■ 景王と愉快な仲間たち ■



−拾壱−









「さぁ、皆さんお待ちかねの花形!刀剣部門、第一回戦を開始いたしますっ!!!!」
 拳を振り上げる不顎に、ノリノリの観客もおーっ!やらきゃーっ!やら声を上げる。
 対戦相手は先ほど籤により決定している。
 組み合わせは・・・
   __     __     __     __    __
  |  |   |  |   |  |   |  |  |  |
  雁  恭   範  奏   才  巧   戴  芳  慶  漣

 以上となった。柳と舜は参加していない。

「割とバラけましたね。どうせなら一回戦で、風漢と利広が当たって潰しあってくれれば良かったんだが」
「・・・・朱嬰・・・・」
 延王と利広の顔が引き攣った。
「まぁ、どちらにしろ二回戦ではあたるんだからいいか。お互い頑張って下さい」
「・・・全く気持ちが篭っておらんな」
 ぼやく延王に、陽子は『敵ですから』とあっさり返す。
「朱嬰は、いいとこ引いたねぇ」
「もしお二人のどちらかと当たるとすれば決勝ですね。・・・・腕が鳴る」
 おい。
 刀剣部門なのに、ボキバキと指を鳴らす陽子。
 こいつは本気で俺たちをヤるつもりなのかもしれん・・・延王は物騒な光を宿す陽子の翡翠の瞳に何やら背筋が寒くなった。
「でも、その前に李斎と当たらなくてはいけないけど」
 戴の代表者としてひっそりと三人の脇に控えていた李斎は、話を振られてとんでも無いと謙遜した。
「一回戦も勝ち抜けるかどうかもわかりませんのに、慶・・・朱嬰殿との勝負など」
「李斎は謙遜が過ぎる。貴女はご主君が認められた腕なのだし、泰麒も期待していると思うよ」
 恐れ入ります、とあくまで低姿勢だ。
「・・・お前にも、昔はこんな可愛らしいところがあったのにな」
「風漢。過去を振り返るようになると老化現象の第一歩だそうです。だいたい、過去を振り返らなくても今現在、十分に私は貴方に対して年長者を敬うように接していますから」
「お前、それのどこがいったい敬っている態度なんだ・・・」
「心外ですね。こんなにも私が心を砕いているというのに・・・伝わらないとは、嗚呼何と嘆かわしい」
「白々しい・・・」
 良いコンビである。
「ところで朱嬰の獲物は、水禺刀?」
「まさか。この闘いでは冬器の使用は認められてないから、禁軍との練習で使用しているものを持ってきた」
「禁軍って・・・朱嬰」
「お前、まだやってるのか。桓魋が泣くぞ」
「大丈夫ですよ。50年ほど前に諦めて、どうせなら私が『誰よりも』強くなることを応援することにしたらしいです」
 あっけらかんとのたまう陽子。
 今度一緒に呑んでやろうと、らしくも無く延王は隣国の禁軍左軍将軍に同情を寄せた。
「そんなことより、風漢。出番ですよ」
 試合開始を知らせる銅鑼の音が響いている。
「・・・・・・」
 送り出す陽子の顔には『わくわく』と書いてありそうに楽しげだった。
 ぽんぽん。
「・・・何だ、利広」
「苦労するねぇ」
「・・・・・・・」
 にやにや笑う利広に、延王はむっと口を歪めるとその手を払って舞台へと出て行った。








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