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#]Y 焦 燥
「・・・・・・どこに行きやがった」 金蝉は1時間ほど前から自分の宮を右往左往していた。 夕食の時間だというのに悟空が帰ってこない。 宮に居る様子もない。 「ったく、無断で外出をするなと言ってあったのに!あのバカサル!」 そういう金蝉の眉間の皺がいつもより3割増に深い。 周りのものはそれに恐れて近づこうとはしない。 探しに行くか・・・・そう思った金蝉が扉に手をかけたとき・・・・ 扉が自動で開いた。 いや、金蝉より誰かが先に開けたらしい。 「・・・・・天蓬?」 顔をのぞかせたのは友人の天蓬だった。 相変わらずくたびれた白衣を身に纏っている。 「おや、金蝉。どこかへお出かけですか?」 「何の用だ?」 じろりと睨む。 「別にこれといって用事は無いんですが、昼間悟空が遊びに来てくれたのに仕事が 入ってお相手できなかったものですからお詫びにお菓子を持ってきたんです」 「悟空に会ったのか!?」 「・・・は?」 「あいつはどこに行った!!」 金蝉は天蓬の襟首を掴まんばかりである。 「ちょ・・ちょっと落ちついてください。・・・まさか悟空は帰ってないんですか?」 友人のいつになく取り乱した様子に天蓬は内心驚きながら冷静に問い返す。 「・・・・・・ああ」 「手分けして探しましょう。こんなに遅くなるまで帰ってこないなんてどこかで迷子に なっているのかもしれません。僕は倦簾のところにも行ってきます」 「・・・・頼む」 「お互い様です。一時間後にここでまた」 「ああ」 金蝉にとって悟空が行くところなど全く検討がつかない。 無断外出を禁止するまで、悟空がどこで何をしていようが気にしてなどいなかった。 ただ、必ず金蝉の元へ帰ってくると・・・・・思っていたから。 「どこへ行った・・・・悟空」 いや、一つだけ・・・・・心当たりがある。 金蝉は物騒な輝きを秘めたオッドアイを思い出した。 天蓬のところでもなく、倦簾のところでもない。 だとすれば。 あの男のところ。 金蝉は長らくしていなかった行為を己に課した。 ・・・・・・・走るという行為を。 「俺は金蝉童子、主に取り次ぎを頼む」 門兵に名を告げるとすぐさまに部屋の中へと通される。 対応したのは、焔ではなく・・・・以前、補佐と名乗った紫鴛だった。 「これは金蝉童子、今日はどのようなご用でございますか?」 「俺の養い子を受け取りにきた」 「おや?養い子と申されますと・・・・一度、遊びに参られました、茶色の髪の 御子でございますか?」 「・・・・そうだ」 言わずともわかっているだろうに・・・・と舌打ちしたいのを押さえて金蝉は頷く。 「それならば、こちらへはいらしておりませんが」 「・・・・・・・それならば勝手に探させてもらう」 そちらがシラをきるつもりなら、金蝉だとて勝手にさせてもらう。 金蝉は他人の宮であることも忘れて扉を開け放つ。 「お好きにどうぞ・・・・」 紫鴛の言葉が追いかけてきた。 「・・・・サル!馬鹿サルっ!!!・・・・・・・・・・・悟空っ!!」 金蝉の怒声が閑散とした宮に響く。 金蝉の宮も大概、静かだが・・・ここを表現するには”寂しい”という言葉ほど ふさわしいものは無いだろう。 「ったく・・・・どこに行きやがった・・・・っ一人でうろちょろするなと・・・・・・・・・・・・・っ!?」 文句を言い連ねようとした金蝉は、すぐ近くに感じた信じられないほどの気の高まりに 息をのんだ。 未だかつてこれほどの気を感じたことはない。 ・・・・・阿弥陀如来をも越す。 そして、金蝉はこの”気”を知っていた。 「・・・・悟空!」 金蝉は感じた”気”に向かって駆け出した。 |
† あとがき †
ちょっと短くてすみません(T×T)
金蝉のSideのお話ということで、次回は焔Sideと交錯します。
さてさて、どうなりますことやら・・・・。
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