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「ああ、そう言えば」
「あ?」

 街道沿いの甘味処。人並みに甘いものが好きなナルトの要望にしたがって、入店した二人。
 人並みに甘いものが苦手なシカマルはコーヒーをすすりながら、煎餅をかじる。
 その目の前で、ナルトはチョコレートケーキが一つどーんと乗っかったパフェを食している。
 ・・・見るだけで胸焼けしそうだ、とシカマルは視線をそらしていた。
「いつだったか、お前、うちの馬鹿親父の霊につかれて甘味処に入ったことがあっただろう?」
「・・・いつの話だよ・・・」
 もう五年になる。
「あのときイノに偶然会っただろ?後で不審がられなかったか?」
「今ごろ聞くなよ・・・何か妙な薬を持ってこられて大変だった・・・」
 そのときの苦労を思い出したのかシカマルの顔がげっそりとやつれる。
「くっくっくくく・・・」
「誰のせいだと・・・」
 うんざりした顔のシカマルの前で、ナルトは上機嫌に最後の一口を口に運んだ。
「なかなかの味だったな」
「よく食うな・・」
 ナルトはにっと笑った。













 招待されていた城にたどり着いて、ナルトはその大門を見上げた。

「・・小さいな」
「おい」
「まぁ、里のがちょっとおかしいくらいでかいだけなんだが・・・」
「まぁな」
「公の入り口はあそこだけだから、監視するにはいいが、穴あるからなぁ」
 よく抜け出して遊んだし、と今さらの告白に乾いた笑いが聞こえる。

「そこの者!」

 何事か門の前で小声で話すばかりで、動かない怪しい二人連れ・・・もちろん、言うまでも無く、
 ナルトとシカマルである・・・に門番が声を掛けて来た。

「怪しい奴ら。城に何用か?」
 棍棒を突きつけられる。
 ナルトはその先を形のいい爪でつつくと、苦笑した。
「何用、て言われてもね・・・用があるのはそちらなんだが?」
「なに?」
 傘で顔の見えない二人に門番は不審を募らせる。
「おい、ナルト。・・・めんどくせーことするなって」
「め・・めんどっ!?」
 シカマルの言葉に門番のほうが反応する。
「シカマル。お前のせいで怒ってるぞ」
「・・・・・・俺が、何をしたって・・めんどくせー」
 いかにもやる気の無さそうなシカマルに、馬鹿にされたと思った門番の顔が真っ赤になる。
「貴様ら・・・っ」
 突き出された棍をひょいとかわし、身を乗り出す勢いを利用して足を払う。
 門番は一回転して背中がら地面に打ち付けられた。
「おいおい、少しは容赦しろよ」
「シカマルのせいだろ」
 門番の頭上では責任のなすりあいがなされている。
「・・・っこの」
 もう許さんと呼子を鳴らそうとした門番の前に、ひらりと白いものが晒された。
「・・・・??」
「城主の招待状。中に入るぞ」
「・・・っ!?」
 目を白黒させた門番は、確認する暇もなくしまわれたそれに慌てて立ち上がり、すでに門の中へ
入っていこうとする二人を追いかける。
「ちょ・・ま、待て・・いや、お待ちください!」
「何か?」
「今一度、お改めさせて下さい!」
 仕事熱心な人間である。
 わざわざ最初から波風を立てることも無いだろう。
 ナルトは懐からそれを取り出す。透かし模様の入った和紙はそれだけで高級品であると知れた。
「・・・間違いなく。失礼致しました。ご案内を・・・」
 誰か、と呼ぼうとする門番を片手で制し、ナルトは首を振った。
「構わない。場所はわかっている」
「左様でございますか・・?」
 不思議そうな門番に今度こそ完全に背を向けて、二人は歩き出した。

「・・つーかさ、他人の城の中を知り尽くしてるってのもどうなんだ?」
「シカマルに人のことが言えるか?どうせ下調べしてきているんだろう?」
「......」
 黙ったシカマルに、くくっと喉を鳴らした。
「とりあえず、城主に挨拶してくるか」
「・・・だな」
 二人の姿は一瞬にしてその場から消えた。


 それをぼんやり見ていた門番は、狐に化かされたかと腰を抜かした。
 ―――― 当たらずとも遠からず、というところだろう。











   

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