〜第六幕〜
ようやく新入生も学校に馴れたころ、日本は大型連休へと突入する。 もちろん、天竺高校も同じく。 「ほむら〜っ」 ぱふんっと悟空が焔のベッドへとダイビングした。 ぐえっというカエルの潰れるような音がしたが気にしないでおこう・・・・。 「ほむらっvv」 ぼすっぼすっと容赦なく悟空が拳を叩き込む。 「・・・・・悟空」 目覚める前に永遠の眠りに入りかけた焔がやっとのことで自分の上に馬乗りに なっている従弟の名を呼んだ。 「・・・・・ふ、朝から積極的だな、悟空」 「??」 焔は悟空を抱きしめるとあっと言う間もない素早さでベッドの中へと悟空を引きずり こんで己の下に敷いた。 「おはようっ焔♪」 しかし、鈍い悟空は狼の皿の上にいることも気がつかずにっこりと朝の挨拶。 焔も誰もが見惚れるような微笑を浮かべて、 「おはよう、悟空」 そして、いただきます――――――と朝食にとりかかろうとした焔に突然悟空が 飛び起き・・・・・・・頭突きをかました。 「―――――・・・っっ」 あまりの衝撃に焔は言葉さえ出せない。 「な♪なっ♪どっかに遊びに行こう〜♪」 そんな焔の悶絶も構わず悟空はうきうきとご機嫌である。 「・・・・遊びに?」 「うんっ♪」 「そんなことよりもっと楽しいことを・・・・・」 「悟空、朝ごはんですよ〜っ」 天蓬の声だった。 「あっ、メシだっ♪」 乗りかかる焔をあっさり押しのけると飛ぶように食堂へと向かう悟空。 「・・・・・・・・」 がくり、とうな垂れる焔。 前途多難。 先はまだまだ長そうだった。 「なぁなぁ、どっか遊びに行こうぜっ!!」 食堂に集まった人間に悟空が再び誘いの言葉をつげる。 「俺はパス〜、美人のお姉ちゃんとデートなんでな♪」 捲簾、珍しくも悟空の誘いを断った。 「ったく、てめー休み明けはテストがあるんだぞ、用意しているのか?」 うかれる悟空に金蝉が小言を言い始める。 「へへ〜俺は体育だから無いんだよ〜♪」 かなり嬉しいらしく、羽根でもはえて飛んでいきそうだ。 こういうことだけは抜かりない。 「それでは、僕と行きましょうか?」 「うん、天ちゃんと行く〜っ♪それからも焔もねvv」 「・・・・・焔?」 「こちらのほうが先約なんでな」 悟空を追いかけてきた焔が扉のほうから声をかけた。 ついでに服装はばっちり、準備万端整ってるぜっ!といった様子だ。 「別にお前が来なくても構わないぞ、悟空と二人だけで十分だからな」 「いえいえ、やはりお昼の用意をする人間がいませんと」 「そんなもの、どうにでもなる」 バチバチバチィィィッッ!!!! 天蓬と焔の間で火花が散った。 「んじゃ、皆で行こうぜ♪」 「・・・・そうですね」 「・・・構わん」 悟空の提案には逆らわない二人である。 ・・・・・・・・・・・・・内心はどうあれ。 「んじゃ、行ってきま〜すっ♪」 玄関で見送りの金蝉と捲簾に手をふる悟空。 「ま、楽しんで来いよ♪」 「・・・・あまり遅くなるなよ、入れてやらんからな」 「わかった〜!」 何やらはじめて、友達だけで遊びに行く子供を見送る親のようだった。 金蝉のしかめつらの奥には”心配”の二文字が隠れていた。 バタンッ! 「おはようございます、悟空先生♪」 白竜を肩に乗せた八戒が挨拶をする。 「・・・ふあ〜ぁ、うっす、センセ」 あくびまじりに挨拶したのは悟浄である。 玄関の扉を開けると二人が立っていた。 「え?何でいるんだ?」 不思議な顔をした悟空に対し、後ろにいた焔と天蓬は複雑な顔である。 「せっかくの休日ですから悟空先生とご一緒させていただこうと思いまして」 悟空用スマイルで答える八戒。 「・・・・・・・・・無理やり連れて来られた・・・・あ、いや、何でもないです」 「そっか〜っ!んじゃ、一緒に行こうぜ♪」 「はい」 そうして一行は5人に増えた。 遊園地へと歩いて向かう一行。 その途中で悟空が一軒の花屋の前で足を止めた。 「どうした、悟空?」 「ん〜・・・」 「花が欲しいのか?どれでも好きなものを言えばいい」 さすが、焔。太っ腹。 「じゃあ・・・あれっ♪」 悟空が指差したのは・・・・・・・・・・干し柿。 「「「・・・・・干し柿?」」」 何故、花屋にそんなものが・・・と一同、不思議に思う。 だが、悟空至上の焔。 一切の疑問を挟まず早速店主と交渉をはじめる。 「え、いや〜あれは予約済みなんですよ〜」 「金ならば惜しまん」 「いえ、そう言われましてもね〜」 「悟空先生になら喜んでお譲りしますよ」 横から現れたのは清一色だった。 「・・・何でこんなところに」 その姿に八戒が珍しく眉間にしわを寄せる。 「ここは我の御用達の花屋ですから。はい、どうぞ悟空先生」 「サンキュッ!」 「悟空先生・・・そんな怪しいものを・・・・・・っ」 八戒が止める前に悟空はそれを口の中へといれてしまう。 「大丈夫ですよ、それは”普通”の干し柿ですから」 「・・・・・・”普通”ではないのもあるということですね」 「さぁ、どうですか」 シラをきる清一色。 だが、その花屋の中に並べられているものをよくよく見れば。 『大麻』 『ロハ』 『トリカブト』 『マンドラゴラ』 ・・・・・・・・・・・・警察は何してる? 「ここは品揃えがよくて助かります」 何に助かるんだ、何にっ!! おそらく、皆はそう思ったことだろう。 「ところで悟空先生、今日はどうされたんですか?」 「ん?今から遊園地に行くんだ♪」 干し柿の枝を口にくわえたまま器用に答える。 「でしたら我も御一緒してよろしいですか?」 「いいよ〜♪多いほうが楽しいしなっ!」 そして一行は6人に増えた。 「ん?・・・・・あれ三蔵じゃねーの?」 一行の最後尾にいた悟浄が上方を指差した。 そこには・・・・・腕まくりをして、金槌を持った三蔵が釘を打ち付けていた。 「あいつ・・・いったいいつから大工になったんだぁ?」 「おやおや、珍しい」 「似あわないですね〜」 「あっ、三蔵だ♪」 口々に騒ぎ出した一行に三蔵が気づき、眉間の皺を深くした。 「・・・ちっ」 「何やってんだ、三蔵?」 「見てわかんねーのか、馬鹿」 「わかんねーから聞いてんだもんっ!!」 「悟空、あれは修理をしているんですよ」 「屋根に穴でも空いたんですかね〜」 「ごちゃごちゃ言ってねーで、さっさとどこか行けっ!!」 屋根の上から釘が降ってくる。 「おいおい、危ねーな!」 悟浄の足元に釘がつきささる。 「わーいっ!釘だ♪釘だっ♪」 喜ぶ悟空。 「・・・喜ぶなっ!!」 「危ないですね〜」 でも笑っている清一色。 「頭上危険て立て札しておかないといけませんね」 巧みに釘をよけながらさりげなく、距離をとる八戒。 「悟空、こっちに来い」 そして、悟空をかばう焔。 「お弁当には突き刺さないで下さいよ」 下でわいわいがやがやと五月蝿い一行に三蔵の眉間の皺が深さを増した。 それもこれも・・・・すべて光明のせいである。 『労働は何よりも尊いのですよ』 背中に花を背負って諭すように、三蔵に釘と金槌を渡した光明。 ・・・・・・・・・・・実は自分でやるのが面倒だけだったりする。 それがわかっていながら逆らえない自分に三蔵は一層腹がたつ。 ・・・・・・・・・・コロス。 そして八つ当たりの矛先は6人に向けられた。 どすッ! 「・・・ておいっ!!」 突然に落ちてきた金槌に悟浄が屋根に向かって抗議する。 「すまん、手が滑った」 「嘘つけっ!!絶対わざとだろーがっ!!」 どすっ!どすッ! 今度は2段攻撃で金槌が落ちてくる。 一つは悟浄の頬をかすめ、もう一つは焔と悟空の間に落ちた。 「危ないぞ。悟空がケガをしたらどうする」 「そんなもんでケガするほど、繊細じゃねぇーな。そいつは」 「ふん、知ったような口を聞くではないか」 「”同じ”学校に始終いるもんでな」 「・・・・・」 「・・・・・」 屋根と地上とで睨みあいがはじまった。 「なぁ、遊びに行かねーの?」 目の前で繰り広げられる三蔵と焔の戦いに放っておかれた悟空が隣りにいた八戒に 言い募る。 「ん〜、どうしましょうか?まだあの二人当分終らないと思いますよ」 「だよな〜、犬猿の仲だもんな〜」 「いや、よく言う同族嫌悪という奴ではないでしょうか」 「そーだよな〜、焔と三蔵て似てるよな♪」 本人たちが聞いていたら強く否定したに違いない。 「あの二人は放っておいて僕たちだけで遊びに行きますか、悟空先生?」 「んー・・・でもなぁ」 八戒の言葉に迷う悟空。 せっかくだから焔と遊びに行きたいし、三蔵も・・・・・・・・。 「せっかく作ったお弁当もダメになってしまいますよ、悟空」 「え!?だったら行くっ!!」 天蓬の言葉に悟空は一瞬で迷いを吹っ切った。 ・・・・・・・・・食べ物に負けるようでは、三蔵も焔もまだまだである。 「それでは、行きましょう」 何時のまにか、ちゃっかりと悟空の隣りをキープする清一色。 もちろん反対側には八戒がいる。 「へへっ、何に乗ろうかな〜♪」 歩き出しながら、悟空の頭の中はすでに遊園地のことでいっぱいで残された二人の ことは頭の片隅にも残っていなかった。 ・・・・・・・・帰るころには思い出すかもしれない。 一行が遊園地で悟空との時間を楽しんで帰ってきたとき・・・・。 焔と三蔵はまだ言い争いを続けていたのであった。 |
† あとがき † あう〜火曜日に間に合わずっ!!(T×T) 焔と三蔵をかちあわせるとこれだから困る(←責任転嫁・笑) 進まないんだって!! それにしても天蓬と八戒と清一色、一緒に出すと皆口調が 似ているので誰がどのセリフかわからない(T×T) ふ・・・まだまだ未熟者、御華門っ!! 精進せねばっ!! なかなか進展しない悟空との仲。 次あたりには・・・・・・ちょっと・・・・・ ふふ☆(意味不明・爆) |