*9*
          


- 蠢 -












『焔』
『何だ、悟空?』
『オレが一番好きなのは焔だからな』
『・・・・・・・・ああ』





















「・・・・・ご、くう・・・・・・・・?」
 幻聴か。
 ただ一つだけ待ち望んだ、愛しきひとの声。
 それが・・・・こんなところで聞こえるなどあり得ないのに・・・・・。




「焔ッ!」
 
 けれど、はっきりと暗闇の中でさえ・・・・だからこそ、はっきりと届く悟空の声。


「・・・悟空っ!?」
 暗闇の中でさえ、眩く輝く美しい金色の双眸。
 それを焔が間違えるわけがなかった。

「焔っ!焔っっ!!」
 必死で駆け寄ってくるであろう悟空に、しかし焔は出迎えてやることは出来ない。
 今、手を開けば集めたられた膨大な力が暴走することになる。


 ぴし・・ぴしっ



 その間にも闇には亀裂が入りつづけている。


「・・・紫鴛っ!是音っ!!」
「わかっています!」
「おう!」
 二人は焔の声を受け、駆け寄ってくる悟空に近づいていく。
 今、悟空に焔へ近づけさせるわけにはいかない。これが正念場。
 この闇を打ち砕く最後の手段なのだ。
 悟空と触れ合えば、この手の力は解放してしまいそうになる・・・。


「なにっ!?」
「すみません、悟空。止まってください」
「すまねぇな。今焔んところに行かせるわけにはいかねーんだよ」

 闇の中で輝く黄金の瞳が二人を貫く。
 普通、『色』は光が無ければ表れることはない。
 ならば・・・何故これほどにはっきり見えるのか。

 悟空は闇にも光にも所属しない存在である。
 裏返れば、神にも魔にもなりうるもの。
 それがゆえに、二つの影響を受けることはない。
 そんなものを超越してしまっているのだ。
 悟空という『存在』は。


「どうして邪魔すんだよっ!」
 せっかく・・せっかく、焔が自分の手の届く、すぐ目の前に居るというのに!
「少しの間だけでいいのです」
「しばらく我慢してくれや」
 闇の中、悟空の肩に置かれた二人の手。

 それをぱしんっと振り払い、悟空は亀裂の入る闇を仰いだ。

「・・・・ダメなんだ。ダメなんだよっ!」
「「・・・・・??」」
 何がダメだとう言うのだろうか・・・紫鴛と是音は振り払われた手をそのままに首を
 傾げる。

「ダメ・・あれじゃ、ここからは出られない」
「何を・・・言うのです」
「どうしてかオレにもわかんないけど・・・でも、ダメなんだっ!」
 だから、焔を止めなくては。
 悟空の本能が叫ぶ。




「ぐわぁっっっ!!!!」




「焔っ!!?」
 唐突に響いた焔の苦悶の響きに、今度こそ悟空は何者にも邪魔されることなく
 焔に駆け寄った。

 ざわめく周囲。
 闇の中では何が起こっているのかはわからない。
 ただ、異常事態だけを報せる。


 けれど。
 悟空だけは見ていた。
 
 闇が・・・・。




 焔にまとわりついていくのを。














←*8* || *10*→


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■あとがき■

さんざんお待たせしたにも関わらず短くて申し訳ありませんっ!
これからはさくさく予定通り更新していくのでご容赦を。


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