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祝いの宴には、各国の大使、大商人、各界を代表する錚々たる顔ぶれが揃った。 さすがに火の国国主の祝いの席。 座敷では何かと不便であろうと用意された大広間も人で埋め尽くされる。 これを機会に新たな繋がりを得ようと、あちらこちらで話が盛り上がっている。 その人間たちが、今一番に近づきたいと思っているのは、国主の傍で控えている美貌の主。 もちろん、ナルトである。 招待客ではあるものの、護衛も依頼されているのでこうしてつかず離れず共に居るのだ。 美貌の主を独り占めしているとあって、国主も大層機嫌がいい。 ナルトも、国主とともに居るため有象無象に声を掛けられずにすんでいる。 編み笠に隠れていた黄金の髪を惜しげもなく晒し、火影の正装に身を包んだナルトはこの場に 居る誰よりも美しく、見る者の口からは溜息しか出てこない。 あちらこちらから飛んでくる秋波を冷めた微笑で打ち落とすナルトは、宴がはじまってからシカマルが持ってきたものしか口にしていない。国主に勧められてもやんわりと断る。 見知らぬ場所で誰が作ったかもわからないものを口にするなど在り得ない。 毒物に耐性がある体でも、摂取すれば何かしらの変調はある。 自分のコンディションを把握できない忍など、ただの役立たずだからだ。 「――― ナルト、兄ちゃん・・・?」 近寄る気配は感じていた。 まさか『俺に関わるな』というナルトのオーラを超えてまで声を掛けてくるとは思わず、ゆっくりと 振り返る。そこには緊張した面持ちの目の大きな青年が立っていた。 「あの・・俺のこと、覚えて・・ますか?」 「もちろんだ―――― イナリ」 違うことなく名を呼ばれ、青年の顔が喜びに輝いた。 「あ、俺、今・・波の国の大使で・・・」 「ああ、出世したな。良い男になった」 誉め言葉に顔が紅潮する。 年若くとも、海千山千の狸爺どもとも互角にやりとりすると噂される有能な波の国大使も、ナルトの 前ではただの青年だ。 「会えて嬉しいです・・・ちょっとナルト兄ちゃん、雰囲気変わったけど・・」 「こんな俺では嫌か?」 微笑を浮かべてのぞきこまれ、イナリは慌てて首を振った。 「全然!!ナルト兄ちゃんはナルト兄ちゃんだ!」 「・・・ふふ、イナリは父親を超えるいい男になったな」 「――――・・・っ」 イナリはもう言葉にならない。 (・・・まーた、誑してやがるし、めんどくせー・・) そんな二人のやり取りを、少し離れた場所で見物していたシカマルが呟く。 「タズナはどうしている?」 「じーちゃんなら、しぶとく今でも職人やってる」 「そうか、元気か」 「六代目の名前を噂で聞いたときには、凄く嬉しそうにしてた。儂の目に狂いは無かったって!」 ナルトが喉を鳴らして笑う。 タズナは出会った当初は、『ちびでドベ』なナルトを一番の役立たずと評価していた。 「―――― 歓談のところを失礼」 二人の視線を受けて、割って入った相手が軽く頭を下げた。 「――― それがわかっているなら、邪魔をするな、と言いたいが」 遠慮ないナルトの言葉にイナリのほうが驚く。 「同盟国だろう、邪険にするな」 相手の言葉もかなり遠慮ない。 そして、ナルトがにやりと笑った。 「久しぶりだな、――――我愛羅」 いつも背に負っている瓢箪は無く、黒の着物で正装している様は別人のようだったが、浮かべて いる表情はいつも通りの無表情。守鶴のための不眠症の表れである隈は、制御する術を得たから か・・・幾分薄くなっている。 「何をしていた?」 「いきなりだな」 イナリに構わず、話始めた我愛羅に苦笑し、忍専用の遠話に変えた。 「お前ならばもっと早くなれたはずだろう」 「我愛羅。俺には俺の事情というものがある。・・・それより、お前がここに居ることのほうが俺には 意外に思えるが?」 「任務以外の理由があるか?」 「確かに。―――- あまりに珍しい格好をしているからな」 「・・・・・・・」 僅かに顔を歪める・・・・本意では無いらしい。 「―――それで?果たせたのか?」 「・・・ああ、それなりに」 「お前も割りと貧乏くじだな」 我愛羅の任務のだいたいのところを察しているナルトはくつくつと笑う。 「・・・・誰のせいだと・・・」 「俺のせいだな。―――― 嬉しいだろ?」 「・・・・・・・・・もう、いい」 背を向けて去っていく我愛羅に、ナルトは耐えられないと目を細めて笑った。 |
どんどん原作からかけ離れていく・・・ま、いいかそれが二次創作だ(笑)
この長編ではナルトが大人しいですね・・・そのうち暴れ出しそう・・(笑)