-美しきもの-
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気づけば、鳥の声も獣の気配も感じなくなっていた森。 風だけが木々の葉を揺らし、音を立てている。 クラウドは気配を慎重に探りながら、ゆっくりと進んでいた。 森に残る、獣では無い足跡、折れた小さな木の枝・・・ニブルヘイムの深い山の中で育ったクラウドにとってそれらを見つけることは難しいことでは無い。 キ ケ ン !! 本能が警告するまま、クラウドはサブマシンガンを目前に翳していた。 凄まじい力、至近距離で見た魔晄の瞳には一切感情が浮かんでいなかった。 ぞくりと背筋が粟立つ。 「ぐ・・っ」 強化の魔法をかけていた銃に皹が入る。もうもたない。 クラウドは攻撃されたと同時に詠唱に入っていたサンダーを相手との間に落とすと銃を捨てて後方へ飛び退った。相手からは目を離さない。・・・サンダーなど大した効き目が無いらしく、僅かに手を振りマシンガンを粉々に砕いてしまう。 (馬鹿力め・・・っ) 人工的な魔晄の瞳にはどんな感情も浮かんでいない。ただ、闘争心や破壊欲があるのみ。 クラウドは腰のホルダーから、軍用ナイフを取り出すと構えた。ソルジャーと同様の力を持つ相手に全く意味をなさない武器ではあるが、クラウドとてそれで相手とやりあう気は無い。 クラウドの役割は、相手をおびき出し時間を稼ぐこと。 そして、死なないこと。 「避けろ、クラウド」 強い魔力の気配に、クラウドは横に己に出来うる限り遠くへ飛んだ。 その瞬間、薄暗い森を真っ白に染めつくす雷光が天から落ちてきた。 閃光から目を守るために半眼にしていた目をそっと開くと・・・ぷすぷすと音をさせながら黒こげになった物体が一つと、雷の名残を残す周囲の木々たち。 「あーあ、真っ黒に焦げちまって・・・」 捕縛どころか、これだけ焦げていると回収することさえ至難の業だろう。 「英雄さん、手加減ってもんを覚えたほうがいいと思うんだぞっと」 レノの抗議にちらりとも視線を向けず、セフィロスはクラウドに近寄った。 「腕を」 「は」 「傷めただろう」 「・・・これくらい」 治癒魔法がクラウドの腕から痛みを取り除いていく。 「痛みは動きを鈍くする。良くやった」 「いえ、そんな…。ありがとうございます」 「残りはあと二体なんだぞっと。一体ぐらいは確保して欲しいなぁ」 「貴様がやれ」 先ほどからギャラリーと化しているレノに、セフィロスの言葉はどこまでも冷たい。 「行くぞ、クラウド」 「は、はいっ」 ずんずんと何処に向かっているのか、クラウドとレノはただその後に続くだけ。 どこへ行くとも告げず森の奥へ進み、足を止めた。 「残った奴にはそこそこの知能があるらしい。気配を殺してこちらの様子を伺っている」 「それでどうするつもりなんだぞっと。英雄さんには考えがあるんだろ?」 レノの問いにセフィロスは冷たい微笑を浮かべた。 「呼ぶ」 「・・・は?」 「おいでおいでと呼ぶのさ」 くく、と笑うセフィロスの言葉の意味をレノもクラウドも全く理解できなかった。 「ひとまず、待て。警戒を怠らぬようにな」 それ以上の説明をする気が無いセフィロスにレノは肩をすくめ、クラウドは素直に待つことにした。 「クラウド。立ち位置から半径1メートル、それがお前の許された位置だ。そこから動くな」 「はい」 「はいはーい!英雄さんっ俺は俺はっ?」 「勝手にすれば良かろう。生きるも死ぬもお前が持ち込んだ騒動だ」 「うえ゛」 そろそろとレノがクラウドに近寄る。 あわよくば自分もセフィロスの結界に守ってもらおうという魂胆だろう。 「・・・あ」 「ん?」 突然耳を押せたクラウドにレノが首を傾げる。 「・・・いえ」 何でも無いと言った風に首を振ったクラウドにセフィロスが微笑を刻んだ。 「感知能力も高いのだろう。・・・ふふ、色々楽しませてくれる」 上機嫌な英雄さんってのも気持ち悪いんだぞっと。 レノは心の中のみで呟いた。 |
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