その輝きに魅入られた
「・・・・な訳ねーよな」 呟いた自分のセリフを自身で否定し、ナルトは倒れ臥した男の観察を続ける。 本当に。 見れば見るほどサスケに・・・いや、サスケならばこう成長するだろうという姿に見える。 女どもが騒ぎそうなちょっと陰を帯びた端麗な容姿は、苦痛に歪められた表情でさえも 彩りを与えるようだった。 こうも似ていればサスケとの血縁関係を疑うが・・・うちは一族は数年前に起こった事件で サスケとその兄を除いてもうこの世に存在しないはずだ。 その兄であるという可能性も無いでもないが・・・イタチはこんな顔をしていなかったと ナルトは記憶している。 「・・・・・誰だ?」 当然、そんな疑問が浮かんだ。 「・・・・ル・・・・・・・・ト・・・っ」 男の瞼がぴくぴくと震える。 「あ・・おいっ!」 だが、男は何やら途切れがちにうめくばかりで要領を得ない。 「・・・ったく、勘弁しろよ・・・」 この男が何であれ、任務途中で怪我でも負ってようやくここまでたどり着き、行き倒れたの だろう・・・・何もこんなところで、と思うが。 ナルトはため息をつく。 見つけてしまったからには無視するわけにもいかないだろう。 とりあえず肩の傷に応急処置をほどこし、火影に報告しておこうと思い立つ。 さすがの火影の水晶玉もこの禁足地までは届かないから。 「・・・・うちはの生き残りじゃと?」 いつものように火影の執務室に忍込んだナルトは、うちはに生き残りがサスケとイタチ 以外で存在するのかどうか尋ねてみた。 「そう。本当のこと教えて」 「本当も何も、その二人しかおらぬ。うちはは血統を重んじる家系で血縁関係は狭い。 里の監視も常時ついておったから・・・まず間違いなかろう」 「ふ〜〜ん・・」 「じゃが、どうした?お前がそんなことを気にかけるなど」 「ん?ちょとね・・・」 果たして火影の言葉は真実だろうか? 3代目火影はナルトも認めるなかなかの狸だ。素直に信用すれば馬鹿をみる。 プロフェッサーと呼ばれていたのは伊達ではないのだ。 「サスケと喧嘩でもしたのか?」 火影の問いかけにナルトは冷笑を浮かべた。 「あんな、ねんねと真面目に喧嘩してやるほど暇じゃない・・・ってばよ?」 ナルトはサスケが嫌いだった。 他人に関心を持たないナルトがそんなはっきりした感情を相手に対して持つのは 自身でも驚きだが・・・何も知らない癖に己が正義だと信じ込んでいるサスケの傲慢さが いらいらして、我慢ならなかった。 「ま、いいや。邪魔してごめんってば。じっちゃん」 「別に良いが・・・どうも気になるのぉ・・・」 「気にしない気にしない。それよりカカシたちは今、居ないんだよな?」 「・・・全く、勝手に他人の任務書を読むなと言うておろうが・・・」 「読まれるようなところに置いてんのが悪いんだろ」 呆れた口調の火影にナルトは全く悪びれない。 「まぁ、ちょっとした任務で里には一週間ほど帰って来ぬが・・・どうかしたか?」 「いーえ。鬱陶しい奴らが居なくて清々するな、と思ってたんだってば!」 そしてナルトは一歩下がり、姿を消した。 「さてなぁ・・・・・」 残された火影は一人、首を傾げるのだった。 (うちはでは無い・・・だとすれば、あれは誰だ?あんなにサスケとそっくりのチャクラを 持っていて他人なわけがない・・・・) 結局、火影に男のことを話さずじまいになってしまったナルトは禁足地の森の奥、男を 置いてきた洞窟へと急ぐ。 出来れば、目を覚まして自分から姿を消してくれたにこしたことは無いが・・・。 そんな期待は男が変わらない姿で横たわったままなのを視界に入れて消えた。 「・・・気を失うほどの傷か?」 呆れた口調のナルトは、警戒するのを忘れていた。 「・・・悪かったな」 「・・・・・っ!?」 飛びすさろうとしたナルトの右腕がつかまれる。 (しまった・・・・・・っ!こいつ・・・・) 「・・ナルト?どうしてそんな姿してる?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 いやに親しげに話し掛けられ、ナルトは素で呆気にとられた。 後で思い出すとかなり間抜けな表情だったに違いない・・・と赤面しきり。 |