
第二幕
*3*
- 道・未知 -
「・・・・焔は・・・・・・・・どこ・・・?」 金蝉は、動揺していると思われた悟空のあまりに静かな口調に驚き、戦慄した。 冷たい風が悟空の纏う衣を揺らす。 金蝉が見つめる小さな背中は・・・・・・・似合わぬ威圧感を発して観世音を見上げている。 ・・・・・あまりに静か過ぎる・・・・・・怒り。 感情を露にする悟空には不似合いなほどに。 「焔は、どこに連れて行かれたの?」 口調は幼かった。 けれど、それは問いでは無く命令。 ・・・・・・悟空が天帝としてはじめて出した命令だった。 気の小さいものなら萎縮し、すぐに口を滑らせただろう。 しかし、相手は一筋縄ではいかない観世音菩薩である。 「聞いてどうする?」 案の定、そんな風に軽く問いをかえす。 「決まってる。探す、探して、ずっと・・・ずっと一緒に居る」 「ふーん、そうか。なら教えられねぇな」 びしびしっと空気が揺れた。 ・・・悟空がただ怒っただけで、これほどに大気は動揺する。 力を振るえばどうなるのか予想できない。 「・・・・どうして。どうしてオレは天帝なのに教えて貰えないんだよっ!」 風が強くなる。 「焔を・・・焔をどこにやったんだっっ!!!」 風の刃が観世音に向かって走り・・・・そして、観世音は避けることなくその身に受けた。 切り裂かれる、衣。 ・・・避けることが出来たはずなのに避けなかった、わざと。 「あ・・・・」 好意を抱いていた存在を傷つけたことで、悟空の怒りがわずかにひるむ。 「すまないな、悟空。俺は教えてやることが出来ない・・・どうしても」 「・・・どうして?どうして?オレは焔と一緒に居たいだけなのに・・・・っ」 「上の奴らは不安なのさ」 「・・・・・・・・・?」 「お前は大地の精霊、そして・・後ろの金蝉は一応そんなでも神だ。その寿命は永遠に 近いと言ってもいい。だが、焔は・・・・・半分人間の血をひいている。いつか、そう遠く ないうちにお前を・・・悟空をおいて逝くだろう」 「・・・・そんなのっ!」 「そして、上の奴らはそのときにお前が最悪の決断をするんじゃないかと不安なのさ」 「・・・最悪の決断?」 「お前は後を追わないと約束できるか?」 「・・・・・・・・」 「焔が一緒に死のうと言っても」 「・・・・・・・・」 悟空は答えることが出来ない。 どこかでわかっていたことだった。 けれど、改めて他人に言われ・・・その衝撃に悟空は頭が真っ白になっていた。 「おい、勝ってなこと言ってんじゃねぇ。こいつらが死のうが生きようがこいつらの勝手だ。 上層部が不安を抱こうが喜ぼうが、こいつらには関係ない」 「ほぅ、えらく熱いじゃねぇか」 くっくっ、と甥の様子に観世音が笑う。 「何とでも言え。俺はこいつ以上に大切なものは無い」 悪態をつくかと思われた金蝉は・・・・あまりにも真っ直ぐな言葉をかえした。 「・・・・・・」 観世音は一瞬、口を開き、閉じた。 その顔に浮かぶのは・・・微笑。 「・・・変われば変わるものだなぁ、金蝉」 「・・・・・・・」 「強くなったよ。あの退屈で仕方がない、て頃のお前よりずっと」 「・・・・・・・」 観世音はくるりと二人に背を向けた。 「これは独り言だ」 「「・・・・・・っ!?」」 悟空と金蝉の動きが止まった。 立ち去るのかと思った、観世音の意外な行動。 息をとめ、二人はその『独り言』やらを聞き逃さないように耳をそばだてる。 「獄界というのは、酷いところでな・・・・光の一条とて差さない真の闇で包まれた場所だ。 かつて天界人でそこに落とされた者で帰って来たものは居ない・・・・・」 観世音は姿を消した。 「・・・金蝉」 荒野に取り残された二人。 しばらくじっと正面を見つめていた悟空は、背後に居る金蝉を振り返った。 「記憶を奪われて、こんなところへ連れてこられたオレを焔は探して来てくれた」 「・・・・・」 「だから、今度はオレが焔を探しに・・・・・・・・・・・行く」 「・・・・・」 「ごめん、金蝉」 「・・謝ってんじゃねぇよ」 「・・・・でも、ごめん・・・・」 ぎゅっと金蝉の衣の裾を掴んだ悟空は、金蝉に引き寄せられ抱きしめられる。 天帝になって皆を幸せにしたいと思っていた。 でも・・・どうしても一番に幸せになって貰いたい人が居ない。 ・・・・だから。 「わかっている。お前が天帝だ。・・・好きにしろ」 悟空は涙を僅かに滲ませた瞳で金蝉を見上げ・・・・「ありがとう」と小さく呟いた。 |
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† あとがき †
何やら・・・悟空が凄く賢そうです(笑←酷い)
記憶もどって大人っぽくなりましたね!!
・・て自分で感心してどうするんだ・・・と書き終えて思う御華門でした(爆)