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里から招待を受けた城まで、普通の行程で一週間。 ナルトとシカマルには一日もかからずにたどり着く距離ではあるが、急ぐことも無い。 適度に手を抜きつつ、ほとんど物見遊山で旅路を楽しんでいた。 「よく考えてみると、俺あんまり火の国で仕事したことなかったからなぁ」 ナルトは呟く。 5歳の頃から暗部に所属するナルトは、国外任務が多く火の国の任務と言えば、ドベを装っていた下忍時代にやったものがほとんどだ。しかもどれもCかDランク。 「そういえば。そうだな・・・」 シカマルも同様らしい。 「それだけ火の国の情勢が安定してるんだろうが、水の国なんか一時期暗殺任務が克ちあって同士討ちやってたからな」 「マジかよ・・・」 めんどくせー、とシカマルの口からお決まりの台詞が漏れる。 「――――てちょっと待て。何でそれをお前が知ってんだ?」 「丁度任務が終わって帰る途中だったから、術の研究に見物してた」 「・・・・・」 「他里の術ってそう表に出てこないし、手に入れにくいからな。任務のときは、即殺するほうが多かったから研究しようにも出来ないし・・・色々苦労したなぁ」 その苦労を思ってかナルトを遠い目をしつつも、にやりと口元に笑みを浮かべた。 苦労というよりは、楽しんでいたようにしか思えない。 「・・・・・」 忍術マニアなところは昔からだったのかと、シカマルはげっそりする。 ナルトの新術の実験にしばしば付き合わされる身としてはあまり喜べない。 「ところで、火の国の名物って何?」 「・・・・・・・・・・・・は?」 里一の頭脳と誉れ高いシカマルも急な話題転換についていけない。 「やっぱりシノやネジたちに土産が必要だろ?・・・何かえらく不服そうな顔してたしな。こんな任務の どこが羨ましいのか俺にはわからねぇけど」 「・・・・・・」 任務ではなく、ナルトと『一緒』という部分が羨ましいのであって・・・・・・そう、お供に選ばれたシカマルは盛大に恨まれたのである。確かに土産の一つでもなければ、酷い目にあわされるだろう。 例えば、一晩中虫の羽音に苦しめられる、とか。 例えば、白眼で一日中監視される、とか。 「・・・・温泉饅頭、くらいか・・・・?」 「温泉饅頭ぅ?シカマル、ジジくせー」 「・・・ほっとけ」 けらけらと笑うナルトを、誰のせいで苦労してんだと無言で睨む。 「んじゃ、俺は炭酸煎餅にしとこう」 どっちもどっちだ。 「そういうわけで。土産買わないとダメだからな・・・用があるなら」 ――――― さっさと出て来い。 ナルトの言葉に、忍の気配が生まれた。 二人の前に、膝を折る。 その額当てに彫られたマークは、岩隠れのもの・・・に一文字の傷。抜忍だ。 「六代目火影、うずまきナルト殿とお見受けいたします」 「―――さてな」 傘の下から、ナルトは空惚ける。 「主より書状を預かっております―――・・・」 だが、相手は構わず続ける。 「抜け忍に主?」 嘲笑するような笑いが漏れた。 組織を抜けた忍。だが、大概彼らは再び組織へと属すことになる。 ――――命令されることに慣れた忍は容易くその楔から逃れることは出来ない。 「俺にそれを受け取ってやる義理は無い」 「――――”椿”を添えて」 「・・・・・顔洗って出直して来い」 張り詰めた低い声で告げたナルトは、忍の前を通り過ぎる。 よくわからないままシカマルも続いた。 「主に代わって、お祝い申し上げます」 ナルトは振り返らない。 傘に隠れる顔からはシカマルでも表情を読み取ることは出来ない。 それでも気配が尋常になく尖っていた。 (――――・・・”主”とやらを知ってるのか・・・・?) シカマルが他人よりもナルトのことを知っていると言っても、それは所詮ナルトが『ここまでならば』と許している部分に過ぎない。 おそらく知らないことのほうが多い。 その知らない『部分』に触れるのか・・・。 そもそもの謎は、何故ナルトが『火影』になったのかという部分にもある。 シカマルは口には出せない疑問を、無関心という仮面で覆い隠していた。 もっとも、ナルトには知られているだろうが・・・。 (・・・めんどくせー・・けどな) シカマルは横を歩くナルトを見る。 「何だ?」 「いーや」 聞きたいことはあるだろうに、一言で終わったシカマルにナルトはくつくつと喉を鳴らす。 「心配するな」 「してねーよ」 どのようなことをナルトが考えているにせよ。 それは、シカマルにとって何より優先すべきことであることに変わりは無いのだから。 |
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短編は日々思いつくまま書いているので少し設定が
違っていたりもするのですが、イタナルから火影ナルトは
一つの大きな設定の中にあるお話です、実は(笑)
≫幼年時代(イタナル) ・・・第一部
≫カカナル出会い話 ・・・挿話
≫下忍・中忍時代(総受け) ・・・第二部
≫火影襲名話 ・・・挿話
≫火影時代(総受け) ・・・第三部
まぁ、こんな感じで小説は流れていっておりますので
この順で読んでいくのが、御華門のおすすめですv
というわけで、この『黄金の夢』は第三部のプロローグ部分。
これから色々ごちゃごちゃする予定です(笑)