*11*
          


- 同 一 -








オレはお前で
お前はオレ

二人じゃない一人

同じ『存在』




























 悟空はふわふわと、何も存在しない空間を漂っていた。
 そこは酷く優しく、悟空を迎え入れ・・・気持ちがいい。
 誰にも何にも傷つけられない、守られているという無条件の安心感がそこにあった。


「悟空、起きろ」


「・・・・・・」
「起きるんだ」
「・・・どうして、もっと・・・」
 どうして、邪魔をするの?
 こんなにも気持ちがいいのに・・・。

「お前はこんなところに戻っている場合では無いだろう」
「・・・・・戻る・・・?」
 悟空は閉じていた瞳を開けた。

「・・・・・・・・オレ?」
「そう、お前であり、俺でもある」
「・・・斎天大聖」
 悟空は起き上がると、斎天大聖と向き合った。

 同じ輝きを灯す金色の瞳が交差する。
 それだけで十分だった。

 斎天大聖がどのような存在であり、悟空がどのような存在であり。
 結果、二人が『同じ』であることを理解した。
 斎天大聖はもう一人の悟空であり、悟空はもう一人の斎天大聖でもある。
 それは分けることのできない真実。
 

「ここは、全ての存在が生まれる場所。俺たちもここから生まれ、世界に在った。
 ただ他と違ったのは・・・ここと完全には切り離れずこちらに存在の一部を残した
 ままで世界に現れた」
 だからこそ、他の誰とも同じ存在にはなれない『異端』。
「そっか・・・だからここはこんなに気持ちいいんだ・・・」
 優しい母親の腕の中に抱かれているように・・・。

「悟空、俺はお前と話が出来て嬉しい」
「オレも!だって・・・斎天大聖はずっと傍に居てくれただろ?見えなくてもわかってた」
「そうか・・・」
「これからもこうしてずっと一緒に居ような!」
「もとより。俺たちは離れられぬ存在」
 悟空は嬉しそうに微笑んだ。斎天大聖も微笑を浮かべる。

「だが・・いつまでもお前はここに居てはならない」
「え・・・・」
「思い出せ、お前が今。何をしていたか」
「・・・・何を・・・て・・・・・・焔っ!?」
 悟空はかっと目を見開き、あたりを見渡した。
「闇を無に帰すために、こちらに取り込んだ余波でお前は精神だけが分離し、ここに
 戻ってきた。肉体と精神が離れることはよくない。早くあちらに帰れ」
「・・・帰れ、て言うけど・・・どうやったら帰れるんだよ!」
 悟空の胸に不安が押し寄せる。
 

 焔は無事だろうか?
 金蝉は?天ちゃんは?
 他の皆は?
 ・・・・・・どうしているんだろう・・・・・・・っ


「落ち着け、悟空。気を散らすな」
「だって・・・っ!」
 急に焦りはじめた悟空の額に斎天大聖はそっと手のひらを押し当てた。
 ・・・・ほのかな温かみ。
 ふっと肩の力が抜けていく。

「気をすませ。お前ならば帰り道が見つかるはずだ」
「・・・・・・ん」
 斎天大聖の言われたままに、目を閉じ・・・気をすませる。


 静かな静かな空間。
 ここで、生命は生まれていく。
 そして、還っていく。

 
 その空間にかすかな声が聞こえた。


「・・・・・・・見つけた」 
 それは、間違えることの出来ない・・・この世で一番悟空が大切な人の声。
 ・・・・・・焔の声。
 必死で悟空の名前を呼んでいる。

 ・・・・・帰らないと。また心配をかけさせた・・・・・・。


「では、そこを目指して帰るがいい」
「・・・・・わかった、ありがとう斎天大聖」
 焔を助けてくれて。
 道を示してくれて。

「礼には及ばぬ。・・・・以前の借りを返しただけだ」
「・・・・・借り?」
「あの男ならば、お前を受け入れ大切にしてくれるだろう。世界中がお前の敵に
 なったとしても・・・あの男だけはお前の味方だ」
「・・・斎天大聖?」
「さぁ、行け。待っているのだろう?」
「・・・・・うんっ!」
 
 再び、悟空が目を閉じる。
 もう一度、焔の声に・・・声のするほうに意識を向ける。



 ふっと、空間から悟空の姿が消えた。








『悟空の涙の代償は高い・・・』














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■あとがき■

斎天大聖×悟空・・?(笑)
ちょっと第一部の#15と繋がっておりますv

・・思えば、1年以上連載しているんですね、比翼。
(・・気づいて無かったんかい!)
今年中には終了したいなぁと思いつつ。
さてさてどうなりますことやら・・。


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