■ 天意、真に非ず ■
第三部
壱
光に視界を灼かれ、周囲の状態がわかるようになるまで暫く時を要した。 「・・・・ここ、は・・・・?」 だんだんと周囲の輪郭がはっきりしてくる。 陽子の翡翠色の目が、周囲に輝く星を見た。 ……目が慣れていないせいで点滅しているわけでは無い。確かに瞬いている。 否。 星では無い。 これは。 「……照明?」 無機質じみた白い部屋。 この世界に陽子がやってきて三十年余り。懐かしい、かつて過ごした文明の光だった。 いや、それよりも更に科学的な……まるでSFに出てくるような宇宙船の中身。それが一番しっくりくる。 四方に埋められた様々な機器が、その正常な動作を知らせるように光っている。 これは。 ・・・・・・・・・ここは、いったい。 『 何 』 だ。 「・・・主上。まるでSF映画に迷いこんだようですね」 陽子と同じ感想を抱いたらしい天麒が、吐息とともに溢す。 「 この部屋と、陽子たちの姿の何とちぐはぐしたことか。 天帝と天麒にしか入室できない部屋は、まるで宇宙船の中身のような……今まで馴染んできた世界とは正反対の部屋。まさか、この世界でこんなものを目にする日がこようとは。 信じられない光景に、動きを止めた陽子の脇を天麒が通り過ぎ・・・中央にあった一際強く輝き点滅している球体を覗き込んだ・ 「天麒・・・」 「主上、ご覧下さい」 招きよせられた陽子は、天麒と同じようにその球体を覗き込んだ 「……景麒?」 そこには転変した景麒が、雲海を走っている姿が映し出されていた。 「これは、何だ…?」 陽子が眉をしかめると、球体はまた別の像を映し出す。 空の玉座。それをじっと見つめている李斎の顔からは表情の一切が消えていた。 「李斎…」 天麒が苦しげに呟く。 それからも水晶は二人に関わりのある人物たちを次々と映し出していく。 「何だこれはいったい・・・何の真似だ・・・」 陽子が手を伸ばし、球体に触れた瞬間。 ぱっと光が弾け、・・・・・・目の前に人が浮かんでいた。 未来的な周囲と反して、陽子たちと同じような服装で風も無いのに黒く長い髪を揺らし、柔和な笑みを浮かべている。 延王というよりは利広に近い雰囲気の青年は、・・・半透明だった。 目を見開く二人に彼は、『ようこそ』と声を掛けてきた。 「……誰だ?」 それは陽子としては当然の問いだった。 『ああ、そうだね。私はずっと貴方を見ていたが…会うのは初めてだ。改めて。初めてお目にかかる、私の名は螺架(らか)。だが、あなたにはこう名乗ったほうがわかりやすいだろうか』 告げられた名に陽子は息を呑む。 ―――― 達王、と。 |
第三部出だしということで、ちょっと短いです。
・・・予定外に達王も出てきちゃってどうすんだ、と自分で思いつつ・・・(遠い目