-美しきもの-
・・・・ 5
緊張がじわりとクラウドの背筋を冷たくする。 脱走兵の瞳。縦長の瞳孔。人ならざる者の瞳。常人ではありえない身体能力。 それが意味するものは? 「クラウド」 「!」 呼びかけられたクラウドははっと目の前を行くセフィロスの背中を見上げた。 「気をそらすな」 「すみません」 一番の足手まといであるクラウドが迷惑を掛けてどうする。恥じる思いで気を引き締めた。 「英雄さんは厳しいんだぞ、と」 軽口を叩くが、レノの視線は周囲を油断なく探っている。 「何に気づいたとしても」 「・・・・?」 クラウドはセフィロスの背中を見上げた。 「黙して語るな。それがお前の命を守る」 「・・・・・・」 クラウドが気づいたことにセフィロスが気づかない訳も無い。 否、こうなる前からセフィロスは何かを知っていたのか。 どちらにしろクラウドに話すつもりは無いだろう。そして、クラウドにそれを聞き出す権利は無い。 クラウドは一瞬目を閉じると、再び開いた蒼は揺らぎ一つ無く、澄みきっていた。ソルジャーの有する魔晄の色では無い。母なる蒼の色。 「容赦は必要無く、する余裕も無い。そういうことで良いですか?」 レノが息を呑み、セフィロスは満足そうに笑みを浮かべた。 「ああ。それで良い」 「アイ・アイ・サー」 クラウドの金の髪の鮮やかさが増したのは、気のせいだろうか。 (・・・ただのお人形さんじゃ、無いんだぞっと) タークスならずとも、密やかに囁かれているそれを知らない人間は少ない。 けれど、レノは不思議だった。レノが知っているセフィロスはおよそ人間に興味を持っていない・・・いや、何にも興味を持っていない、感情を持たない無機物だった。夥しい死の中でさえ、セフィロスの感情には一点の揺れも無かった。 英雄というよりは、『殺す』という命令だけを与えられた人形(マリオネット)。 それが久しぶりに基地でセフィロスを見たレノは・・・その顔に浮かんでいる『感情』に内心で驚愕していた。 初めて、セフィロスを『生き物』だと思った。 そしてセフィロスを、物から人に変えたもの。それが・・・・・・ 「って、置いていかないんだぞっっっと!!」 レノは小さくなっていく背中を追いかけた。 あと三人。 戦闘と魔法の気配を察知したのか、仕掛けてこようとはしない。 けれど、こちらを伺うような気配は感じるのだ。 セフィロスは足を止めると、思案するように視線を奥に注ぎ、クラウドを見た。 どうやら、何かを思いついたらしい。 高い身長を屈ませてクラウドの耳元に囁く。 目を見開いたクラウドは…静かに頷き、セフィロスも好戦的に口元に笑みを刻んだ。 二人の世界に入ってしまったようにレノはひたすら無視されている。 (別に、いーんだぞ、と・・・) 「クラウド、以前与えたリングは持ってきているな」 「はい」 クラウドはリュックの中からミネルバリングを取り出した。 「では、このマテリアを装着しておけ」 「はい」 二つは以前つけさせられたのと同じ回復系。もう一つ、これは・・・・ 「お前の魔法力はザックスなどより余程上位レベルだ。使えるようだったら遠慮なく使って構わん」 「・・・・・・はい」 マテリアの使い方などクラウドは教わっていない。けれど触れただけで何のマテリアか感じられるほどに魔力がある。それは適正値が高いということだ。 (・・・有り得ないんだぞ、と) 入社したばかりの兵士に、しかもこんな幼い人間にマテリアを使用させるなど、暴走させろと言っているようなものだ。それほどセフィロスがクラウドの能力を認めているのか・・・それともまさにその暴走させることが目的なのか・・・・ウータイ時代の冷酷無情のセフィロスならば、レノも後者であろうと確信したのだろうが。 (よくわからなくなってきたんだぞ、と) レノは漸くその存在を思い出してくれたらしいセフィロスに視線で呼ばれて近づいた。 |
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
んーザックスが居無いから、本来ならザックスが担当する
お笑い担当をレノがしてる(笑)