*15*




-神 鳴-








神が   鳴く






















 曇りなど存在するはずの無い、常春の天界に暗雲がたれこめる。
 自然現象ではない。
 誰かが故意に起こしたものだ。

 下界では雷は、神鳴り。神の怒りと同一視される。
 だが、それは・・・字の通り。
 
 神の嘆きなのかもしれない。

















「・・・・・悟空」
 胸に抱きしめた悟空の手が、焔の服の裾をぎゅっと握り締める。
「だい・・じょうぶ」
 その蒼ざめた顔のどこが大丈夫だというのか。
 これからいったい何が起ころうとしているのか焔は知らない。
 だが・・・悟空の顔色からして決して良い事では無さそうであることだけは間違いない。



 その直後、空気を切り裂くような音ともに一筋の稲妻が地に落ちた。
 独特の匂いが空気に混じる。



「わかってる。俺は義務を放棄するわけじゃないっ!ただ焔と一緒に居たいだけ
 なんだっ!!」
「・・・悟空?」
 空に向かって叫び始めた悟空にいったい何が起きているのかわからず、とまどい
 腕を掴む。
 だが、悟空はその腕を静かにはずし、立ち上がった。


「焔・・・俺も天帝になってはじめて知ったんだ・・・」
 空を見上げながら焔に語りかける。
「・・・・悟空」
「この世界で本当の意味での『神』は存在しない。神と呼ばれているものは全部、
 『神』という生き物なんだって」
「・・・・・」
「どんなに寿命が永遠に思えてもいつかきっと終わりがくる。不死なんてまやかしだ。
 人間よりも特別な力を持っているのはただ・・・それだけの義務があるから」
「どういう・・・ことだ?」
 


「人間や・・・他の生き物を見守ること。導くこと。・・・そして、愛すること」
 それが神の義務。架せられた鎖。



「それでは、神は・・・・」
 焔が立ち上がる。

「・・・・・・・・神は自分のためだけに生きることは許されない」
「馬鹿なっ!」
 否定しようとする焔に悟空が首を横に振った。

「ましてや、天帝のオレが一人だけを・・・焔だけを愛することは・・・・・・・・」
 言葉を切った悟空が焔を振り返り、潤んだ黄金の瞳で見つめた。



「存在価値を・・・・自分で、否定することになるんだって」
 悟空は焔から顔を背けた。
 その顔に、涙が一筋流れ落ちる。
 
 そのまま歩き始めた悟空は、焔だけでなく傍に居る誰からも遠ざかろうと離れていく。

「悟空!」
「ダメっ!来ないで!」
 駆け寄ろうとする焔は悟空の厳しい声が制止する。


 雷鳴は激しさを増していた。




「焔・・お願いが、あるんだ・・・」
「・・・・」
「オレ、最後まで諦めるつもりは無いけど・・・もし、ダメだったら・・・金蝉や天ちゃん
 ・・・倦兄ちゃんに・・・ごめん、ありがとう・・・て伝えて」
「悟空!」
「お願い、焔」
「誰が・・・誰がそんなことをするかっ!悟空、お前が会って伝えればいいことだ!」
 今度こそ、止められような嘆願されようが悟空に近づこうとした焔の前に続けざまに
 稲妻が落ちた。
 まるで、悟空に近づくことを許さぬように。
 ・・・・いや、許さないのだ。


「・・・・くっ!」





「オレね・・・焔に会えてよかった」
「悟空!」
「焔を・・・愛することが出来てよかった」
「悟空!・・こちらを向け!」
「もしかすると、オレ・・・これで、もう二度と・・・・焔に会えない、かもしれないけど・・・
 でも・・・焔」

 焔に背を向けていた悟空が振り返る。

















「オレはあなたを愛してる。これからも、ずっと」
 闇に隠されていた顔が稲妻によって映し出される。
 悟空は、焔の記憶にあるかぎり最高の笑顔を浮かべていた。

「悟空っ!」







「愛してる、焔」








 白い稲妻が、悟空の上に落ちた。



































「悟空ーーーーっっっ!!」














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最後が近づきますねぇ・・・・
しかし、書き始めたときに考えていた設定とは
まるで話が変わってきていて困っている御華門なのでした(爆)