【3】 宿命
| 「あなたも知っていると思いますが」 尊きお方は自ら日吉に任務の内容を語った。 「この世に存在する全ての魂は、聖なる我らが主たる神の御許か、もしくは呪われ たる悪魔の王の手の中のどちらかに死した後たどり着くようになっています」 「はい」 その主たる神に最も近いといわれる尊きお方は日吉が頷くを見て言葉を続ける。 「魂は力です。より強く生きた者の魂は何よりも輝き、たどり着く先で純粋なる力になるの です。我らの仕事はそれらの魂を正しき道へと導くこと。間違っても悪魔の王のもとに など着かぬように道しるべとなることです」 日吉はこくこく、と頷く。 尊き方が言われるのは見習い学校で、教師がよく口にする言葉だ。 「けれど、考えてみて下さい。我らは万能たる主と違い、いついかなる場合も完璧と いうわけにはいきません。何らかの外因で導くべき魂を見失ったとしましょう。悪魔は そこを見逃しはしません。もし、その魂が百人に一人、いえ千人に一人という強い力 を持っていたら・・そんな強い魂でなくとも、それらが合わさった時の力は・・はかり しれないものとなるでしょう。それが全て悪魔のものとなるのです。そうなれば悪魔は 更に力を増し、地上へ・・果てはこの天界へとその魔手を伸ばしてくることでしょう」 日吉は初めて聞くことばかりに、驚愕に目を丸くした。 まさか自分たちの役目がそれほどに重要な・・ことはわかっていたが、そんなに鬼気 迫るものだとは思ってもいなかったのだ。 「これは、あなたについてもらう任務に関わりあることですから話していますが、学友 たちには口にしないように。余計な混乱を招きますから」 「は・・はい」 日吉はすでに任務を受けたことを後悔しはじめていた。 あーやっぱり勢いで受けちゃったけど・・今更辞退なんて・・・。 日吉は自分の上司をみやる・・・・笑っている。 ・・・・無理そうだ。 一見すると美しく優しい日吉の上司だが、中身は結構きつい・・容赦ない。 「では、話を元に戻しますが・・日吉、あなたについて貰うことになる人間はそんな強い 魂を持つ可能性を秘めた人間です。あなたにはその生を見守り、魂をこの天界へと 導いてもらいたいのです」 「お・・俺がですか?」 日吉は取り繕うことも忘れて自分自身を指差した。 「そうです」 「あの・・・そんな重要な役目は俺みたいな見習いじゃないほうが・・・」 「いいえ、あなたでなければ他の誰にも不可能でしょう」 尊きお方は言い切る。 「・・・何か、わけがあるんですか?」 見習いの自分にその人間を見守らせる何かが。 日吉はこう見えても頭は悪くない。いや、それどころか見習い天使の中では一、二を 争うほどいい。 それでも、日吉はまだ見習いなのだ。 「確かに、わけはあります」 「・・・・それはお聞きしてもいいことなんでしょうか?」 「・・・そうですね、混乱を避けるためにも話しておいたほうがいいでしょう。あなたを選ん だのは・・あなたが・・いいえ、あなたにそっくりな人物が織田信長の人生に関わって くることになっているからです」 「・・・・?」 よくわからない。 「はっきり言えば、地上にはあなたにそっくりな人間が存在するのです」 「・・・っな!?」 「彼は・・まだ織田信長とは出会っていません。何としても彼よりも早く織田信長と 出会い知己を得なければなりません」 「・・・そこまで仰るということは、もしかして、俺と似た人物というのは・・・」 日吉の問いに尊きお方は深く頷いた。 「そう。あなたの察するとおり、彼は悪魔です」 「・・・・。」 「ですが、なんらかの理由でまだその自我には目覚めていないようです。おそらく悪魔 の王が地上にはなった数ある中の手勢の一人だと思いますが・・あるいは、見込み ある魂に出会った瞬間に悪魔としての本性に目覚めるようになっているのかもしれ ません。しかし、彼が織田信長の人生に関わってくることはすでに決められたこと。 流れをせき止めることは出来ません。なれば、あなたこそが地上へ行き、その魔手を 食い止めて貰わなければならないのです。」 「・・・・・・・・・・。」 それはあまりに大それたことに日吉には思われた。 だが、日吉は天使だった。 「・・はい、わかりました。俺が何が出来るかわかりません。でも一生懸命、織田信長の 魂を守り天界へと導いて参ります!」 「期待していますよ」 穏やかな微笑みが日吉を包んだ。 |
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日吉エンジェル(笑)頑張ります!
・・・でも頼りなさげ・・・