「上忍昇進、ご苦労さん」 手土産に雷の国の幻の名酒『雷光』を携えて、ナルトにそんな言葉をかけたのは、暗部の一大隊を 任せられている奈良シカマル。随分と頼りがいが出てきて、その才能を惜しみなく発揮していると 評判だ。その隣に黙して座すのは、同じく若手有望株の油女シノ。 「雷影は元気にしてたか?」 「・・・殺しても、死にそうにない」 ぼそり、とシノが告げる。 「確かにな」 「抜けるならいつでも世話するって誘われたぜ・・・メンドくせー」 「相変わらずのようだ」 ナルトはくつくつと笑った。 シカマルとシノは下忍の頃からナルトの裏を知っていた。付き合いは今でも続いていて、ナルトの家へ あがることを許されている数少ない人間のうちの二人である。 「ああ、そういえば・・・あいつらにバラしたからな」 「あぁ?・・・げ、メンドクセーことになりそうだな」 「・・・・・・・・」 「あ、こいつ今、別に自分は関係ねぇとか思っただろっ!」 「・・・・事実、関係ない」 「ま、そうだな。何で黙ってたんだと迫られるのはシカマルだけ」 「だーーっ。マジにメンドクセー・・・」 イノが『何で黙ってたのよっ!』と青筋浮かべて詰め寄る姿が容易く想像ができ、シカマルはがくりと 肩を落とした。 「・・・いよいよ、なのか?」 シノに問われ、ナルトは微笑を浮かべた。 「一週間後に火影が長老会議を招集する。上忍も呼ばれるだろうから、お前たちも準備しておけ」 「・・・・待ちかねた」 感情を露にしないシノの意外な言葉に、ナルトはにやりと笑う。 「六代目火影・・・・こき使われそうだぜ」 「ああ、覚悟しとけよ?」 「すでに」 「とっくに」 返ってきた言葉に、ナルトは笑う。滅多に見せることのない、嬉しそうな笑顔だ。 シノとシカマルはその笑顔を見ることが出来たただけで、これまでの苦労も、これから訪れるだろう面倒も 全て報われる思いがした。 何のかんの言っても、二人ともナルトに参っている連中の一人であることに違いは無いのだ。 「・・・・何か、もう驚きを突き抜ちゃった・・・・」 「そうよねぇ・・・ずっとあたしたちと同じ中忍やってたし・・・」 薄暗い広場で肩を並べるのは、イノとサクラ。犬猿の仲の二人に見えて、実はかなり気が合う二人。 サスケのことが無ければ、元々親友と呼べる二人だったのだから。 「同じ班だったのに・・・・」 「サクラ・・・」 うつむく相手に、イノは同情的な眼差しを向けるが・・・。 「・・・・・まんまと騙されてたんだと思うと・・・無性に腹が立つわ!!」 しゃーんなろーっ!と内なるサクラが拳を握る。 「・・・・・あんた、図太いわね・・・・・」 「図太くなくちゃ情報部なんていられないわよっ!もうっっナルトの奴っっ・・・・っそんなに、あたしたちって 信用できなかったのかってのよ!」 「確かにねー・・・あたしはあいつとあまり接点ないし、シカマルが知ってて黙ってたことのほうが腹立ってん だけど・・・でもねぇ、同期のドベだとばかり思ってたナルトが火影様並に強いなんて・・・」 現火影であるツナデは、イノにとって最も尊敬するくの一であり、目標だ。 ただ憧れていた下忍のころよりは、近づいたとは思うけれど、まだまだ遠い目標。 イノとは少し違うが、『火影』を目標とするナルトに、親近感を抱いていたことは確かだ。 「「・・・でも」」 二人の言葉が重なった。 同じ条件に立っていたのは、シノもシカマルも同じはず。 気づけなかった差。 結局、大多数がつけた『ドベ』という色眼鏡を、自分たちは外すことが出来なかった。 「私たちも」 「まだまだってことでしょー」 ベンチに手足を投げ出し、空を仰いだ。 |
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