勝手なことを言うな・・・・と天蓬をにらみつける金蝉の眼差しが言っていた。
「金蝉・・・・」
 そんな金蝉を悟空が「ダメなの?」と言わんばかりに見上げてくる。
「・・・・・ちっ」
 確かに急ぎの仕事は全て済ませている・・・・・しかし・・・・・・・。
 ここで悟空の問いに応と答えるのは天蓬にはめられたようで何か納得いかない。
「仕方ありませんねぇ、金蝉がダメなら天ちゃんが遊んであげますよ〜♪」
「わーいっ!!」
「おいっ、天蓬!」
 これぞ鳶に油揚げ。
「・・・・金蝉は?」
 それでも悟空はぎゅっと金蝉の服の裾を掴んで一緒にいたいと訴える。
「・・・・今日だけだからな」
「・・・!!うんっ!!」
 今度こそ悟空は満面に輝くような笑みを浮かべた。

『ホント、いいお父さんですね〜』
 そんな天蓬の心の呟きが聞こえたせいかは知らないが金蝉はもう一度、天蓬を苛立たしげに
睨んだのだった。





 




 















苛烈に過ぎ行く時








穏やかに過ぎ行く時




















二つが交わる日は近い














† あとがき †

引っ張る引っ張る(笑)
・・・でも次あたりには悟空と焔さまを再会させる予定・・・ではあります。
御華門の気が変わらなければ・・・(笑)
焔さまはシリアス度が増していくのに悟空サイドはほのぼの。
しかし、これから修羅場が待っているので〜す(笑)

さて、次回はどうなることやら・・・。
とりあえず
#Z、ご拝読ありがとうございましたo(^▽^)o






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