【11】 影
もう幾度目か。 何度も、何度も・・・・何度も何度もっっ!!!! 腹を立てても仕方が無いのはわかっている。それでも目の前で楽しそうにしている信長の姿を 見ると・・・・理不尽な思いが胸をつくのだった。 本日、信長と日吉(無理矢理連行された)は濃姫の輿入れのお迎え行列の雑兵に混じって 美濃の国境までやってきていた。 普通なら主賓である信長がこんなところに居ていいはずは無いのだが、あいにくそんな常識に 縛られてくれる人ではない(いい加減日吉も学習した・・・悲しいことに)。 『迎えに行くからついて来いっ!』という命令のもと、問答無用で同じような雑兵の格好をさせられた 日吉はいつバレるのかとびくびくしながら、信長とともに濃姫の行列がやって来るのを待っていた。 それにしても・・・ (・・・なんで大人しく待ってられないかなぁ・・・) 悪戯をしかける悪がきのような顔をした信長を日吉は見上げる。 「・・・何だ?」 「い、いいえっ!」 不審な顔で見下ろされ、日吉は慌ててぷるぷると顔を横に振った。 妙に勘がいい信長は何故か日吉が考えていることも察してしまう。 「・・・・?」 少々顔をしかめたものの信長はそれで再び行列が来るであろう方向へ視線をやった。 日吉は内心ほっとしたものの、いつもなら追及がくるところなのに・・と不思議だ。 ・・・もしかして・・・もしかすると。 (・・城で濃姫様を迎えるのが恥ずかしかっただけだったりして・・・・まさかね〜・・・・) そんなことあるはずがない、とすぐさま否定した日吉は実はそれが概ねのところでアタリであった ことに気づくことは無かった。 「・・・おせーな・・・」 信長がぽつり、と落とした。 「・・・まぁ、普通の行列じゃありませんし、時間がかかってるんじゃありませんか?」 「それにしてもおせー。もうとっくに到着しててもいい頃なんだがな・・」 ちゅんちゅん、と小鳥がさえずりながら飛んでいく。 太陽は中天からやや下り、午後の日差しとなっていた。 「・・・ちょっとついて来い」 「えっ!?」 行列からこっそり抜け出した信長と日吉は木の影に隠れながら、美濃の領地へ分け入った。 「の、信長さま・・っ」 「静かにしろ。ここは美濃の領地だからな・・どこに忍びが潜んでるかわからんぞ」 「へっ!?」 驚いて日吉はきょろきょろと周りを見回した。 「・・・・お前に見つけられるくらいなら忍なんてやってねぇだろうよ・・・」 信長の呆れた視線が注がれる。 「・・ったく、足でまといになるなよ」 「わ、わかってますっ!」 日吉は信長から離れるわけにはいかない。守らなければならないのだから。 ・・・・どちらかというと日吉のほうが守られていそうだが・・・。 「・・っわぷっ!な・・・・っ」 気合を入れて信長の後をついて行こうとした日吉は急に立ち止まった信長の背中にぶち当たる。 何事かと開きそうになった口は信長の手に塞がれていた。 「・・・静かにしろ。・・・・嫌な匂いがしやがる」 (・・嫌な、におい・・・・?) 見ると、信長の顔が厳しさを増し緊張している。 「・・・こっちだな」 何が起こっているのかわからないが、日吉も信長同様に緊張して周囲に気を張り巡らせる。 木々に身を隠しながら慎重に進み、しげみをかきわけた信長が息を呑んだ。 「・・・こいつは・・・」 日吉もひょっこりと顔を出してみた。 「・・・っ!」 (う゛・・・・っ) 信長の日吉の視界の先には、一面の血みどろが広がっていた。 二人と同じ雑兵の姿をした人間たちが無残な姿で屍をさらしている。 (気持ち・・・・悪い・・・・っ) 日吉の顔が見事なまでに色を無くす。 だが、それは死体の無残な様のせいでは無い。 辺りに広がる、苦痛や恐怖、怒りや悲しみ・・・そんな大量の負の感情に反応したのだ。 一人前の天使になれば、負の感情は自分の内にとりこみ浄化することができるが、いまだ見習いの 身の日吉には天使が持つものとは相対する感情に拒絶反応を示すしかない。 だが、ここで無様に倒れることは出来ない。 「・・・美濃の兵のようだな、いったい誰がこんなことをしやがった・・・?」 必死に我を保とうとする日吉をよそに、信長は死体の検分を始めている。 「・・・刃物で斬ったような痕もあれば・・・引きちぎったような痕もある・・・これだけの人数相手だ・・・ 一人じゃねぇとは思うが・・・・・・・っ避けろっサルっ!!」 「え・・・・っ」 日吉のほうを振り向き、信長が鋭い声で叱咤した。 何が何だかわからない日吉の目の前を黒い影が通過した。 ずさっ、と音がして・・・地面にクナイが突き刺さる。 「え・・・・??」 「ぼうっとしてんじゃねっ!ふせろっ!」 「は・・・・は、はいっ!」 信長の言葉に日吉は反射的に頭をかばってその場にしゃがんだ。 (・・・て、敵!?あれをやった奴らがまだ居る・・・?) もしそうなら、こんなところでしゃがんでいる場合ではない。 自分の身よりも信長の身の安全が第一だ。 「のぶ・・・・・・・え?」 そろりと頭を上げ、信長の身を確認しようとした日吉は・・・空間が固まっていることに気がついた。 「え・・・・・え???え??」 (俺・・・・使ってないよ・・・ねっ!?) では、いったい誰が時を操る力を使用したのか・・・・。 呆然と立ち上がる日吉の首筋にひやりとした感触が当たった。 「動くな」 「・・・・・っ!」 「くっくっ・・・・漸く、お目にかかれたぜ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”おにーさま”」 「なにが・・・・」 首だけで振り向いた日吉は・・・・そこに己と同じ顔を見た。 |
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ようやく登場秀吉君!(笑)前回五右衛門と日吉を襲ったのも
実は秀吉君でした・・・・。
原作では秀吉のほうが兄貴、て感じなんですが
何となく秀吉に日吉のことを嫌味っぽく「おにーさま」と
呼んでほしかったもので・・・(何だそれは/笑)