それは本当に・・・突然だった。
「・・・・・ナルト?」 中忍試験の後、あっさりと上忍試験もクリアし、今や名実ともに里の顔として活躍する サスケ。与えられた長期任務を終え、里に帰ってきて報告に訪れた火影の執務室、その 椅子に座る存在に、サスケは一瞬事態を把握できなかった。 「つまり、あんたは20歳のサスケだと?」 「そうだ」 「そして、今から8年後の世界に生きている、と・・・」 「・・・そうだ・・・・おそらく」 事情を話していた本人も何やら自信が無くなって来たのか、語調が弱い。 「ふ〜〜ん、20歳のサスケね・・・相変わらずの無愛想だな」 「・・・信じるのか?」 うつむき加減だった男がはっと顔をあげた。 「別に。お前がサスケであろうと無かろうと俺には関係ないから。とりあえずややこしいから あんたのことは・・・・・サスケ(仮)て呼んでいい?」 「・・・何だ、その『かっこ仮』は・・・」 「別に気にしなくていいって、ただの便宜上区別するものが欲しかっただけだから」 「・・・・勝手にしてくれ」 「そうする。・・・で、あんたが・・・未来から来たとして、何でそれが俺と関係あるわけ?」 「それは・・・」 サスケ(仮)は話しかけた口を閉じた。 「・・俺が話す内容は未来のことだ。不用意に話すべきじゃない」 「別に俺は構わないけど。もう俺は死んじゃってるとか?それとも・・抜けてるかな」 自分の未来を淡々と覚悟する12歳の子供、傍目には不気味以外の何者でも無いだろう。 だがサスケ(仮)は笑いを浮かべた。 「お前が死ぬわけないだろ」 「・・・何で?」 「俺が死なせないから」 「・・・・・・・・・」 大真面目な顔で言われてナルトは無表情になった。 目の前の人間が本当に8年後のサスケだというのならそんなことをナルトに言う理由が 皆目思いつかない。 ・・・8年の間に何かあったのだろうか・・・・。 「おそらく、今回のことはそれに関係しているんだと思う」 「・・・それ?」 「俺がナルトを死なせないということが」 「・・・・?」 「どうしてそうなったかは言えないが、俺とナルトは絶体絶命に危機にあって・・離れ離れに なりそうになったナルトへ俺が手を出したその瞬間・・・何があったかはわからない、だが ナルトが印を組んでいるのが見えたからおそらく何かしたんだろうと思う」 「絶体絶命の危機な・・・・」 今いちピンと来ない。 今までも暗部の仕事でそれなりに危険な状態・・・三日三晩貫徹で敵と追いかけっこをした こともあったし、戦場で孤立無援になって千人くらいを相手にしなければならなかったこと さえあった。 それなりな修羅場をくぐってきたナルトには言うなれば慣れたもの。 「お前の術は確かに俺にむかっていた」 「・・・あんたに?」 ・・・邪魔だったから始末しようとでも思ったかな? 「言っておくが、ナルトは俺を信頼してくれていた」 「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・俺が、あんたを?」 信じられないことを聞いたとばかりにナルトはサスケ(仮)を指差した。 だが、サスケ(仮)はすました顔のまま頷く。 「・・・そう見えただけじゃ無いのか?」 「それは無い。ナルトは・・・俺が上忍にあがってからずっと共に任務をこなし・・・互いに 命を預けて戦ってきた。嘘じゃない。確かに俺たちはスリーマンセルを組んだときから 喧嘩が絶えなかったが、だからこそナルトは・・・俺を信頼してくれたのだと思っている」 サスケの言葉にナルトはふ〜と息を吐いた。 「何か、まるで知らない奴のことを聞いてるみたいだ・・・いや、実際そうなのか」 「・・・とにかく俺はナルトを庇おうと前に出・・・・・・そこから記憶にない」 「・・庇う?」 ナルトが自嘲じみた笑いを漏らす。 「学習能力の無い奴だな。波の国でのこと忘れたわけでもないだろうに・・・俺のことなんか 庇ってろくな目にあうわけ無い。そういうのを馬鹿というんだ」 「何と言われようと俺はお前を庇ったことを後悔したことは無い」 「・・・・・・・・・」 ナルトはよく知っているサスケよりずっと大人びて落ち着きをみせる目の前の相手を じっと観察した。 こいつは・・間違いなく俺の裏も・・何者であるかも知っているはず・・・。 そして未来の俺が・・・信頼していた・・・・? 「一つ・・・そういう禁術が無いわけじゃない」 サスケ(仮)が身を乗り出した。 「だが、俺がそれを使うはずも無い」 「何故?」 ナルトは笑った。 「俺の命と引き換えの術だから」 |