【13】 友
「光秀様・・・・」 光秀の背に庇われながら、呆然と悪魔が・・・秀吉が去っていくのを見つめていた日吉は、その姿が 消えてからも緊張を解かない光秀に問いかけずにはいられなかった。 「あいつは・・・あいつが言ったことは・・・・」 「・・・・信じるな。悪魔の言は虚飾。口から出る言葉は全て不実だ」 「・・・・・・・・・でも」 秀吉の言葉は嘘には思えなかった。乱暴で、口は悪かったが・・・目は濁っていなかった。 「日吉、悪魔の甘言に惑わされるな。今のお前の任務は何だ?」 「!?」 光秀にそう言われて、ようやく信長のことを思い出す。 慌てて周囲を見渡せば、信長は伏せた状態のまま固まって転がっている・・・・・。 時を止めたのが秀吉ならば、今もその状態を維持しているのは光秀だろうが・・・。 「光秀様、もう・・・」 「駄目だ。この惨状はありえないはずのものだ。これを片付けなければ時を動かすことが出来ない」 言われてみればその通り。 しかし、これを一人ずつどこかへ運ぼうにも二人ではどうにもならない。 天界に居るならばともかく、ここ下界では光秀も能力を制限され、思うままに力を使うことは出来ない。 どうすればいいのか。 『いやだな〜、こういうときこそ俺を呼んでくれなきゃネv』 「誰だっ!!」 「よ、日吉〜v」 光秀の鋭い声にも動じることなく、再び日吉の目の前に現れたのは五右衛門と名乗った死神だった。 「五右衛門???」 「貴様・・・っ」 「何、これ?」 日吉に近づく五右衛門との間に入り込んできた光秀を指差す。 「あの・・・俺の先輩・・・だけど」 「へぇ〜〜ふぅ〜〜ん・・・そこそこに力のある天使ってわけだ?」 馬鹿にしたような笑いを浮かべての五右衛門の言葉は、まるでそうは思えないと言っているように 聞こえてしまう。光秀もそう思うのか、眉をしかめた。 「日吉、コレは誰だ?」 「あの・・・」 死神だとはっきり言っていいものか、と日吉は五右衛門をうかがった。 「俺?俺はあんたらが言うところの”死神”てやつさ」 光秀が目を剥いた。そして、日吉の肩を掴む。 「・・日吉!まさかお前・・・こいつと何か契約しなかっただろうな!」 「え?・・・・え!?いえっ!何も!」 ぶんぶんと頭を横に振って否定する。迫る光秀の顔は何だか鬼気迫っていて怖い。 「そうか・・・それならばいい。この下界は天界と違い悪への誘惑に満ち溢れている。言葉巧みに唆して 何をさせられるかわかったものでは無いからな」 光秀は暗に目の前の五右衛門のことを言っているのだが、日吉は光秀が助言してくれていると素直に 受け止め、”はい!”と元気よく返事をかえす。 面白くないのは五右衛門で、『けっ』と口元を歪めると、邪魔なんだよとばかりに日吉の肩を掴んでいた 光秀を押しのけた。 「何をする!」 「邪魔んだよ、じゃ・ま。俺は日吉に用があってきてんの。あんたなんかお呼びじゃないんだよ」 「ぬぬっ!」 「あ・・・あの・・・ふ、二人とも仲良く・・・」 「「仲良くできるかっ!!」」 二人の否定の叫びはぴたりと合った。 「ま、とにかくだな。この状態を何とかしたいんだろ?」 「う、うん。そうだけど・・・」 それが何か、と日吉は首を傾げる。 「だーかーら。俺が何とかしてやろうかって言ってんの♪」 「日吉っ!騙されるなっ!死神の言うことなど信用するんじゃない」 右に光秀、左に五右衛門。両方から交互に言われて、ちょっと混乱する。 「俺は日吉に聞いてんの。あんたは黙ってろ」 「貴様こそ、死神の分際で慣れ慣れしいっ!」 「だって、俺と日吉の仲だも〜んv」 「な・・・”仲”!?・・・日吉っ!!」 「は、はいっ!」 思わず姿勢を正してしまう日吉。 「”仲”とは何だっ!”仲”とは!?」 「え!?・・・えーーーと・・・・・・・・・・・・と、友達?」 思わず、五右衛門に聞いてしまう。 そして、五右衛門は我が意を得たりとばかりに、勝ち誇った笑いを光秀に向けた。 「そ、俺と日吉は・・・お・と・も・だ・ち♪なの〜vv」 「・・・・・っ!!!!!!」 (・・・何なんだろう・・・とってもややこしいことになってるような・・・・・・?) 見習い天使である日吉は、よくわかっていなかった。 天使が死神と”友達”などとは前代未聞。どう考えても、これは日吉が五右衛門に騙されている、という 構図にしか光秀には思えないのだ。 「というわけで、お友達の日吉のために」 妙に『お友達』という部分を強調する。 「・・・・こうしてあげちゃお〜う♪」 五右衛門は右手を差し上げると、パチンッと鳴らした。 「何を・・・・・・・!?」 「え・・・・っ!?」 光秀と日吉は揃って目を見開いた。 あったはずのものが無い。 あの惨状が一瞬のうちで、消えうせたのだ。 「一丁上がり♪」 「「・・・・・・・・。・・・・・・・・・・」」 どうしようもなく、二人が手をやいていた惨状を一瞬にして消してしまった五右衛門。 いくら天使と違い制約が一つも存在しない死神だからといって・・・・・違いすぎる。 『力』の強さが。 「ん、どうした?日吉」 「・・・・五右衛門て・・・・凄いんだな・・・・」 「いや〜それほどでもあるある♪俺ってすっご〜く優秀な死神なのさv」 恐るべき自信だ。 「んじゃ、俺は忙しいから行くぜ。困ったことがあったらまた来てやるよ。ひ〜よしv」 「あ、うん。ありがとう、五右衛門!」 笑顔で見送る日吉の隣で、光秀は苦虫を潰したような顔で腕を組んでいた。 |
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五右衛門、いいとこ持っていくなぁ・・・(笑)