ただ流れゆくままに



















 模範解答を作るようにと渡された問題に目を通しながら家へと続く道を歩いて帰っていたナルトは
 その途中でサスケに出会った。
 いや・・・

「・・・サスケがサスケに化けて何やってんだ?」
 ”サスケ”に変化したサスケ(仮)だった。
「かなり上手くやったと思ったんだが・・・すぐにバレたな」
「当たり前だろ。チャクラが違う」
「・・・?そうか?」
「ああ、サスケはお前と違って煩いほどトゲトゲしたチャクラだからな。ま、他の奴にはバレねぇだろ。
 それで何なんだ、その格好は?」
「この姿ならアスマ上忍に不審がられずにすむ」
「まぁ・・・・おかしくはねぇけど・・・」
 サスケとは犬猿の仲とわかっている相手には逆に不審を与える気もするが・・・。
 ふと、ナルトは悪戯心を出した。
「サスケ」
 名前を呼んでにっこりと邪気の無い笑顔を浮かべるとするりと腕をまわした。
「っ!?」
 目を見開くサスケ(仮)。
 他人との接触を好まないナルトの意外な行動に驚いていた。
 そして、もうサスケと同じように一つ驚いた気配をナルトは感じとっていた。カカシのかわりにナルトの
 監視役を命じられているアスマの気配だ。
「何を・・・」
「バーカ。そこでサスケなら”このウスラトンカチ!”とでも言って振りほどかねーとダメだろ。お前それで
 本当に上忍か?」
「・・・・」
 サスケ(仮)は口をつぐんだ。
 だが、痛いところをつかれて固まったのかと思いきや、サスケ(仮)は腕を組んだままナルトの顎を
 掴むと・・・・


 至近距離で青と黒の瞳がぶつかりあう。


「・・・怒らないのか?」
 触れていた唇を離してサスケが囁く。
「感情をあっさり表に出すほど無能じゃない」
 言葉とは裏腹に、一瞬後ナルトの右ストレートがサスケの顔面に炸裂した。
 そして・・・

「何するんだってばよーっ!このバカ!バカサスケっ!!」
 かーっと真っ赤になった顔で怒りと照れを表現したナルトは唇をぐいぐいと拭うとすごい勢いで
 駆け去った。
 右ストレートで吹っ飛ばされたサスケはそれを呆然と見送る。
 ナルトの”演技”は嫌になるほど完璧だった。












「ナルト」
「あ、熊泥棒」
 あまりの言葉にアスマはかくり、と首をかたむけた。
「窓から入ってくんなって言っただろうが。これだから忍ってやつはろくでもない」
 言うほど嫌なら結界なり、罠なり仕掛けておけばいいだろうに。
 ナルトは言うだけで何の対処もとらないでいる。
「下忍ども放っておいてこんなとこに居ていーわけ?」
「自由行動だ」
 よく言う。
「それで?」
 用があるから来たんだろ、とアスマを促した。
 だが、アスマは黙ったまま困ったように頬をかく。
「・・?」
「いや・・・お前、サスケと付き合ってんのか?」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・ぶっ」
 ナルトは吹き出し、腹を押さえて笑い出した。
「笑うこたねーだろ、笑うことは」
「いや、だって・・・くっくっく・・・っ・・・お前らって・・・・ほんっとバカだよなぁ・・くっくっく・・」
「”ら”・・・?」
「カカシ」
 露骨にアスマの顔がしかめられる。あんな変態と一緒にされるのはご免だとばかりに。
「前にも一度不可抗力でサスケとキスしたことがあるんだけどさ」
「っ二回目かっ!?」
「く・・あっは・・・っはっ・・・・その時のカカシは・・・くっ・・・・鬱陶しかったな。俺が止めなきゃ今ごろ
 サスケの奴は土の下だ。まさかお前がカカシの奴みたいなバカはやらねぇと思うけど?」
 アスマは苦笑した。カカシを例にしっかり釘をさされている。
 (カカシの奴の気持ちもわからんでもないが・・・)
 自分たちにとってナルトは本当に何よりも大切な宝なのだ。お調子者の影に隠れた、僅かな限られ
 た人間にしか見せない本性。その本性の更に奥に・・・本人でさえ気づいてない”特別”がある。
 それはとても脆く、傷つき壊れやすいから、何重にも外側から殻を張り巡らせている。
 けれど、ほんの一瞬。顔を見せるそれにアスマたちは魅せられていた。

「しかしなぁ、もしキスしたのが俺だったら殴るだけですませたか?」
「半殺し」
 何とも魅惑的な笑顔で答えてくれる。
「・・・前々から思ってたが、サスケの奴に甘くないか?」
「そう見える?」
「ああ」
「・・・・・・約束してる、からな・・」
「は?」
「あー、いい。いい。熊には関係ないから」
「だから熊いう・・・・っ!!」
 不意打ちにナルトの唇がアスマの頬をかすめた。
「これでカカシには言えないよな?」
 にっこりと笑ったナルトにアスマは不覚にも赤く染まった顔をおさえて俯いた。
(くそ・・性質わりーぞ・・・)
 いいように踊らされていると思うがどうしようもない。

 目の前の相手は・・・・・・”うずまきナルト”なのだから。











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