![]()
#]T 策 謀
「・・・というのはどうですか?」 「ふ、人の口に戸は立てられぬというものか」 「駄目でしょうか?」 「いや、ありふれたやり方だが、悪くはない」 「では・・・」 「ああ、お前にまかせる」 終始閉じられたままの瞳をわずかに開いて紫鴛は頷いた。 |
「こんなところで何をしている、悟空?」 「・・・・・・っ!?」 突然かけられ声に悟空はびくりと身を震わせて目を見開いた。 「・・焔!」 そして、その人物の姿を確認して名を口にする。 「何をしている?」 焔は再度問い掛けた。 悟空は金蝉の宮の端、鬱蒼とした草むらの中に人目を避けるように座りこんでいた。 「・・・・・・・かくれてる」 普段の元気さが嘘のように悟空はぽつりと声を漏らした。 「・・・かくれんぼでもしているのか?」 悟空はちがう、と首を振る。 「オレ・・・・じゃまになるから・・・・・・・・・・・居ちゃいけないから・・・・・・」 悟空は主語を省いてしゃべる。 「オレは”いたん”で”きんき”なんだって・・・・・意味はよくわかんないけど・・・・・・・・・・・ そういうのは金蝉のそばに居たら迷惑がかかるって・・・・・・」 「誰がそんなことを言った?」 悟空は首をふって”わからない”と答える。 「でも・・・・・・・たくさん」 「悟空・・・」 悟空は必死に我慢しているようだが、目頭には涙がたまっていた。 「悟空、そんな奴らの言葉など気にすることはない。所詮、弱きものの戯言にすぎん」 「ほむら・・・・・」 「それでもお前が気になるというなら、悟空。俺のところへ来るか?」 「焔のところへ・・・・?」 「そう、俺のところならば悪口などで煩わされることも無い」 「でも!!・・・・・今度は焔に迷惑がかかる・・・・!」 わめきたてる悟空に焔の顔が至近にせまった。 「よく見ろ、俺の右目もお前と同じ”金リ眼”だ」 「・・・・・・・・・」 「お前と俺は同じもの。もし、俺に迷惑がかかるというのなら、俺のほうこそお前に迷惑を かけるかもしれない」 「そんな・・・!」 悟空はとんでもない!と首を横に振った。 焔にはじめて出会ってから、かれこれ1ヶ月。 金蝉に宮からの無断外出は禁じられたが、焔はときおり退屈している悟空を見計らった ように遊びに来てくれていた。 下界の珍しい食べ物や遊ぶものを手土産に。 もともと会ったときから不思議となつかしさを感じた。 それは、焔が”金色”の瞳を持っていたせいか・・・・・・・・・”悟空”と呼ぶ口調が優しかっ たせいか・・・・・・・その理由は悟空にはよくわからなかったが。 とにかく焔は悟空に優しく、一緒にいるととても楽しかった。 そして・・・・ほんの一瞬だけ浮かべる切なげな瞳が気に掛かっていた。 率直な悟空は焔にそのわけを聞いてみたが、わずかに笑って首をふるだけ。 いつも答えてはくれなかった。 その度に悟空は胸が痛くなる。 いつも自分に優しい焔に、自分は何も出来ないことが悲しかった。 そして 我知らず。 いつしかその存在は金蝉の次に・・・・・いや、同じくらいに悟空の中で大きくなっていた。 だから・・・・・・・・・・ 「オレが焔に迷惑かけても、焔がオレに迷惑かけるなんてぜったい無い!」 そう、言い切った。 一方、両手を握りしめて宣言した悟空に焔は目を瞠る。 瞬間、その瞳はやわらかく和んだ。 「嬉しいことを言ってくれる」 焔は草むらの中から悟空を抱き上げると、胸に抱きしめた。 腕の鎖が擦れあって、じゃらりと音がなる。 その鎖が悟空の肌を傷つけないように細心の注意を払う。 「・・・・・焔?」 「俺と共に来い、悟空」 焔の胸から見上げてくる悟空の視線をからませる。 「俺ならばお前をこんなところで泣かせはしない」 「・・・・・・泣いて、なんか・・・・・」 「泣いていただろう?・・・・・・・・・・・・・心が」 「・・・・・・・・・・」 焔を見上げる悟空の瞳に涙が盛り上がる。 無色のはずの涙は金色の瞳を反射して金色に輝き、それを焔は美しいと思い、うっとり と眺めた。 「悟空」 「・・・・・・だめ」 「何が駄目なんだ?」 「わかんないけど・・・・・でも、オレ・・・・ほむらとは行けない・・・・」 「そう金蝉に言われたのか?」 それを悟空は首を振って否定する。 「わかんない・・・金蝉じゃない、気が・・・する・・・・んだけど・・・・・」 眉ねを寄せて考え込む悟空。 その額にある・・・・・・・・・・・・・『金錮』 「これは・・・・・・」 焔が手を伸ばし、金錮に触れると指先に鋭い衝撃が走った。 (・・・・・・触れられぬ、か) 「あ、取っちゃだめ。オレの・・・えーと、”みぶん”をほしょうするものなんだって。金蝉が 取ったら迷子になるって・・・・」 「そうか・・・・・」 どうやら容易には外すことができないようになっているらしい。 「窮屈では無いか?」 焔と共にいた悟空はこんなものはしていなかった。 「さぁ・・・・別に気にならないけど・・・・?」 そんな焔の感傷も知らず、悟空は無邪気だ。 「悟空・・・」 「悟空っ!!」 焔の言葉に重なった、姿が見えなくてもわかる不機嫌な声。 「あ。金蝉だ・・・」 悟空がその声を聞き、焔の腕の中でごそごそと動きだす。 「悟空」 「焔・・・金蝉が呼んでるから・・・・」 だから、放して。 その言葉がどれほど焔の心を引き裂いているのか。 このまま悟空を攫っていきたい衝動をどれほどの理性を動員して抑えているのか。 (・・・・今のお前にはわからないのだろうな・・・・) 「焔・・・・?」 悟空が気になる寂しい笑いに、呼びかける金蝉を忘れ焔に意識を戻した。 「・・・・・・・」 焔はそんな悟空を見つめ・・・目を閉じた。 (・・・・・この腕の中のぬくもりを手放すのはつらいのだがな・・・・) 「悟空。今日のところは金蝉のもとへ帰るがいい」 そっと悟空を地へと下ろす。 「だが、忘れるな。俺とお前は”一つ”のものだ。世界中の誰がお前を否定しようと俺だけは お前を肯定する」 「こうてい・・・?」 「いつまでも待っている・・・・悟空」 そして、焔はとん・・と悟空の背を押した。 「あ・・・・」 振り返った悟空の視線の先にすでに焔の姿は無かった。 「『待つ』・・・・?」 待っていられるわけがない。 狂ってしまいそうなほど悟空に乾いている自分の心が・・・・。 だから。 「その”時”を早めてやろう・・・」 焔は手の中に残るぬくもりにそっと口づけた。 |
† あとがき † ちょっと遅れてしまいましたが、#]Tお届けいたしますvv しばらく金空ぽかったので今回は焔空vvv・・・(?) サブタイトルは『策謀』なんですが、いったいどのあたりが 策謀なのか御華門も謎です(おいっ) いえ、悟空が金蝉だけでなく焔にもなついてきてるんだよ〜と 言うことを書きたくて(笑) 本当に書くたびに御華門の頭の中では話がふくらんで いつまでたっても終わりがみえません。 お付き合いくださる皆様に感謝ですvv |