-美しきもの-
・・・・ 7
セフィロスは『呼ぶ』と言った。 そして言葉通り、セフィロスは呼んでいたのだ。 クラウドはセフィロスに指示された場所から一歩も動かず、森の闇の中から現れる”モノ”を見た。 何かに操られるように、ふらふらと歩いてくる。 先ほどまで感じていた殺意や敵意の欠片も無い。まるで。そう 彼等は、無造作に立っているセフィロスへと近づいて行く。 森の中にあってさえ、その姿は周囲から際立っている。 ぼんやりと光って見えるのは、何かをしているのか。 セフィロスが正宗を構えた。 「ちょっ・・・!」 背後でレノが焦っているが、セフィロスは構わない。 『・・・一つ、に・・・』 「レプリカなど、不要だ」 無造作にその尋常ならざる長さの刀をそれらに振るった。 「あー・・・っ・・・・くそっ」 レノが地団太を踏んでいる。 そして、奇妙なことに一刀両断された彼等は崩れ落ちるとそのまま血を流す屍と化すのではなく、光の粒子となって消えてしまった。 まるで何も無かったかのように。 クラウドは一歩踏み出した。 微動だにしないセフィロスに近づいて行く。 そして、手を伸ばせば届くところで立ち止まった。 「サー」 セフィロスの背中を見上げる。 「サー・・・セフィロス」 ちりちりとした緊張感を誤魔化しながら、クラウドはセフィロスの目の前に移動した。 静まりかえった森。 「・・・大丈夫、ですか?」 何故か、クラウドはそう口にしていた。 白刃がクラウドの目の前に突きつけられている。 僅かでも身動ぎすれば、その鋭い刃はクラウドの肌を切り裂くだろう。 「・・・逃げないのか?」 セフィロスが問いかける。その意味がわからず、クラウドは首を傾げた。 「俺が怖くないのか?」 「・・・馬鹿ですか?」 思わず返してしまったクラウドにセフィロスが目を瞠った。 その表情にクラウドも我に返る。 上司に『馬鹿』は無いだろう。『馬鹿』は。背中に冷や汗が流れる。 「えっ・・・・と、その・・・っそう!サーは、敵ではありません」 何とかフォローしてみる。 普通ならば叱責の一つでも飛んできても当然のところだが、それを覚悟して首を竦めたクラウドに返ってきたのは森に響き渡るような セフィロスが爆笑している。 そんな姿を見るのはクラウドにとって初めてだった。(もちろんそれはクラウドだけでは無いのだが・・) 「そうか・・・くっくっ・・・敵ではない、か」 クラウドの何がそこまでセフィロスの笑いのツボをついたのかはわからない。 だが先ほどまで周囲を包んでいた緊張感は霧散していた。 正宗を鞘へと収めたセフィロスは、クラウドを見下ろすと元気よく跳ねている髪に触れた。 「クラウド。俺はお前の敵では無い。では何だ?」 「・・・・・・サーは、俺の上司です」 そして、神羅一・・・否、もしかすると世界で一番強い戦士だ。 敵になれば、確かに恐ろしい存在だろう。 だが、上司だ。 セフィロスの手が頭から離れていく。 「・・・恐ろしいものなど、何も無いと思っていたのだがな」 呟きのように落とされた言葉にクラウドが顔を上げる。 「片付いたな。さっさと帰るぞ」 「・・・イエス・サー」 「おいおいっ二人の世界を作るのはいーけど、手伝うんだぞっと!」 確保した脱走兵二人をずるずると引きずってくるレノ。 「それはお前の仕事だ」 「・・・確かにそうなんだぞっ!」 何かを諦めたのかレノはやけっぱちに言い放った。 |
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セフィロス、ヘタレ疑惑・・?(笑)