** スレナルVer. **
肆
面倒ごとを一つ片付けて帰ってきたら、面倒ごとは一つ増えていた。 今、ナルトはチャクラを吸収するという装置を取り付けられ牢の中に鎖でぶら下げられている。 ドトウは『絶対に』と自信満々に取り外すことなど不可能と言い放ってくれたが、こんなチャチな玩具では九尾の能力に耐えられるわけもなく、ナルトが故意に吸収されるチャクラをほどよく少なくしてやっているのだ。 ・・・しかし、いくらチャクラが使えないからといってこれだけの拘束で見張りもつけずに放置するっていうのはあんまり忍を舐めすぎてないか?機械に頼りすぎて忘れてんだろ、別に忍はチャクラを使えるからってなれるもんでもねぇし、チャクラを使えないからといって忍じゃなくなるわけじゃない。さてと、どうやって脱出してやろうか・・・カカシたちが追いつくにはもうしばらく掛かるだろうし、護衛対象を放置しておくわけにもいくまい。 鎖は関節はずして抜けて、牢に貼ってある呪符は燃やす・・と証拠が残るから、風で飛ばしておくか・・・・・・・ん、誰かきやがったな。 雪姫だった。丁度いい。 『この国には春が無い』 『私は信じることをやめた』 生温い絶望だ。本当の絶望は、そんなことさえ口には出来ないのに。 『自分に嘘をついて、自分を演じ続けてきた』 演じ続けた、気になってただけだろ? あんたは演じてなんて無いさ。ただ、顔を背けているだけだ・・・弱い自分にな。 全く、目の前に小雪さえ居なければさっさと牢を出て殺してやれるのに。 面倒ごとは、元から駆除するのが簡単でいい。 溜息を殺して、ナルトは適当に『必死の』演技をする。あちらは演技のプロだという女優だそうだが、こっちは生まれたときからの二重生活だ。年季が違う。 靴に仕込んでいた刃を使い、鎖を断ち切ろうとするナルトを雪姫は何の感情も浮ばない視線で見続ける・・・・刃を落として掛けられた声は『ほらね』。 木の葉の里人の目はその何倍も鋭く、憎しみに塗れ、吐く言葉は怨嗟の叫び。 言葉と実際の暴力は、幾度ナルトの体と心を殺したことだろう(・・気に病む人間ならば) 『結局諦めるしかないのよ』 『やめてっ!』 やっとカカシたちが来たらしい。 手間をかけさせる面倒くささにムカついて、助けにきたカカシにここぞとばかりに二発ほど入れてやった。カカシは一見平静を装っているがかなりムリをしているはず。 (ま、骨まではいってないだろーし) それにしても、自分は呆れるほどに馬鹿にされているらしい。 ドトウと小雪に駆け寄っていくのも邪魔されず放置される。 この装置があるから、オレをただのガキにすぎないと思っているんだろうが・・・もし、ここでいきなりドトウの頭をかち割ってやったらどんな顔するだろうな、こいつら。 装置に頼って、自分の力が強いのだと勘違いしている馬鹿な忍たち。 そんなナルトの不穏な空気を察知したカカシが、『が ま ん』と合図を送ってくる。 (・・・・カカシに言われたおしまいな気がするのはオレだけか・・・・・?) その瞬間、ドトウの拳がナルトを弾き飛ばした。 反射的にチャクラの膜でダメージを防ぎ、受身をとりながら転がった。視線の先では先ほど ナルトに『がまん』と伝えてきたはずのカカシがキレそうになっている・・・・。 そのままドトウは小雪を抱えて、虹の氷壁に行くつもりなのだろう。 ナルトはちらりとカカシたちに視線を走らせ、雪忍三人衆の後始末をまかせることにする。 (そっちはまかせたぞ) (ナルト!・・・気をつけて!) (誰に言ってる・・それより、カカシ。ちゃんと鎧持って来いよ・・・少しぐらいなら壊れても構わない が解析にもかけられないほど粉砕しやがったら・・・どうなるかわかってるよな?) (・・・・・・・・・。・・・・・・・だ、大丈夫!大丈夫!オレにどーんとまかせて!) (・・・・・・・・。・・・・・・・・・。・・・・・・・・・) それが一番心配なのだ、とナルトは顔をしかめて、宙に飛び出した。 |