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| 「・・・・・・っ!!!」 右腕が熱い。 誰かが何か叫んでいるが・・・遠い。きーんと甲高い音が響く耳には聞き取ることが出来ない。 何が起こったのかと、右腕に触れると、ぬるりとした感触。 ・・・・・血。 服が裂け、そこから赤い血がとめどなく流れ出す。 痛みを感じないためか、実感がわかない。 これは、・・・・・・・・自分の腕? 「藤吉郎ッ!!」 小さく、五右衛門の声が届いた。 いつの間にか傍らにあった黒炎が鼻を押し付けている。 「何?」 ぶるるっと鳴いて、鞍に押し上げようとする。 「乗るの?」 強い目が頷く。 綱を引こうとして、右腕があがらないことに気がついた。 ああ。そうか。 利き腕は使いものにならなくなっている。 「藤吉郎ッ!・・・・乗れっ!」 「・・・五右衛門?」 凄く、ぼんやりする。 どこかで、きんっと刃のまじわる音・・・どこかで、じゃない。 五右衛門と信長様が・・・・・ 信長様が・・・・・・・信長様に、撃たれた、のか。 体がふわりと浮いた気がして、ぺしりっと音がする。 「行けっ黒炎っ!!」 五右衛門の叫び声がして・・・・・・藤吉郎の意識はそこで途切れた。 『サル』 振り向いた顔は、見慣れているはずの怒った顔でも企んだ顔でも、笑顔でさえない。 何故か、泣きそうな顔をしていた。 『・・・・さま?』 『お前は・・・もう、俺を・・・』 よく、聞こえない。 『・・・・さま?』 その人は、諦めたように首を振り・・・・去っていく。 『・・・さまっ・・・・・・さまっ!!!!』 振り向かない。 遠ざかる・・・・・・・・・・・・背中。 「・・・・・うっ」 「お館様っ!真田殿の意識が・・・っ」 「戻ったか!」 藤吉郎の目がゆっくりと開く。 「・・・昌幸、俺がわかるか?」 覗きこんだ信玄に、藤吉郎は不思議そうな眼差しでこくりと小さく頷く。 「信玄・・・さま・・・俺は・・・うっ」 「良い、そのままでいろ」 起き上がろうとした藤吉郎は、激痛が襲った右腕をかかえて倒れた。 「昌幸・・・お前は右腕を撃たれ、黒炎の背に揺られ、この館まで運ばれた。よくぞ落ちなかったものだ」 「・・・・・撃たれ・・て・・・・」 ぼんやりとしている藤吉郎は、いまだ状況がよくわかっていないように見える。 「誰に撃たれたのだ?覚えているか?」 「誰に・・・・」 藤吉郎の脳裏にぼんやりと浮びあがる面影。 唐突に、頭がはっきりした。 「俺は・・・・うっ」 「馬鹿者。大人しくしておれっ!」 「すみま、せん・・・・っ俺は・・・・・俺、は・・・・・・・・」 「誰だ?知った者か?」 「・・・・・・・いいえ、わかりません・・・・・・気づいたら・・・・・」 「そうか。不審者の捜索をさせているが、まだ怪しい者は見つかっておらん」 「・・・申し訳、ありません・・・・信玄様・・・・戦は・・・」 「心配するな。あの程度の小競り合いなど、すぐに終わらせた」 「お館様、これ以上は傷にさわります」 「そうか・・・では、昌幸。ゆっくり静養するがいい」 「・・・はい、申し訳ありません」 ゆっくりと目を閉じた藤吉郎。 その目に一筋・・・・・・・・・・・・・・・・・涙が流れた。 |
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+あとがき+
今年はおそらくこれが最後。