『愛しているから』 そのナルトの言葉の意外さにカカシを含めた皆が言葉をなくした。 「信じられないか?まぁ、そうだろうな。俺だって自分の正気が信じられないほどだ。この俺を迫害し続けた 里のことを愛しているなど」 「・・・・どうして?」 「さぁ?俺にもよくわからない。死ぬまで憎み続けてやるつもりだったんだけどな」 サクラの問いにナルトは肩をすくめた。 「だったら・・・だったらどうして、愛してる、なんて言えるのよっ!」 「・・・・・」 ナルトは、穏やかな微笑を浮かべた。それは春どけの泉のように暖かい・・・ 「守り、導きたいと思った。死なせるのは、嫌だと思った」 「・・・・・・・・・・」 静かに語るナルトに、ナルトの中忍としての評価を思い出した。 彼が隊長として忍たちを率いた時は一人の死者が出ることもなく、全員が里に帰還している。 100%の生還率。初めこそ偶然だと思っていたそれは、回を重ねても崩れることはなく、まさに 奇跡だと言われていた。 ナルトの有能さと強運に、誰もがその下で働くことを望んだ。 何故あれほどの忍として有能でありながら、中忍のままでいるのか誰もが疑問に思っていたのだ。 「上忍になるのは俺にとって大したことじゃない。中忍で居たほうが利が多かった」 「利?」 「木の葉の忍のレベルの把握。その底上げ。俺に対する忠誠心・・・・例えば、そうだな。お前たちカカシに 里の将来をたくせるか?」 皆は一斉に、いっそ見事なほど首を横に振った。 「・・・酷いなぁ」 さすがのカカシも口元をひきつらせる。 「里を治めるには強さだけでは足りない・・・・さて、サクラ。もう一度お前に聞く」 「俺に、従うか否か」 火影の執務室へと続く廊下を一定の速度で歩いていくナルトに、はりつくように、にこにこしたカカシが 続く。その不気味さに、誰も彼らに近づこうとする者は居ない。 ここ最近、執務室には毎日のように顔を出していたナルトだが、こうして正面から向かうのはそうある ことでは無い。だいたいこっそり侵入していたのだから。 だが、一応上忍昇格の辞令を提出する、という意味で正面から訪れなければならなかった。 「何をついてきてんだ。鬱陶しい」 「ふふふ、だって嬉しいんだも〜んvナルトが、『愛してる』だ、なんてなv」 「その笑いは不気味だからやめろ。だいたいそれはお前に向けられたもんじゃないだろ」 「でも、里をってことはちゃーんと、俺も数に入ってんだよねvv」 ナルトは足を止め、カカシを振り返った。 その顔には絶対零度の微笑が浮んでいた。 「馬鹿だな。本気にしたのか?」 「え!?」 「俺が本気でこの里を『愛している』とでも?くくくっ、お前も大概能天気に出来てるな。上忍がそんなに 他人の言うことを信じていいのかよ。平和ボケか?」 「・・・・・ナルト」 「――― て、言ったらどうする?」 「へっ!?」 「冗談だよ、ジョーダン」 「は!?」 「じゃ、な」 目を白黒させるカカシを置いて、ナルトは姿を消した。 残されたカカシは呆然と呟く。 「・・・・どっちが」 どちらの言葉が『冗談』なのか・・・・相変わらずナルトに振り回されるカカシだった。 |
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