【12】 対
| 「おっと、動くなよ」 驚きすぎて、言葉を発せないでいる日吉に男は首に当てたものをそのままに警告した。 (・・いったい・・・・・・?・・・・・・・っ!?) 「悪魔!・・って!」 「動くな、と言っただろうが」 日吉の首筋から血が流れ落ちる。 「・・・やはり、俺の邪魔をしに下りてきていたのか」 「・・・・・。・・・・・」 『地上にはあなたにそっくりな人間が存在するのです』 あの方が言った言葉が頭に浮かぶ。 きっとこの男のことに違いない・・・・・この悪魔に・・・。 「・・・・俺を、殺す・・・・の?」 「ああ。・・・・・・そう出来たら良かったのにな」 悪魔が刃物を引き、日吉の背中を突き飛ばした。 緊張に固まっていた体はうまく受身がとれず、地面に転がった。 「本当に、嫌になるほどそっくりだぜ」 見下ろす悪魔に、日吉は初めて正面からその顔を見た。 確かに日吉と悪魔はそっくりだったが、第三者が見たとしても二人を間違うことは無いだろう。 外見はともかく纏う雰囲気が違いすぎた。 「この間は邪魔が入って逃がしたが・・・今日は助けてくれる相手は居ないぜ、お兄様」 また。悪魔は日吉をそう呼んだ。 「・・・・っ誰が!お前なんかに・・・兄呼ばわりされなくちゃいけないんだよっ!」 叫ぶ日吉に、悪魔はにたりと笑った。 「あ〜、知らねぇんだな。・・・・・はは、何も知らずにぬくぬくと天界で生きてきたってわけか。あいつら の考えそうなことだ。都合の悪いことは何も言わねぇ・・・。教えてやるさ。お前と俺は同じ力を奪い あって生まれてきた。つまり下界でいうところの”双子”てわけだ」 「嘘つけっ!」 間髪いれずに日吉は否定した。 確かに滅多に無いことだが・・・双子は存在する。だが、それはどちらも天使だ。 片方が”悪魔”であることなどありえない。 「こんな嘘ついてどーすんだよ。・・・・何よりこの顔が証だろ?」 悪魔が自分の顔を指差した。 「顔なんて・・・顔なんて好きなように変えられるっ!」 「・・・・どうしても認めないと?それとも自分が悪魔の仲間だった、なんて嫌だから?」 「・・・・・っ違うっ!俺は天使だっ・・・・ごふっ!」 悪魔が倒れたままの日吉を蹴り上げた。 「甘いこと言ってんじゃねぇぞ・・・・お前のせいで俺は・・っ出来損ないの悪魔のままなんだ!」 横たわる日吉の髪を掴み、顔を近づける。 「俺が魔界でどんな扱いをされていたか・・天界でぬくぬくと育ったお前には想像もつかないだろう。 上の奴らには使い捨てのゴミのように扱われ、大して力のない奴にまで出来損ないだという、ただ それだけで馬鹿にしやがる。・・・それもこれもお前が俺のものになるはずだった力を奪いやがっ たからだ。てめぇなんか生まれてこなければ良かったんだよ!」 「・・・・・っ!!」 生まれて初めてぶつけられる純粋な憎悪に日吉は苦痛のあまり顔をしかめた。 「苦しいか?だが、俺はもっと苦しんできた・・・・なぁ、兄貴。可哀想な俺のために何かしてやりたい と思わないか?天使なんだから思うよな?」 「・・・・・何、が・・」 「・・・くれよ」 悪魔は日吉の耳元で囁いた。 「お前の力を俺にくれよ」 日吉はまじまじと悪魔の顔を見つめた。 「・・・そんなこと、出来るわけないだろっ!」 悪魔と天使の力は相反するもので、与えたり与えられたり出来るものではない。 まさかそんなことも知らないとは思わないが・・・。 「出来るんだよ、俺とお前ならな。俺たちは同じ力から二つに分かれたと言っただろう?その力を 一つにしようって言うんだ。無理どころか・・・どんな存在より最高の相性だ。なぁ、くれるだろう?」 「・・・・・離せっ!」 パシッと音をさせて、日吉は自分を掴んでいた悪魔の手を振り払う。 それを悪魔は笑って好きにさせている。そんな抵抗など全く意味が無いとばかりに。 「誰が・・・お前なんかにっ!」 「くっくっ・・・本当に。誰もお前には言わなかったんだなぁ・・・お前はなぁ、天使のような顔していても 天使じゃないんだよ。いいか、俺たちはな・・・」 「日吉から離れろっ!!」 「ちっ・・・また邪魔が入りやがった」 「・・・光秀様・・っ!!」 悪魔は素早い動きで日吉から離れると、光秀を警戒するように距離をとった。 「日吉、大丈夫か!」 「光秀様・・・はい、大丈夫ですっ!」 光秀は日吉に駆け寄ると怪我が無いことを確認し、悪魔に鋭い視線を向けた。 「貴様・・・っ!?」 その悪魔の顔を見て、光秀は目を見開いた。 「ふ〜ん、どうやらお前は”事情”を知っているらしいな。・・・貴様、『監視者』か?」 「悪魔に語る言葉は無い。即刻立ち去れ!さもなくば・・・」 「おー。怖い怖い」 悪魔は馬鹿にしたような笑い声を立てると、空中へ飛び上がった。 その背中に広がったのは灰色の翼。 「・・・いいか。お前の力は絶対に俺のものにする。忘れるな、日吉。俺の名は・・・」 ――――『秀吉』 だ。 |
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ああ・・秀吉君・・・極悪(笑)