■ 景王と愉快な仲間たち ■
−拾弐−
「いいっ!?負けたら十年間タダ働きさせるわよっ!!」 恭VS雁。 代表者が向かいあったところで、貴賓席から幼いけれど容赦無い言葉が飛んだ。 ご存知供王珠晶である。その傍らでは主の言葉におろおろしている供麒…変わらぬ主従の姿があった。 「主上・・・そのようにタダ働きなどと・・・」 「そうね。十年間なんて生温かったかしら?・・・五十年くらいにしておこうかしら」 「主上・・・(涙)」 供麒の言いたいことを察することなど珠晶には朝飯前。だからと言ってその通りにしてやろうかなんて考えは雲海の雲より薄い。(つまりあるように見えて実は無い) 「だいたいね、何であっちは王が参加してんのよ!誰も何も言わない訳!?」 珠晶が叫ぶ。 延王と面識があっても親しくは無い珠晶に、誰が何を言っても無駄なのだということはわからない。 言うだけ損、という奴なのだ。それでも言わずにおれないのは帷湍くらいのもの・・・ お冠な珠晶を他所に試合開始の銅鑼が鳴る。 「さぁっ!初戦から優勝候補筆頭雁国代表風漢の登場ですっ!!」 舞台の袖で、よく舌がまわるなぁと陽子が感心している。 「貴賓席からも罵声ならぬ歓声が響きますっ!!」 どう考えても歓声なんてものでは無いが、会場の声に掻き消されて何を言っているかわからない。 「生活がかかった恭国代表がどう風漢に対抗するか見物でしょうっ!」 「・・・お前も大変だな」 延王が相手に同情を寄せた。 「そう思うなら負けて下さいよっ」 腐っても代表。そのへんの三下に負けるような腕では無い。その腕だけで他国にも士官できるほどだろうが、生憎延王のほうは剣の腕だけなら『十二国一』という称号さえ受けている・・・何か不意でもつかない限り勝つことは難しいだろう。 「そうもいかん。参加したからには勝たねば意味が無かろう?」 「参加することに意義があるんじゃありませんかっ!」 「そうだな。お前の主にもそう言ってやるといい」 「・・・・・・・。・・・・・・」 言った途端に、あの小さな足で容赦なく蹴り飛ばされ踏みつけにされるだろう。 何で俺代表になんてなったんだろうな…名無しの恭国代表は数瞬黄昏た。 その間だけで、延王には十分だった。 「ふざけんじゃないわよっ!一生タダ働きよーーっっ!!!!」 剣を交じわす暇も無く、舞台に叩き伏せられた恭国代表に珠晶の怒りの声が飛ぶ。 「んー、供王の気持ちもわからないでは無いな」 「そうだねぇ」 腕を組んで頷いている陽子に利広も同意する。 「どうせなら、もっと風漢を疲労させてくれればいいのに、あれでは・・・話にならない」 嘆かわしい、と頭を振る。 「・・・・・・」 昨今の女王は辛辣であるらしい。 「まぁいい。次は利広だろう?是非とも勝ち上がって風漢に一泡吹かせてくれ」 「・・・・・・・また微妙な応援の仕方を・・・」 苦笑する。 「しかし相手は範国だからな。甘く見ないほうがいいぞ」 「何故?」 陽子は、ただ『対戦すればわかる』とだけ言って視線を逸らした。 「さぁ、呆気なく終わってしまった初戦に続き第二回戦ですっ!対するは南の最長寿国奏VS謎に満ち溢れた範国の対戦です!」 「最長寿国、て・・・・・・国にご老人が溢れてそうで嫌な表現だなぁ・・・」 苦笑しながら利広が舞台に出て行く。 その美青年っぷりに会場から黄色い声が上がった。 陽子と延王は耳を塞いだ。 「・・・ところで風漢。奏国代表を見かけましたか?控え室でも見なかったんですが」 「さぁなぁ〜・・・何しろあの主だからな。尻尾巻いて逃げたんじゃないのか?」 風漢だけには言われたくないだろうなぁ、と今頃貴賓席に居るだろう相手を思い浮かべた。 「おぉぉっと!?」 不顎が叫んだ。 |