果てること無く・・・
「じっちゃん、何か任務くれよ」 火影にここまで砕けた言い方が出来るのはこの里でもナルトくらいのものだろう。 しかもナルトが居る場所は火影の目の前ではなく、頭の上。 ・・・天井からぶら下がっていた。 「お前はまったく・・・いつも言うておろうが。そんなところから顔を出すでないと」 「小言はいいからさ」 困ったものだと頭を振る火影の前に音もなく降り立つと、デスクに積まれていた 任務所をぺらぺらとめくる。 一応どれも里の機密書類だったりするのだが・・・。 「あ、これなんかいいかも」 ナルトはその中の一枚を抜き取り火影に差し出す。 「・・・それはもう手配ずみじゃ」 「ちぇっ。・・・じゃぁ、これ!砂の国の任務だしさ、ついでに偵察もしてきてやるよ。どう?」 「・・・・・・・・。・・・・・・・・・・」 火影はかぶっている傘を手でなおすと、ふぅーと息を吐いた。 了承の証だ。 「じゃ、俺は・・・」 さっと任務書に目を通したナルトはそれを一瞬のうちで灰にすると姿を消そうとした。 だが・・・・。 「・・・ナルト、何をいらついておる?」 「何のことだってば?」 器用に口だけで笑みをかたどると今度こそナルトは姿を消した。 「・・・・・ナルト・・・」 残された部屋には火影の苦鳴が響いた。 全く、任務でもしてないと腐るっての! 監視役代理とかいって熊は、モノホンの熊みたいにうろつきやがるし・・・いまだ得たいの 知れないサスケ(仮)はうまく隠れているつもりなんだろうが・・・バレバレだっての。 だが、熊もまさか任務までにはついてこないだろう。 一応下忍の担当教官だからな・・・・あとは、あのサスケ(仮)だけだが・・・。 ま、ついてきたらついて来たとき。 適当に罠でもはって・・・砂の国にでも置いてくるか? あの国には因縁の相手もいるしな・・・くくく・・・。 お、何か気分良くなってきた。 よしよし、この調子だ。 ナルトは鼻歌でも歌いだしそうに気分よく木の葉の隠れ里を後にした。 ナルトに与えられた・・・というよりは奪った任務は砂の国に寝返ったらしい忍の暗殺。 いつの世も裏切り者には厳しい罰がつきもの。 今回のただ死を与えるだけというものは処分としては軽いほう。 普通なら九死一生程度に痛めつけ、取れるだけの情報を絞りとり、あとは生きたまま体を 獣の餌にでもしてさようなら。普通の人間なら狂うような拷問も、訓練を受けた忍には 狂うことさえも許されず、苦痛と屈辱と、恐怖と後悔にさいなまれる。 獣の餌になるころにはほとんど人としての原型をとどめていないことが多い。 ・・・・まぁ、忍の世界ってのはそれだけシビアな世界だってこと。 死が最大の恐怖では無いのだ。 「・・・拷問かける価値さえ無いってわけか」 ナルトにとってはお手軽で、いいストレス解消の任務。 ・・・・・のはずだった。 ナルトがターゲットの息の根を止めようとクナイを閃かす、その瞬間。 男は背後から飛んできた手裏剣によって絶命した。 「・・・・・・・何のつもりだってばよ・・・」 怒りを押し殺した声で、表情なくナルトは手裏剣の飛んできた方向に顔を向ける。 そこに居たのは・・・ サスケ。 「お前が手を下すまでも無い相手だった」 サスケも顔色を変えず、それが当然のごとくに言い放つ。 「俺の任務だってばよ?」 「・・・・・ああ」 「任務妨害は死に値する・・・わかってるってのか?」 「・・・わかっている。お前が怒るのも。・・・だが、ナルトが手を汚す必要は無いから」 「・・・俺のこと馬鹿にしてんの?任務に汚いも綺麗もあるかよ!」 ナルトの苛々が爆発した。 「のこのここんなとこまでついて来るわ、任務は妨害するわ・・・いい加減にしろよ!」 「俺はお前を守ると誓った。離れていては守れない」 死人を挟んで言い争う子供(ナルト)と大人(サスケ)。 「・・・ああ、そうかよっ!」 確かに守ると言い張るサスケに勝手にすればいいと言ったのは誰あろうナルトだ。 「だからって他人の任務を邪魔すんなっ!俺の手が汚れる?はっ、お笑いだ。俺はこれまで 数えるのも馬鹿らしいほど人を殺してきた。これからだって殺すだろう・・・何人でも。俺が この手で」 「・・・・生きるために、だろ」 ナルトの言葉を奪い、そう言ったサスケの口元には笑みが浮かぶ。 「・・・・・・」 「生きるためにお前は殺す。その手を血に染める・・・でも、ナルト。俺はお前がそうする度に 傷ついていくのを何もせずに黙って見ていることは出来ない」 「・・・・・・誰、が?」 誰が傷つく・・・・だって? 何が? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺が? 「ナルトが・・・・」 「黙れっ!!・・・・・黙れっ黙れっダマレッ」 叫び、ナルトは駆け出した。 |