【2】 運命
あぁぁ・・・時間をちょっと間違っただけで大変なことにぃぃぃぃっっ!! 日吉は蓑虫のように木に吊るされ、下で金勘定をはじめた男たちを涙を浮かべた 眼差しで見下ろす。 絶体絶命の大ピンチ。 このままでは言われた任務も果たせず・・・・・・ (・・・・も、もしかして・・・・し、死んじゃったり・・・うわぁぁっっそんなの嫌だぁぁっっ!!!) 何とか逃げようとぎしぎしゆさぶるが木はびくともしない。 「おい、ガキはどうする?」 「放っとけ。そのうち野垂れ死ぬ」 「そんな!置いてきぼりにするなんて酷いっ!!おろせっ!おろせーーっ!!」 「うるせぇぞっ!ガキっ!!」 「ったく、さっさとやっちまえばいいんだよ」 「だな、で静かになったところでゆっくり勘定するとするか」 男たちは手に刀を持って立ち上がった。 「あう・・・」 もう、駄目だ! 日吉はぎゅっと目を瞑った。 ダゥンッ! 「「な・・・っ!?」」 「・・・へ?」 だが白刃は日吉を襲うことなく、妙な大音響がしたと思った後には反対に男のほうが 頭から血を流して倒れていた。 「兄ちゃん、はよ逃げや。・・犬でも恩は忘れへんいうからな」 「へ?え・・・?」 吊るされた木からおろされ、縄をほどかれた日吉にまだ幼い子供がにこにこと 話しかける。 あまりの展開の速さに日吉はいったい何が何だかわからなかった。 しかし、その混乱の間にも事態は進んでいて・・・。 「金を置いて今すぐ失せやがれ、命だけは助けてやる」 硝煙がたちのぼる火縄銃をたずさえ、笠をまぶかに被った男が言い放った。 「な・・・何言ってやがる!」 「よくも仲間を・・・っ!てめぇ・・・っ!!」 ダウンッ!! 再び、男の銃が火を噴いた。 「警告はした。・・・・死ね」 「くそ・・・っ!!」 冷酷に言い放った男は山賊にに照準をあわせ、引き金を・・・・ 「だ・・・駄目だ―――っ!!」 日吉が叫んだ。 「あぁ・・・使ってしまった・・・」 日吉はがくり、と膝をつく。 しかし、奇妙なことに・・・引き金を引こうとした男も、山賊も、日吉を助けた子供も・・・ 日吉以外の全てが動きを止めていた。 奇妙な沈黙だけがあたりを包む。 「・・・でも、使ってしまったものは取り返せないんだから・・・今のうちに」 何とか立ち上がった日吉はふらつく足で、まずは男の銃口を天に向ける。 向かいあう形の山賊を体当たりでその場に倒し、子供と自分は安全地帯である銃を 持つ男の後方に逃げた。 「・・・つ、疲れた・・・」 それだけのことを何とか終わらせた日吉が膝をつくと同時に。 ガンッ!ドガッ!! 凄まじい音とともに、男の銃が火を噴いた。 「・・・・どわっ!」 その爆風で男もろとも日吉は吹き飛んだ。 「ちょっーーーひぃーーっ!!」 日吉が叫ぶ。 まさかこちらに飛んでこようとはとんだ計算違いである。 「な、何やーーっ!!」 子供も、いきなり自分が居た場所が変わって混乱した様子で・・・だが日吉の背後に 隠れるあたり、したたかだ。 「あ、ほな、ここで・・・っ」 「ちょっと待て―っ!どこ行くつもりだ、竹千代っ!」 男が子供の衿首をつかむ。 「うわ、堪忍な。兄ちゃん!逃したってんか!」 「誰が逃がすかっ!」 「後生やから!」 「あほか―っ!」 「あの・・・」 「てめぇっ!逃げないからと約束してついてきたんだろうがっ!」 「ちっちっ、兄ちゃん。男がいつまでも過去にこだわってたらあかんで!」 「何が過去だ!ふざけんな!」 「あのぉ・・・・」 「「何だ(や)!?」」 同時に二人に睨まれて、日吉は二人の下敷きになったまま涙を流した。 「いややな〜兄ちゃん。もっとはよう言うてくれたらのいとったかもしれんのに」 ばしばしっと子供が日吉の背中を叩く。 言いたい日吉に口を挟ませなかったことなど、記憶のすみにも無いらしい。 「ったく、男がいつまでもうじうじしてんじゃねーよっ!」 それだけのことをされた、と日吉は確信している。 「・・・・と、とにかく。いったいあなたたち誰なんですか!?」 「あー・・・それは、まぁ、あれだ」 あれって何だ。 「まぁまぁ。気にしーへんでもただの通りすがりの正義の味方ちゅうやつや!」 どのあたりが正義なのだろう・・・。 日吉は悩む。 それともこれが下界の常識というやつなのだろうか・・・だとすればかなり嫌だ。 「まぁ、てめーも気をつけろよ。このあたりは国境で物騒だからな」 「は、はい」 初めてまともなことを男に言われた日吉は先ほどの事態を思い出し、深く頷く。 「ほんなら、兄ちゃん。ボクら急ぐから・・・」 「ほら、てめーの金だ。ちゃんと持ってろよ」 子供と一緒に馬上の人となった男が日吉に山賊に奪われたはずの永楽銭を投げ 渡す。 「あ、あのっ!」 「何だ?」 「このあたりに・・・」 日吉は何度も頭の中で反芻した単語を思い出す。 「織田信長、て人知りませんか?」 「「・・・・・。・・・・・」」 男と子供は沈黙する。 子供は面白そうににやにやし、男はざんばらな髪を手でがしがしとかいた。 「知っているんですかっ!?」 「兄ちゃんの目の前におるやん」 「・・・・・・・・・は?」 子供が自分をかかえる背後の男を指差した。 「何か用か?俺が織田信長だ」 「・・・・・・・。・・・・・・えぇぇぇっっっっ!?」 日吉は驚きにその場から10歩ばかりとびのいた。 そういえば・・・指定された時間はこのぐらいだったかもしれない。 日吉は確認、確認、と懐の紙を取り出し・・・ 「何だ?何も書いてねーじゃねぇか」 「ちょ・・・っ」 ひらりと男・・織田信長の奪い取られ、ぽいっと捨てられる。 「あぁ・・・っ!」 それが風にさらわれ・・・・・・・木の枝にひっかかった。 かなり高く日吉の手は届かない。 さすがの信長もちょっと「あ・・・やっちまった」という表情をみせたがすぐにふてぶて しい元の顔に戻る。 「・・・じゃぁな、俺は急いでるからな」 「なっ!ちょっ・・!」 ここで、信長を見失うともう見つけることは出来ないかもしれない・・・だが、あの紙を そのままにしておくことも出来ないし・・・。 日吉は信長と紙を交互に見比べる。 優先するべきは・・・ 「俺も連れて行って下さい!」 「あぁ?」 信長はいったい何を言い出すんだ、このガキはと目を細めてすがりついてくる日吉を みやる。 「てめーなんか連れて行ってどうすんだよ?役に立つのか?俺は無用なものはいらん」 「・・・それは・・・」 確かに見習いではあるが、日吉とてそれなりの力はある。 あるが、それを使うには限りがありいつでも自由にというわけにはいかない。 「お・・」 「・・お?」 だから、日吉は精一杯に自分の命じられた任務を果たすために全力を尽くす・・・。 「お守りしますっ!」 「・・はぁ?」 今、山賊にからまれていたところを助けてやったのは誰だと思っているのかと 男の顔が言っている。 「全身全霊で。俺の全てで信長様をお守りします!」 だが、日吉は本気だった。 信長を守るために、自分の命さえ投げ出すつもりだった。 「ほぉ・・そんなこと言って後悔しても知らねーぞ?」 「しません!だから連れて行ってください!」 信長はそんな日吉をじっと見つめ、頭をがしがしとかいた。 「・・・。・・・何で会ったばかりの俺にそこまで賭けられるのか知らんが、てめーの名は?」 「ひ・・日吉です!」 「よし、わかった!てめーは今日から『サル』だ!」 「な・・・っ?」 「・・て、兄ちゃん。日吉いうて名乗ってんのに・・」 日吉のかわりに子供がつっこむ。 「いいや、こいつはサルだ。サルに決定!そうと決まったらさっさと行くぞ!」 「え・・・て!!」 信長は馬に鞭をあてる。 「俺は・・・徒歩ですか――っ!!」 日吉は滂沱の涙を流して馬を追う。 ・・・まだまだ、受難は続く。 |
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とりあえず無事、日吉は殿の部下になれました。
ここまでは結構原作に沿った展開ですが次回から
ちょっと違う・・・と思います(おいっ)