抗え
「じっちゃん」 「・・・・・いつも言っておるが・・・」 「はいはい」 苦虫をつぶしたような顔で説教を始めた火影を、ナルトは軽く受け流す。 「ちょっと頼みがあるんだけど?」 「珍しいな・・・どうせ厄介ごとじゃろう?」 くすり、とナルトは含み笑う。 ここ数日ナルトの傍にある不穏な気配に火影は気づいているのだろう。もっともそれが”何か”ナルトは 話すつもりはさらさらないが・・・。 「”時”に関する術。それに関連した資料・・・持ってない?」 古今東西全ての忍術に通じるという”プロフェッサー”という呼称を有している火影への問い。 「・・・・どうするつもりじゃ?お主、あのようなものに興味は無かろう」 「今までは、ね・・・。ちょっと必要なんだ」 それ以上の事情は話そうとしないナルトに、火影はふぅぅとわざとらしいほどに大きなため息をついて 口を開いた。 「お主も知っておるように、時に関する術は”存在しない”というのが前提となっておる。じゃが、かつて その術を研究し・・・姿を消した忍がおった」 「へぇ」 「もしや抜けたのかと追忍も出したが、杳としてその忍の行方は知れなかった・・・・。ただ一つ、その忍 が残した書き込み帳以外にはな・・・」 「その書き込み帳は?」 当然あるのだろう、とナルトは火影を促す。 「アカデミーの図書館にある」 「・・・・・・・・は?」 ついナルトは口をぽかん、と開く。かなり機密性の高いもの、普段は一目に触れないところに置かれて いるのだろうと予想していたのだが・・・アカデミーの図書館といえば、誰でもいつでも自由に出入り できる里でも1,2を争うほどに公共性の高い場所だ。 「蔵書庫のどこかに眠っておるじゃろう」 「・・・・・・・・」 つまり、見たければ探せということらしい。 青年姿に変化したナルトは、蔵書庫で本の山に埋もれていた。 何も変装する必要は無かったが、『どべ』のナルトと”図書館”という組み合わせは異質である。 余計な茶々が入っても困るということで、司書に火影命令ということでこの蔵書庫は一時的に立ち入り 禁止とさせて火影の言った書き込み帳を探している。 「・・・たく、どこにあるんだ・・・・? どこの子供が描いたのか知らないらくがきから、小難しいばかりで意味不明な学術書までよくもここ まで無造作に集めたものだという本や紙たちに、目的物を探し出すことはかなりの困難を極めた。 だが、ナルトは一刻も早く己のストレスを解消するためにそれを探さなければならない。 (・・・カカシの奴まで帰ってきたら、面倒だ・・・) ドサドサッ!! 「・・・・っ・・・・」 山が崩れ、頭上に落ちてきた本を微弱な風をおこしガードしたのはいいが・・・・その風のせいで もうもうと視界をふさいだ埃に目を閉じる。 本が傷むということで、小ぶりな換気扇が取り付けられている以外窓の一つも無いのだ。 しかもあまり掃除されていないらしい・・・。 「・・・ちっ、怠慢だ・・・」 ようやくおさまりつつある埃に止めていた息を吐き出しながら悪態をつく。 そのナルトの頭上にバサッ、と何かが落ちてきた。 「・・・・・・・。・・・・・・・」 ゆっくりと手に取る。 「・・・・ありやがった」 探していた”ブツ”は、さんざん探したナルトにご褒美とばかりに自分から出てきたのだった。 |