<プロローグ>













 三日連続の野宿の後、三蔵一行はようやく宿のある街にたどりついた。

「これできれーなお姉さんたちの膝で眠れるぜ!」
「なぁなぁ!メシはメシ!!」
「どうやら4部屋とれるようですよ♪」
「・・・ふん」
 久々にきちんとしたベッドで眠れるとあって4人は知らず知らずのうちに気分が浮き
たっていた。
「八戒、必要なものを買い足しておけ」
 相変わらず傍若無人に言い放った三蔵はゴールドカードを手渡した。
「わかりました。それでは買い物が済んだら夕食にしましょう」
「オーケー」
「ええーっ!すっげー腹減ってんのにーっ!!」
「少しは我慢しろっ!」
 バシンッ!
 一人抗議する悟空をハリセンで静めると三蔵はさっさと己の部屋へ引っ込んだ。
「うー、三蔵のおーぼー」
 きゅるる・・と鳴るお腹を押さえて悟空が切なく訴える。
 それにほだされた八戒が保父さん魂を発揮した。
「悟空、買い物に一緒に行きますか?」
 買い物に行けば露店で何かを食べることができる。
「行くーっ!!」
 もちろんそれに悟空がのらないわけがない。
「俺はちょっと出てくるわ」
「あーエロがっぱ〜!」
「うるせっガキ!大人の男には必要なことなんだぜ〜♪」
「はいはい、喧嘩しないで下さいね〜。悟空、早く行かないと夕食が遅くなってしまいますよ」
「うわーっ!早く行こっ、八戒!」
 すわ一大事!と悟空は八戒の背中を押す。
 そんな悟空に苦笑する八戒と悟浄だった。









「それじゃあ、悟空。夕食にしますから三蔵を呼んできて下さい」
「うんっわかった!」
 買出しから帰ってきた八戒は荷物を部屋に置くと”夕食!”と目を輝かせる悟空に
そう告げて階下におりた。
 そこには、悟浄がちゃっかりテーブルについて八戒に手をあげている。

(遊び歩いてるわりに夕食にはきちんと帰ってくるんですよね・・・誰のためだか・・・・)
 八戒は悟浄の居るテーブルに座った。
「小猿ちゃんは?」
「三蔵を呼びに行きました」
 八戒は給仕の持ってきたお茶をすする。
「どーせ悟空の奴に色々買ってやったんだろ?」
「そんなことはありません。必要最低限の範囲ですよ」
「必要最低限ね〜」
「そうですよ。多少は色をつけましたけどね♪」
「多少?」
 多少の色が食料の3分の1とはおそれいる。
 それが底抜けの胃袋を満たすためとはいえ・・・。
「仕方がありません。悟空の我がままですから」
 悟空は誰にも彼にも我がままを言うわけではない。
 言っていい相手と悪い相手はちゃんと区別している・・・・・・・無意識に。
「そうでしょう?」
「・・・・・はは」
 人のことが言えない悟浄は乾いた笑いを漏らす。
「でもなぁ、悟空の偉大なところはあの三蔵もそのリストに載ってるところなんだよなぁ」
「そうですねぇ」
 悟浄あたりが三蔵に我がままなど言ったが最後、即殺間違いないだろう。
 ・・・とガタッと椅子をひく音がした。
 そこには煙草を咥えたままの三蔵が相変わらず無愛想な表情で座っていた。
「おや、悟空はどうしました?」
「あ?知るか」
 新聞を広げた三蔵は目線も上げずに素っ気なく答える。
「三蔵サマ呼びに行ったんだけどな〜。・・・部屋でつまみ食いしてたりして」
「まさか。ちょっと呼びに行ってきますね」
 笑顔で立ち上がった八戒は”それまで何か注文しておいてください”と二人に言い残して
二階の悟空の部屋へとあがっていった。
 








「三蔵っ!!」
 その八戒が血相を変えて(これも珍しい)二人の前に現れたのはわずか3分後。
「悟空が大変ですっ!!」
 その言葉に三蔵と悟浄は驚くべき速さで悟空の部屋へと駆け上がった。
 悟空の部屋。
 窓際にある寝台に近づくと、そこには呼吸も荒く横たわる悟空の姿。
 三蔵が頬に触れると、瞬間手を放してしまうほどの熱が伝わった。
「悟空」
 三蔵の呼びかけにも悟空は苦しげに目を閉じたまま答えない。
「八戒、いったい何があった?」
「わかりません。僕が悟空を見つけたときにはすでに倒れていたんです。風邪の症状に
しては急すぎますし熱が高すぎます・・・・・」
 三蔵一行の医者の役割を担う八戒は悟空の症状を分析する。
「おい、医者呼んできたぜ」
 悟浄が聴診器を首にかけた年配の人間を引きずるように連れてきた。
「ほいほい、年寄りを走らせおって・・・まったく」
「いいから早く診てくれよっ!」
「わかったわかった」
 悟空に触れようとした医者に三蔵は一瞬、不快そうな表情を浮かべたものの何も
言わなかった。





「うーむ・・・」
「どうなんだ?」
「うーむむ・・・・」
「だから、どうなんだよっ!」
 キレかかる悟浄は医者の襟首を掴む。
「まぁまぁ、悟浄。・・・でどうなんですか?」
 穏やかにそれを止める八戒だが目が”変な診断ではただではおきませんよ”と殺気を
放っていた。
 三蔵は言わずもがな。
 全身から殺気が漂っている。

「あー・・・・」
 えらい場所へ連れてこられたと医者も思っても仕方がないところだろう。
「これはおそらく風土病じゃな」
「「「風土病?」」」
「このあたりで特有の病気じゃ」
「それで治るのかよ!」
「・・・・この病気の特徴でな、三日」
「「「三日?」」」
「三日間、この高熱に耐えることが出来れば治る」
「・・・・・耐えられなければ?」
 八戒の問いに全員が医者の言葉を固唾をのんで待った。











「・・・・・・助からんじゃろう」









 その言葉は三人にとって死刑宣告にも聞こえた。









<悟浄編へ>




† あとがき †

書かないといけないものはたくさんあるのに新連載開始(爆)
原作設定のお話が書きたかったんですよっ!!
ただあまり長くはありません。このプロローグを入れて全部で5話の予定です。
・・・不定期連載なのでいつUPするかは未定ですが(おいっ)
次の悟浄編はあまり遅くならないうちにUPしようとは思っております。
では、お付き合いよろしくお願いいたしますm(__)m




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