-美しきもの-

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 セフィロス付きの下士官といえど、兵士の一人であることは間違いない。日々の事務・実務作業を
こなしながら、兵士としての訓練にも参加しなければならない。周囲の人間にしてみれば、クラウドの
立場は羨望の的でしか無いのだろうが、起きている間は常に動いていなければならないような
ハードな日常が果たしてそれほどに『良い』ものとはクラウドには思えない。
 まぁ、それを覚悟して受けいれたクラウドに文句を言う気はさらさら無いが。


「はい、ザックス」
 珍しくもセカンドの待機所兼オフィスに顔を出したクラウドは、窓際でぼーとしていたザックスにつかつかと歩み寄り、そのデスクの上に・・・・
「・・・・・・・・何でしょうか、コレ?」
 どーんと置かれた書類の山をザックスが嫌そうに指差した。
「向こう一年間、あんたが溜めてた報告書やら始末書諸々。ちゃんと済ませろよ」
「は!?・・・え?無理!無理無理!!」
 いつまで経っても一本指打法から成長しないザックスに書類整理など、ミドガルズオルムに一人で挑んで来いといわれたほうがどれだけ楽か。
「皆やってることだろ。戦闘力はファーストのくせに未だにセカンドなのは事務面が著しく劣るからだって、サー・セフィロスに聞いた」
 あのクソ旦那めっ余計なことをクラウドに!!!
「いや、それはまぁ、その・・・勘弁してくれって!!これやらなきゃファーストになれねーっつんだったら、別に今のままでもいいし〜〜・・・」
 ぎろり、とアイスブルーの瞳で睨まれてザックスの語尾が消えていく。
「ザックス。オレね、セフィロスの下士官なんだ」
「・・・・・そうだな」
 今さら何を。
「ザックスの上司は?」
「・・・・・・・・旦那?」
「そうそう」
 まるでよくできました、とでも言うようにクラウドが相槌を打つ。
「つまり、ザックスの上司のセフィロスの下士官はオレなわけだ」
「・・・・・・・。・・・・・・・」
 途端に視線を逸らそうとしたザックスは、伸びてきた手に思いっきり頬をつかまれた。
「いっ!!!」
あ ん た が 溜 め て る この書類!!さっさと片付けてもらわないとオレの仕事も終わらないのっ!!以上!わかったっ!?
「はひっはひっ!!」
 漸く観念したザックスに、クラウドは頬を開放してやった。
「明日までにやっておくように」
「明日!?無理だって!死んだって無理!!無理〜〜っだって!神様仏様クラウド様っ!どうかオレにお慈悲をっ!!!!」
 平身低頭クラウドを拝み倒すザックスに・・・本当にこれがソルジャーなんだろうか、と・・・肩を落としたクラウドは、実のところザックスがこの量を明日までに終わらせることが出来るなんて思ってはいなかった。初めに無理を言って、妥協案を出す。これぞ飴とムチ。
「じゃ、週末まで。サー・セフィロスもそれが片付くまで、ミッションはお預けだって」
「はぁ!?」
「一応、古い順に並べておいたから。記憶を掘り起こしつつ頑張って」
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
 ザックスが山あらしと評された頭を抱えてデスクに突っ伏した。

「失礼しました」

 シュッ、と音をさせてクラウドが消えたセカンドの部屋では・・・他のセカンド・ソルジャーたちが呆気に取られていた。









「ご苦労だったな」
「いえ」
 セフィロスの執務室に戻ったクラウドは、己に与えられたデスクに腰かける。
 クラウドが下士官と決まり、セフィロスが運び込ませたらしい。
 ついでに、とばかりにドサクサ紛れにザックスがソファを持ち込んだ。
 それでも部屋は十分に広く、続き部屋の隣室には給油室と簡易ベッドも置かれている。
「調子はどうだ?」
「は?・・・・あ、はい。もう何ともありません」
 先日のミッションで容量オーバーの魔力を使ったクラウドは、3日意識が戻らなかった。
「お手数をお掛けして申し訳ありませんでした」
 意識が戻っても、しばらく足元がふらつくクラウドが通常任務に戻ることができたのは、それから一週間後、ザックスにもセフィロスにも迷惑をかけてしまった。
 他人に甘えることを知らないクラウドは、己の不甲斐なさが情けなく悔しくかった。
 足手まといにはならないように、と思っていたのに・・・
「何を言う。ドラゴンのブレスを止めたのはお前だ。十分すぎる働きだ。初めてのことで体が驚いただけだろう。次からは意識を失うことなく、使えるようになるはずだ」
 慰めや世辞などセフィロスには必要ない。ゆえに、それは全くの真実であったが、クラウドを納得させるにはいたらなかった。

 強く・・・もっと強く。
 
 強さへの執心。それこそが、クラウドを支えてきたもの。
 その思いつめた青い瞳を見ながら、セフィロスは口を開いた。

「どうだ、クラウド。オレと模擬戦をしてみないか?」
「・・・・・・・は?」
 いきなりなことに、クラウドの思考が追いつかずキーボードを打っていた手が止まる。
 そんなクラウドを、セフィロスは一癖も二癖もありそうな笑みを浮かべて背後に立てかけてあった
正宗を手にして、繰り返した。

「急なミッションも無い。・・・下士官の訓練をするのも上司の勤めだからな」
 さぁどうする?と促すセフィロスに、迷うようにアイスブルーの瞳が揺れたが・・・すぐに、それは強い輝きを放ち出す。

         美しい、瞳だ)

「お願いします」

 潔い言葉に、セフィロスは立ち上がった。












  



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これからセフィロスとクラウドの距離が縮まっていく・・・

・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・かもしれない(おい)