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#V 春爛漫
鳥が鳴き
草木が薫る
全ての生命が活気に満ち溢れる季節
「春」
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山に被っていた雪も徐々に消え、梅の蕾がほころぶころ。 焔と悟空は共に暮らすようになっていた。 焔は惰性で続けてきた医師の仕事をやめ、悟空に色々なことを教えはじめた。 手始めに文字。 「・・・・もじ?」 「そうだ。もし俺が急な用事で家を留守にするようなことがあったとき、書置きを お前が読めれば余計な心配をせずにすむだろう?」 「そっかぁ・・・・んじゃ、覚える!」 あっさりと納得した悟空に、焔はまず自分の名前から覚えさせようとした。 だが・・・。 「オレ、焔の名前がいいっ!!」 と強硬にに主張し、悟空が一番最初に覚えてのは自分の名前ではなく「焔」 という文字だった。 はじめて自分一人でその字を書けたとき、悟空は嬉しげにそれを焔にみせた。 「どうっ??」 「ああ、確かに俺の名前だな」 半紙に墨で一生懸命に書いたそれは確かに「焔」と読めた。 「やったぁっ♪」 びくびく、と焔を伺っていた悟空は墨で真っ黒になった手を叩いて喜んだ。 それはとても上手い、とは言えない文字ではあったが焔には何よりの贈り物に 思えた。 それから悟空は焔の教える文字をどんどん吸収していき、一ヶ月もたたないうちに 文字での意思疎通には困らなくなった。 「お前は結構、頭がいいのかもしれないな・・・」 「ん??」 そう賢そうには見えなかった悟空の意外な一面だった。 そして、次に教えたのは力の使い方。 悟空はその強大な力の抑制の仕方を知らず、事あるごとに小物や家具・・・焔の 家を破壊しかけたのだ。 さすがの焔も、その度に修繕しなくてはならないのが面倒になったらしい。 ペキッ! ポキッ! ガシャンッ!! ”加減”を覚えるまでに悟空に破壊された数々の道具は二人で穴をほり、地に かえしてやった。 「オレ、別に手で食べるからいいのに・・・」 壊れた道具の数々が可哀相だ・・・と悟空。 「手が汚れるだろう。それにこの加減という奴は戦うときにも役に立つ。お前はうさぎ を捕まえるのに熊を倒すときのように力をこめるか?」 「う〜ん・・・・」 思わず悩む悟空。 ・・・・もしかすると焔の言葉どおりのことをやっていたのかもしれない。 「ま、焔が必要だって言うんだから・・・オレちゃんと覚えるよ♪」 「・・・・・ああ」 にっこり笑った悟空に焔も微笑みかえした。 春。 穏やかな二人の生活だった。 「悟空」 焔に与えられた本を読んでいた悟空は焔の呼びかけに「なに?」と顔をあげた。 「これから町に出てくるがついて来るか?」 「町?・・・村じゃなくて?」 「ああ。色々と買い足しておかなくてはならないものがあるんでな」 冬の間、溜め込んでいた食料や諸々の雑貨は悟空と生活するようになって まさにあっというまに「無くなって」しまったのだ。 「町ておもしろい?」 「さぁ・・・美味いものはたくさんあるぞ」 焔のその言葉に悟空の顔が輝いた。 「行くっ!!!」 尻尾でもあればちぎれんばかりに振っているだろうな、と思わせるその様子に 焔は思わず苦笑した。 「すっげぇ・・・」 町の入り口に着いた悟空は、思わず立ち止まり感嘆の声を漏らした。 門から真っ直ぐに伸びた大通りには様々な人種の人が入り混じり、何台もの馬車 と轍がつづいている。 「人がうじゃうじゃいる・・・・」 これまでほとんど山の中で暮していた悟空にとってこれほどの数の人を見る のは初めての体験だった。 あっけにとられている悟空の肩を焔は軽く叩くと「行くぞ」と促した。 「なぁなぁっ!!あれ何っ!?」 悟空は一歩進むごとに道沿いに並ぶ商店を指差しては焔に聞いてくる。 悟空にとっては見るもの全てが珍しいのだ。 「ああ、あれは・・・」 そんな悟空に焔は面倒がることもなく1つずつ説明してやっている。 わき見ばかりして放っておけばそのまま迷子になりかねない悟空に焔は手を 差し出した。 「ん?何?」 「手をつないでおけば、はぐれなくてすむ」 不思議そうに焔を見上げる悟空に、ゆったりと告げる。 「あ・・・・うん♪」 悟空はおずおずと焔の手に自分の手を重ねると、嬉しそうに笑った。 「焔の手て温かいなっ!」 「お前の手もな」 悟空と焔は顔を見合わせて笑いあった。 「さぁ、用をすませて観光は後でゆっくりしよう」 「うんっ!」 そんな二人を少し離れた場所から見ていた人影があった。 いや、”人影”とは言ってもそれは周囲の人間には全く目に映ってはいないの だからその言は間違っているかもしれない。 その正体はこの地の城隍神であった。 城隍神とは町に縁のある人間が死後、閻羅王により任じられる町の守り神・・・ 言わば、天界の下っ端役人である。 「妙な気配があると思い来てみれば・・・・」 道服に身を包んだ城隍神は顔をしかめて呟く。 ”人間であるのに神の気をまとったモノ” ”人間の格好をした異端なるモノ” 町の守護を任じる城隍神にとってどちらも放っておいて良い存在には思えなかっ た。たとえ、害意がなさそうに見えたとしても・・・・。 「上に報告せねば・・・」 ぼそりと呟くと、城隍神はその場から姿を消した。 その頃、一通りの買出しを終えた悟空と焔は、空腹を訴える悟空の願いにより 近くの食堂に居た。 「・・・んぐっ・・・んぐっ・・・ごくんっ!!これ、すっげー美味いなっ!!」 放っておけば皿まで食べてしまうのではないかと思う悟空の破竹の勢いにも ひるむことなく焔は微笑ましくその様子をながめ、香茶を口に含む。 「そうか、良かったな」 「追加してもいい?」 「ああ、好きなだけ」 「んじゃ・・・・あれとこれとそれ追加よろしくーっ!!」 周りの客どころか、頼まれて嬉しいはずの店主まで唖然としてその様子を見つめる。 「・・んぐ?」 「店主、金の心配はいらん。追加を持ってきてくれ」 そして、焔は店主の手のひらに食事代としては高すぎる量の粒金をのせた。 「あ・・・・は、はいっ!早速!!ありがとうございますっ!!」 そこは商売人。 光速で我にかえると笑顔を浮かべて指示を飛ばした。 「ふ〜っ食った〜vv満腹♪♪あと一時間は何も食えない〜」 たった一時間かいっ!と周囲の人間はツッコミそうになった。 それもそのはず。 気が着けば、悟空はこの店の全メニューを制覇し、しかもそれを5人分という「その 細い体のどこに入るんだ?」と聞かずにはいられない量を食べていた。 「よく食べたな」 「うんっ♪焔が言った通りオレの知らないもんばっかりだったけどすっげー美味かっ たっ♪♪・・・・・・・・でも焔が作ってくれた料理が一番美味いけどvv」 「そうか」 そこだけに妙に春色の空気が濃厚に漂う。 「では、そろそろ帰るとするか」 「うんっ!」 ガタガタと椅子をならし、置いてあった荷物を両手に抱えると、人々が無言で見送る 中、二人は和気藹々と「今日の夕飯なに?」「何にするかな・・・」などと話しながら 出て行ったのであった。 「焔・・・」 「何だ、悟空」 呼びかけに悟空のほうを見れば、そこには輝くばかりの笑顔があった。 「ありがとうっ!!」 「・・・?」 何故、礼など言われなければならないのかわからなくて焔は悟空に問いかけの 視線を向ける。 「今日、すっげー楽しかったからっ♪」 「・・・それならば俺も礼を言わねばならんな」 「ん?」 「町にはたまに出てくるが・・・・楽しかったと思ったのは今日がはじめてだ。悟空、 お前のおかげだ」 「へへっ♪」 悟空の顔がますます嬉しげにほころんだ。 その二人の間に。 ひらひらと・・・・ 花びらが舞い落ちた。 「ああ、桜か・・・」 焔や悟空の住む山の中腹では、まだ固い蕾のままの桜もこのあたりまで下りて くると、その薄紅の花びらをひそやかに風にゆらしていた。 「きれいだな〜♪」 隣りの悟空が桜を見上げてわくわくと髪をゆらしている。 その大地色した髪の毛に、再び花びらが舞い落ちた。 「・・・・・確かに綺麗だな」 けれど焔の声は悟空のほうに向けられている。 「ん?」 「お前のほうがもっと綺麗だ」 「え・・・オレ?」 きょとん、とした悟空の顔に焔の指がふれる。 「悟空・・・・・・愛している」 一陣の風がざわざわと、桜を揺らした。 花びらが宙に舞う。 「オレも焔のこと大好きだよっ!!」 けれど。 悟空には、その言葉は早すぎた。 焔はふっと笑うと悟空の頭についた桜の花びらを取ってやった。 「さぁ、帰ろうか。夕食が遅くなる」 「えっ!?うそっ!!」 焔の言葉に悟空は慌てて、荷物を抱えなおすと「早く帰ろうっ!!」と焔を急かして 苦笑させたのだった。 穏やかに流れる、幸福な時。 しかし、不穏な影はすぐそこまで近づいていた。 |
† あとがき † 前回ちょっと暗めだったので今回は甘々(笑)です♪ しかし、そろそろ・・・脇役が・・・(ニヤリ☆) それにしてもこの焔様・・・・くっさいセリフ吐きまくりですね(笑) しかも自然体(笑) まぁ、いいか・・・似合うから・・・(!?) さて、次回はまだ色々と引っ張ると思いますが だんだん波乱のよ・か・んvv(・・・爆) どうぞお楽しみに〜(・・ホントに?) では、ご拝読ありがとうございました。 |
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