2
いつもと同じ、普通の日だった。 天気も晴れたり曇っていたり、雨は降ってはいなかったが・・・時は静かに流れていた。 まさかこの今日という日が、歴史に燦然と輝く・・あらゆる意味で・・日になろうとは恐らく誰も 想像していないだろう。 いや、きっとほんの数人だけは知っていたのだろう。 「これより、戦時下による緊急事態宣言を発令し、戒厳令を敷く」 普段の仕事をいつも通りにこなしていた忍たちは、六代目の言葉にすぐには反応できなかった。 作業の手を止めて、ぼんやりと六代目の姿を見つめる。 ここに居るということ自体、有能さにかけては他にひけを取らないと言い切れる忍たちだった。 その忍たちが、六代目の言葉の意味が理解できず途方に暮れる。 まず、戦時下・・・という言葉だ。 いったい、いつどこで誰が、戦争など起こしているのか? 六代目が言った言葉で無ければ、冗談だと笑いの一つでも起こしていただろうに・・・。 「ナルト」 つい尊称では無く、名を呼んでしまったシカマルの手では任務依頼書が潰されている。 たとえ、事前に何も知らされていなかったとしても、シカマルは誰よりも長く近く傍にあったと 自負している。そのシカマルだからこそ、ナルトが冗談でなく、本気なのだとわかった。 「里の結界は強化して、許可なく出入りすることは不可能にした」 「六代目!」 「・・・各里への宣戦布告はカカシ上忍に託している」 それは、つまり。 戦争を仕掛けるのは、この木の葉だと・・・ナルトは通常の任務を告げるように口にする。 「そんな・・・」 「火影様・・・」 「六代目・・・」 何故、平和な世にわざわざ火種を投げ込むようなことをするのか。 戦など仕掛ける理由がどこにあるというのか? 「己が任務を果たせ」 何の理由も説明せぬままに、ナルトは背を向けて去っていった。 恐慌に陥ろうとする精神を押しとどめ、忍たちは慌しく動き出した。 一切前触れの無い、緊急事態宣言は木の葉の里に住む者たちを混乱させた。 大人たちは、不吉な昔を思い出す。 九尾によって、半壊となった木の葉の過去を。 六代目はいったい何を考えているのか? もう二度と忍界大戦のようなことが起きないように、互いの力の均衡を保ちながら今日まで それぞれやってきたというのに、何故それをわざわざ崩すような真似をするのか。 「この里に住む者を傷つけさせるつもりは無い。戦に関わりたくない者は顔をそむけ、静かに生活すればよいだろう。俺はそれを責めはしない」 集まる里人たちに、ナルトはゆっくりと語りかける。 「ただ、力の均衡はもう随分前に崩れていたのだ。それを互いに見てみぬふりをしていただけ。 不安定な土台の先にある未来は、また不安定なもの。いつか崩れてしまうならば、俺が今崩し、 新しく再構築してやろうと思った・・・それだけの力がこの里にはあると俺は知っている」 「で、ですが六代目っ・・木の葉が必ず勝つという保障など・・・っ」 そう、戦に絶対など存在しない。油断すれば足元をすくわれ、再構築どころでは無い。 他里に食い散らかされて、荒土と成る・・・か。 「俺が勝つ、と言っている。それが保障では 艶麗な美貌に浮ぶ微笑には、絶対の自信が伺える。 かつて里を救った英雄四代目の子であり、その身に封じられた九尾を自在に操る絶対無比なる 六代目火影。うずまきナルト。 里人の視線は恍惚と六代目を見上げる。 「皆に、世界を与えよう。垣根の無い広い大地を」 人々は酔い痴れた。 |
≪ ≫
BACK
++++++++++++++++++++++
うちのナルトは完全に誑しモードに入ったらしいです(苦笑)