-------18











『こんなこと言うとまた馬鹿って怒られるかもしれませんけど・・・』
『・・・何だ?』


『俺・・・殿のこと、好きです』


































 目覚めた信長は天井を睨みつけた。

(何を今さら・・・)

 寝覚めの悪さに頭痛さえする。
 気分は最悪だった。

(好き・・・だと?ならば何故姿を消した・・)


「・・っ朝からムカつくぜ・・っ」

「殿、お目覚めですか?」
 障子の外から小姓の声がかかる。
 信長は布団から身を起こすと帯を解き始めた。
 小姓が静かに障子を開け、着替えを持って入ってくる。
「サル2号を呼べ」
「はい」
 信長は他人に妙なあだ名をつけることで城内では有名で、サルだ、キンカン頭だと
 いったい誰のことだ。それは?と他人が考えこまずにはいられないような名が飛び
 かっている。もちろん声に出して使うのは信長だけなのだが・・・。


「殿、失礼いたします」
 すでに城に上がっていたらしい秀吉は呼び出しがかかってすぐに現れた。
「あの商人はどうしている?」
 唐突な用件の切り出しに慣れている秀吉は信長がいう商人が先日街に下りたときに
 布を買い求めた男だろうと推察する。
「あの男ならば、蜂須賀長屋のほうに・・・」
「ほう・・・」
 信長がにやりと笑った。
「・・・で、どこの細作かわかったのか?」
「・・・おそらく北、かと・・」
 秀吉の言葉に信長が頷く。
 信長も秀吉も勘助のことをただの商人とは思っていなかった。
 立ち居振る舞いにキレがありすぎるし、度胸も据わっている。
 目の前の侍が織田信長だとわかったときに驚いたもののそれ以上に騒ぎ立てる
 どころか、商談を進めるあたりただの商人であるはずも無い。

「・・・おっさんかもしれねぇな」
「・・甲斐、ですか」
「ああ、先日使者を送ったばかりだからな・・・どんなものか探りに来たんだろう」
「なるほど・・・」
「よし、今日はそいつに会いに行く」
「・・・殿」
 信長のお忍びはいい加減慣れたとはいえ、こうも一刻の主がほいほい城下を歩いて
 良いものかと悩まずにはいられない。
 どうせ止めても無駄なので余計なことはしないが。

「おっさんが寄越すぐらいだ、かなり使える相手だろうよ」
 信長は悪戯をしかける悪がきのようにうきうきと足取りも軽かった。





































「どうもまた上杉が動きはじめたようだな」
 上杉が信越国境を越え、武田が守護していた地に築城を始めたという知らせを受け
 信玄は大広間に重臣たちを集め対策を練っていた。
 もちろん藤吉郎も信玄より一段下がった場所へ控えている。

「我らの地に築城など!蹴散らしてくれましょうぞっ!」
 誰かの意見に賛同の声が重なる。
「もちろん、そうするつもりだ。だが馬鹿正直に真正面からぶつかるつもりは無い」
「それはどういうことでしょうか、お館様?」
「昌幸、説明を」
「はい・・・」
 信玄にうながされ、藤吉郎は地図を広げ説明を始めた。
「今回はこのように陣を置きます」
「何と、横長な陣だ」
「これでは攻撃も守りも薄くなろうが・・・」
「お館様の陣はどちらに置くのだ?」

「全てに、です」
 藤吉郎の言葉に武将たちは揃って不可解な表情を浮かべた。
 背後で信玄が面白そうに眺めている。

「影武者を立て、全ての陣にお館様が居るように上杉に思わせるのが狙いです」
「なるほど」
「それで相手を霍乱するわけか」
「はい、そしておびき寄せたところを・・・狙わず退却し別の陣営がその背後から
 北信濃に潜入し奪い返します。もちろん上杉も馬鹿ではありません。我々が信濃を
 狙っていることを悟られないために影武者が役に立つでしょう」

 その後、詳しいことを打ち合わせし、武将たちは信玄に言葉をかけられながら
 下がっていった。
 残るのは藤吉郎のみ。




「昌幸」
 信玄の声が後ろからかかり、藤吉郎は抱きしめられる。
「お前は前線で俺と共に控えていろ。わかったな」
「・・・・・はい」
















 藤吉郎の策は功を奏し、武田は北信濃を取り返すことになる。
























NEXT

BACK

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
+あとがき+

ちょっとした間話・・
次はいよいよ織田VS今川!!
・・・・の予定


Back