*12*
          


- 不可失 -







小さな体が傾いでいく

闇の中、抱きとめたのは

何よりも

愛しい人
























「悟空っ!!!」
 闇の中、無我夢中で抱きとめた悟空の小さな体。
 軽くて、華奢で・・・焔の腕の中にすっぽりと包み込めてしまうほどに。

「悟空っ!しっかりしろっ!!」
 軽く頬を叩いて呼びかけるが何の反応も無い。
 ただ、焔が揺らすままに・・・揺れる体。

 まるで・・・・・・打ち捨てられた骸のように・・・・。

「悟空・・・悟空・・・っ!!」
 焔は狂ってしまいそうな己の心のまま、唯、愛しい者の名を叫びつづけその身を
 抱きしめる。


(何故、いつも・・・・・・俺は悟空を苦しめる・・・っ!)
 ただ、二人で穏やかに過ごしたいと・・・願うだけなのに。
 その願いが悪だとでも言うかのように、焔の目の前でいつも悟空は苦しみと
 哀しみに包まれている。

(何がいけない?何が悪いというんだ・・・っ!?)
 異端の自分たちには普通の平和さえ許されないと・・・・・・・?

「悟空・・・・っ」
 腕の中のぬくもり・・・・・・・そのぬくもりと、小さな鼓動だけが焔に悟空が生きて
 いることを告げる。
 ただ、それだけが。

「悟空、目を覚ませ!悟空!・・・お前は俺を置いて逝く気かっ!?そんなことは・・・
 そんなことは絶対に認めないぞ・・・っ!!」


 闇の中、焔の血を吐くような叫び声が響き渡る。
 その声を聞きながら、紫鴛も是音も・・・・他の誰もが動けずに居た。
 いったい何が起きているのか・・・この闇の中では誰も理解することは出来ない。
 
 一つ、絶対に確かなことは。
 計画が失敗したということ。


「悟空・・起きろ、目を覚ましてくれ。俺を一人にするな。お前が居なければ・・・俺は
 俺など存在する価値も無いんだぞ・・・?」
 人としても神としても中途半端な自分。
 その矛盾した生の中でやるべきことも無く、欲求することも無く、ただいつかくる
 死のために生きていた。
 自分の”生”には何の”意味”も無い。

 そんな、自分の生の中に、ただ一つ灯った光。
 悟空。
 
(俺はお前のために・・・ただ、お前のためだけに生きると誓った)


 焔は悟空をそっと床に横たえ、その頬に触れる。
 暖かく、滑らかなその感触は昔と変わらぬまま。
 顔を近づければ・・・太陽の匂いがした。






「・・・愛している。悟空。お前だけを・・・俺は、お前だけしかいらない」
 
 そして口づけた。




















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■あとがき■

ポエマー焔。
シリアスな話を書いてるのに頭の中では
焔がエセオランダ人のような格好で踊りまくって困りました・・・(爆)


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