信じていた・・ずっと

















 ぱしんっ。



「あんた・・・誰だってば?」
 条件反射でつかまれた腕を振り払ってしまったが、知り合いでもない人間に本性を
 露にするほどナルトは馬鹿では無かった。

「・・ナルト?いったい・・・どうかしたのか?」
 だが、男は訝しげにナルトを見、苦笑を浮かべた。
 それはこちらのセリフだとナルトは思う。
「・・・俺、あんたみたいな知り合いなんて居ないってば・・・えーと・・・本当に誰?」
「・・・俺がへましたのが悪かった。だから勘弁してくれ」
 何を?
 男の言葉の内容が全くわからない。
 会話がかみ合わない。
 だが、どうやら相手はナルトのことを・・・よく知っているらしい。


 (・・・何なんだ・・・こいつ・・・・)


 木の葉の里でナルトにこんな親しげな口を聞く大人なんて・・・ナルトは指で数えるほど
 にしか記憶にない。皆、蔑むような視線を投げかけ、罵りの言葉を口にする。
 
「本当に悪かった・・・だから、いい加減変化はやめろ」
「・・・・っ」
 ぎくり、とナルトの体が固まる。
 今、ナルトは何の術も使ってはいない。姿だって生まれ持ったナルトのものだ。
 だが・・・。

 ナルトはじりじりと後ろに下がっていく。

「・・・お前、誰だ・・・?」
 ナルトの仮面が剥がれ落ちる。
 
「・・・・・・・・・・・ナルト?」
 男の顔から笑いが消えた。
 ナルトから発せられる殺気が冗談などでは無いと漸く気づいたらしい。

「・・・・ナルト、じゃないのか?」
「こちらの問いに先に答えろ」
「・・・・・・・・・わからない、いったい何がどうなってるんだ・・・・?」
「それはこっちのセリフだ」

 男は右肩を押さえ、立ち上がった。

「俺は・・・俺の名は・・・・」















  「うちは、サスケ」
























「・・・・・何、だって・・・・・?」
 ナルトは男の口から出た名前が信じられない。
 目の前の男が『うちはサスケ』などと・・・そんなことは在り得ない。
 確かにサスケは下忍にしてはずば抜けた能力を持っている・・そのことは認めよう。
 だが、目の前の男のように完全にチャクラをコントロールすることはまだ出来ないはずだ。

「嘘を・・・」
「嘘じゃない。俺はサスケだ」
「嘘だっ!サスケはお前のような・・・・・強さは無い」
 ナルトの言葉にサスケと名乗った男は顔を歪ませた。

「・・・悪かったな、強くなくて。お前のほうこそずっと嘘を・・・いや、俺たちを騙していた
 くせにそんなことを言うのか?」
「・・・何?」
「ドベでウスラトンカチ・・落ちこぼれ・・・。だが、実際は里の誰よりも実力があった。
 ・・・陰で笑っていたのか?俺たちの愚かさを・・・・ナルト」


 男とナルトは睨みあった。
 鋭い緊張があたりを包み、木々さえもざわめきを止める。

 ふと、ナルトが笑った。


「・・・・笑う?お前たちを?」
「ナルト・・・」
 ナルトは両手で顔を覆い・・・・・・サスケを睨んだ。
 その青い瞳は冷たく・・・どこまでも深かかった。

「その程度の感情だと・・・?・・・・・・だからお前は甘いんだよ。」
「ナルト・・・」
「サスケ、お前のように素のままで生きられる奴は幸せだ。もし、俺がそんなことをすれば
 この年まで生きることなく殺されていただろうさ、木の葉の忍に。俺はただ必要に迫られ
 てこうしていただけだ。お前などにとやかく言われる筋合いは無い」
 幼いナルトの口から淡々と告げられる言葉はサスケの顔を暗く染めた。
「・・・悪かった。お前が・・俺を嫌っているのはわかっていた。冗談で紛らわせていても
 時折感じる視線は気のせいにしては強すぎたからな・・・」
「へぇ・・・気づいてたんだ?それは驚いた」
 驚いたと言いながらくすくすと笑っているナルトはどこか異常で、浮かべる表情はまるで
 子供のものとは思えない。

「・・・ナルト、お前・・・年は?」
「は?そんなの決まってるだろ。12だ。サスケと同じだろ・・・まぁ、あんたは余裕で20は
 超えてそうだけどな」
「12・・・・・・か」

 サスケと名乗った男は、どうして、何故こんなことに・・・とぶつぶつ呟く。


「・・・どうしてこうなったかは、わからないが・・・だいたい事情はわかってきた」
「ふーん、ま・・俺は関係ないからこれで失礼させてもらう」
 これ以上この男と関わる必要も無い、とナルトは去ろうとする。
 だが、男はそんなナルトの腕を掴んで引きとめた。

「・・だから、俺に触るなって言っただろうが・・」
「ナルト、お前は関係無くないぞ。おそらく原因は・・・・・・・お前だ」
「はぁ?何で俺が・・・」
「それを説明するから・・・そこへ座ってくれ」
 男は話が終わるまでどうあってもナルトを放す気は無いらしい。
 ナルトはため息をつくと、どかりと座った。

「・・・手短にしろよ」
















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