それはかつて知っていた”ナルト”と同じ言葉だった。 けれど全く、違う言葉でもあった。 なぜならそれは仮定では無く、絶対的な断定だったからだ。 馬鹿な、と笑うことも出来ないほどに。 「今まで中忍にくすぶっていたのは、里のジジィどもばかりのせいじゃない。俺が中忍であることを望んだ からだ。・・・火影を頂点とするヒエラルキーを礎とするこの木の葉の里で、本当の意味で生活を支えて いるのは、中忍以下。たとえどんな実力がある上忍といえど、一人で相手をするには手に余る数の脅威 というものがある。・・・・俺が火影になるにあたり、確実に里の上層部は反対の姿勢を示すだろう。俺には その反論を封じるに足る力を手に入れた」 では。 「・・・中忍たちを味方につけるために・・・?」 ずっと中忍でいたのか。 「どんなに反対しようと望む意志が強ければ、ジジィどもの口は封じられる。半分棺おけに足を突っ込んだ ような輩、排除しようとすれば簡単だが、後でバレると厄介だからな」 「相変わらず、ご意見番たちのこと嫌ってんのね、ナルト」 「あいつらも俺のことを嫌っているから、あいこだろ」 カカシと軽口をたたき、ナルトは四人へ視線を向けた。 「そいういうわけで、俺に敵対するというのならば今ここで・・・・・・・・・・・始末する」 ピン、と空気が張り詰めた。 「・・・・今すぐにそれを決めろ、というのか?お前の実力も知らないのに」 かすれた声のネジにナルトは薄く笑う。 「それが必要か?・・・・上忍になっても相手の実力が測れないか?」 馬鹿にしたように言われ、悔しげに口を閉じる。 ネジだとてわかっている、目の前の相手の実力が自分などゆうに凌駕していることなど。 だが、目の前に居るのは『ナルト』なのだ。 ドベで、間抜けで、お人よしな・・・・今までずっとそうであった『ナルト』をすぐに消し去れといわれて出来る ものでは無い。その落差が激しければ激しいほどに・・・。 「お前は大体昔から難しく考えすぎる」 懊悩に自然と頭が下がっていたネジは、ふと目の前のナルトに視線を戻した。 金髪碧眼。同じ容貌でも中身の影響で印象がこれほどに違う。春の陽光にも思えた雰囲気は、今や 冷え冷えとした鋭い金属を思わせる。 「・・・・・・・」 「敵か味方か、二つに一つだ。理由など後からついてくるものだ。本能で選べ」 脅迫まがいの傲慢なものいい。普段のネジなら、こんな言い方をされれば反発を覚えるだろうに、 何故か不思議と・・・・心が震えた。 「・・・味方となって・・・・どんな、利が・・俺に、あるという?」 「何者にも束縛されぬ人生を」 「・・・・・・」 笑みを浮かべたナルトは・・・誘惑する悪魔のように見えた。 ネジは知らない。視界に隠れるように、カカシが肩をすくめ、内心で『うう、タラシモードに入っちゃって〜 またライバル増えちゃうじゃないか〜』と嘆いているのを・・・。 「俺の側につくな?」 形こそ疑問形だったが、それは断定だった。 「・・・・・・・・高く、買え」 自分は高い、とネジなりのプライドの高さが”味方”であるとは言わせない。 それに構わず、ナルトは満足そうに頷く。 「もちろん・・・・だってばよ?」 「・・・・・・」 昔の口調が嫌味に聞こえる。 「・・・で、サクラ、ヒナタ、キバ。お前たちはどうする?」 サクラが口を開きかけ・・・閉じた。 「あ・・・あたし、は・・・・」 意外なことに、真っ先に口を開いたのはヒナタだった。 「ナ・・・ナルト君のこと・・・信じてる、から・・・だから」 隣に立つ、サクラが驚きに目を見開いてヒナタを見つめる。 「だから・・・ナルト君が火影になるって・・いうんだったら・・・お、応援する・・・」 『応援』・・ときたか。 ナルトは内に沸き起こった笑いの衝動を、無表情で押しとどめた。 「・・・シノやシカマルは・・・て、聞くまでもねーな」 キバががくり、と肩を落とす。思い返してみれば、あの二人は昔からやけにナルトの傍に居た。 シカマルは悪がきのノリだと言えても、シノの行動には疑問を持つべきだった。 「俺は・・・そうだな、別に敵にまわる理由もねぇし・・・味方になってやってもいいぜ?」 「なってやっても?・・・くく、まぁせいぜい役に立ってくれることを願う」 「っお前な!・・・・ああ、せいぜい励んでやるよ!」 ふてくされてそっぽを向いたキバを笑い、ナルトの視線はサクラへ注がれる。 二つの精神を持つ彼女は、感情的でありながらどこまでも状況を冷静に判断できる。 ナルトにつくのが損か得か・・・・すでに判断できているはずだ。 「・・・・あたしは・・・・・」 確かにナルトは火影になるだろう・・・しかし。 「・・・あたしの立場を決める前に、ナルト。一つ聞かせて欲しいの」 「どうぞ」 「あんたは・・・ナルト、あんたはどうして、火影になりたいの?自分の力を認めさせたいて言ってたけど・・・ 今のあんたなら別に火影になるまでもなく、皆認めると思うわ・・・どうして」 「どうして?・・・・・・滅ぼすため、とでも言って欲しいか?」 「!!」 サクラのみならず、カカシを覗いた全員が凍りついた。 「じょーだん」 「っナルト!!」 「・・・・るから」 「えっ!!」 あまりに小声で呟かれ、聞き取れなかったサクラがからかわれた腹立ちまじりに聞き返した。 「愛シテイルカラ」 コノ、里を。 |
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イタナル話が根にあったりましす。
その頃のナルトと比較して・・・精神的な成長を
遂げたのが今のナルトです。