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「殿、お待ち下さいっ!」
「いくら何でも、兵が少なすぎますっ!」
「うるせぇっ!俺は行く!邪魔をするな!!」








 ――――清洲城。

 信長は斉藤義龍挙兵の知らせと共に、道三からの遺言を受け取った。
 遺言には、信長へ美濃を譲るとあった。
 しかし、その道三は我が子に今まさに殺されんとしている。
 信長にとって道三は何にも変えがたい盟友だった。
 その上、腹を割って話せる相手でもある。
 
「マムシを放っておけるかっ!構わんっ!俺について来られる奴だけ来い!」
 言い出した信長をもう誰も止めることは出来ない。
 飛び出した信長に側近たちが慌てて続く。
 秀吉も徒歩ながら遅れじとそれに続いた。













 戦況は想像以上に不利なようだった。
 だが、信長は一縷の望みを抱き、馬を走らせる。
 せめて道三の身だけでも救えれば・・・・・。

 その望みを打ち砕いたのは一本のくないだった。

 長良川河畔に近づいた信長の馬の前に突き刺さったくない。
 驚いた馬が前足を上げるのを巧みな綱さばきで落ち着けると、飛んできた方向を
 見極めるように信長は前方を睨みつけた。

「これは・・・っ」
「・・スッパか」

『ご名答』
 声だけがどこからか掛かる。

「・・邪魔をするなら、てめぇも殺すぞ」

『勘違いすんなって。俺はわざわざマムシのおっさんの最後の言葉を伝えに来て
 やったんだぜ?』


「何だと?」

『・・・・「婿殿、これ以上先へは進むな。わしのことは見捨てろ。もう間に合わん。
 婿殿・・・いや、信長殿。そなたと出会えて良かった。帰蝶のことよろしく頼む」・・・』


「・・・・・・・・・・・っマムシっ!!」
 手綱を握る信長の手から血が滲む。
 悔しさと怒りと悲しみと・・・己の不甲斐なさに、抑えきれない激情が荒れ狂う。

『じゃ、伝えたから俺は行くな』


「待てっ!!」
 静止の言葉・・・それは信長の声では無かった。
 徒歩ながら信長に追いついて来た秀吉だった。
「藤吉郎は・・・藤吉郎はどうしたっ!一緒に居るんだろうがっ!!」

『・・・・・・ああ、まぁな』


「どこに居る!?何故姿を現さない!」

『まぁ、こっちにも色々事情があってさ・・・ま、死んじゃいないから安心しろよ・・・・
 元気だとは言いがたいが、な・・・』


 今まで場違いな明るさを含んでいた五右衛門の声が、ふと沈みこんだ気がした。

「サルは・・・」
「殿?」
「・・・・・・・。サルに伝えろ」
 信長は何かを振り切るように馬首を返した。
 





「二度と俺の目の前に現れるな。現れたら・・・・・・・・・・殺す」





「殿!?」
 秀吉が驚愕して信長を見上げる。
 だが、無表情な信長の顔からはどんな感情も読み取ることは出来ない。
 まるで凍りついたようにつめたい表情だった。


『・・了解』
 短いI応えと共に五右衛門の気配は消え去った。


「殿・・・藤吉郎は・・・」
 藤吉郎がただで信長を裏切るはずが無い。
 きっと何か事情があったに違いないのだ。
「言うな。どんな事情があろうとあいつは俺を裏切った。俺は裏切りを許さん」
「・・・・・・・・・・」
 そう言い捨て駆け出した信長に秀吉は何も言えない。
 ただ、胸中で藤吉郎に馬鹿野郎と怒鳴り散らしていた。








































 4月も末。甲斐にも漸く春の兆しが見え始める頃。
 藤吉郎は一つの任務を終え、信玄の前に平伏していた。

 
 





















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+あとがき+

これから本格的にお館様の登場です!
・・・・たぶん(おいっ)
痛い系を目指して(・・というよりなんだか切ない系になってるような・・・/涙)
頑張りますっ!


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